中国縫製企業トップに聞く(4)/上海沁富紡績品 総経理 呉 永豊 氏/上海で小ロット対応強みに

2021年10月12日 (火曜日)

 日本向けニット製衣類を手掛ける上海沁富紡績品は、2020年に上海で自社工場を開業した。小ロット・多品種、QRを強みに、生産量を徐々に拡大している。総経理の呉永豊氏は、朝日ファスナー上海連絡事務所の所長でもあり、今後はファスナー販売とのシナジーを高めていく。

(上海支局)

  ――20年3月に上海郊外の松江地区で縫製工場を開業しました。

 これまで貿易会社として、日本向け製品を展開してきましたが、小ロット・短納期ニーズに対応するため、自社工場を設けました。現在は工員20人規模で、ニットのカジュアルウエアやジャケットなどを生産しています。

  ――上海の縫製工場は珍しいですね。工員の採用は一苦労では。

 上海では人件費の高騰や人手不足を背景に、多くの工場が撤退や移転をしました。ただ、20、30人規模の小型の工場が郊外の松江や、金山地区にはまだ残っています。

 私と経営パートナーは日本の縫製会社に長く勤めた経験があり、縫製やパターンの専門知識が豊富です。商社を中心とした日本の既存顧客とも信頼関係を築いています。上海は縫製業にとっては恵まれた環境ではありませんが、私たちの特徴を生かせばチャンスはあると信じています。

  ――呉さんは、ビンテージ風ファスナー「ウォルディス」で知られる朝日ファスナーの上海連絡事務所所長でもあります。

 19年10月に事務所を設けました。事務所ができたことで、納期短縮やコミュニケーションの円滑化、価格の統一などが実現できました。「インターテキスタイル上海」への出展を通じ、ミリタリーやアウトドア、レザージャケットの地元ブランドなどの新規顧客を開拓しています。

  ――縫製事業との相乗効果も期待できそうですね。

 これまで縫製事業は日本向けに特化してきましたが、今後はファスナーの顧客を中心に内販向けも手掛けていくつもりです。縫製とファスナーの事業のシナジーを発揮できればと思います。