特集 アジアの繊維産業Ⅱ(5)/中国拠点の高度化推進/インドで試験業務を開始/カケンのアジア戦略

2021年09月22日 (水曜日)

 カケンテストセンター(カケン)は、新型コロナウイルス禍の影響から比較的早く脱した中国の高度化を図る。機能性試験の拡充などで顧客満足度を高めるともに、CSR監査業務を各拠点で対応できる体制を構築する。中期経営計画で掲げている南アジアの強化では、インドでの試験業務を開始した。

 新型コロナの感染拡大は、カケンのアジア事業にも大きな影響を与えた。日本での衣料品販売の低迷やアパレルによるブランド統廃合などのあおりを受け、試験・検査依頼件数が減少した。感染が広がった国・地域での都市封鎖(ロックダウン)、物流の遅延、政情不安なども響いた。

 感染の封じ込めに成功した中国では、ASEAN地域から生産をシフトする企業もある。カケンのアジア事業もASEAN地域などの落ち込みを中国が補い、2020年度は19年度並みの数字を確保した。21年度もASEAN地域で感染拡大が継続し、中国でカバーするという状況が続く。

 今後は中国で機能性試験を拡充する。内製化によって納期短縮などを実現し、顧客へのサービス向上につなげる。CSR監査業務の充実も図る。CSR監査は上海の拠点を中心に行っているが、対応可能な人材を育成(現在研修中)し、22年度には各拠点で実施できる体制を整える。

 南アジアの強化ではインドベンガルール試験室の業務を8月に開始した。日本人2人を配置している。バングラデシュ試験室では昨年秋にプレス試験機や破裂試験機を導入した。ASEAN地域は新型コロナ禍の渦中にあるものの、重要な生産拠点としてベトナムを中心に伸ばしていく。

〈中国/それぞれの強みを磨く〉

 中国には香港検査所、上海科懇検験服務、上海科懇南通、青島試験室、大連試験室、寧波試験室、無錫試験室といった拠点を持つ。20年度前半は厳しかったとの声が聞こえたが、その後は急速に回復した。ASEAN地域からの生産回帰などもあり、21年度は一部の拠点を除いて、堅調な動きを示す。

 無錫試験室の21年度は前年度とほぼ同水準で推移していると言う。前年は特に第4四半期(21年1~3月)が順調だった。日本で新型コロナ禍が続いているため、シーズン物の動きを含めて先行きが読めない状況にある。同試験室が持っている機能を高めることで、年間でも前年の実績維持を目指す。

 上海と距離的に近く、実施可能な試験も限られる無錫試験室に求められることは「納期にある」と捉えている。同試験室の特徴・武器は小回りを利かせた機動力・迅速な対応にあるとし、その強みにさらに磨きをかける。CSR監査は対応可能なスタッフが1人いるほか、3人のスタッフを育成中だ。

 寧波試験室の21年4~6月は前年並みの数字で推移したが、7、8月については前年の実績に届かなかった。寧波での日本向けの生産が減少傾向にあることが理由とみられる。同試験室は「(寧波では)生産コストが高く、採算が合わないためオーダーが取れないという声を顧客から聞いた。北部にシフトしているようだ」と話す。

 そうした状況の中、これからは短納期への対応を武器に試験依頼の獲得増を狙う構えだ。各部署の連携を密にすることで無駄な時間を極力排除するほか、隙間時間を有効的に活用していく。これらを着実に実行することで納期は顧客の要望に素早く対応できる体制を整える。

 同試験室だけができる独自の機能ではフライパン表面の耐摩耗性や取っ手の強度などの試験がある。特徴の一つとしてアピールするが、寧波は金型産業が盛んな地域でもあり、需要を取り込んでいく考えだ。

〈インド/営業活動も積極的に〉

 2020年度にスタートした3カ年の中期経営計画の中で掲げているのが、インドやバングラデシュを軸とする南アジアの強化だ。このうちインドは19年1月に南部のカルナータカ州ベンガルールに事務所を開設している。そして今年8月にインドベンガルール試験室の試験業務を開始した。

 香港に本部機能を置くグローバル検査機関であるモダン・テスティング・サービス〈グローバル〉(MTS)のインド法人と提携して試験業務を行う。染色堅ろう度や物性試験、混用率試験、製品試験(耐洗濯性試験など)といった試験が実施可能。当初は4月の業務開始予定だったが、新型コロナ禍に伴う都市封鎖(ロックダウン)の影響で遅れた。

 同試験室には日本人スタッフが2人常駐しており、試験に関する問い合わせなどについては、日本語による対応ができる。スタートからまだ1カ月程度で日が浅いため、業務開始の周知徹底から始めている。「10、11月には試験依頼が本格化してくるのではないか」と予想する。

 そのためにも営業活動は積極的に行っていきたいとしている。インドでは新型コロナの新規感染が抑制の傾向にあり、規制も緩和されている。州を越えた移動は難しい部分もあるが、それが解消されれば「いろいろなところに足を運びたい」と言う。試験機の充実やマンパワーの強化といったキャパシティー拡大にも取り組んでいく。