特集 全国テキスタイル産地Ⅱ(5)/モノ作りを支える繊維機械

2021年07月30日 (金曜日)

〈ガイドレスで540センチ幅/ピカノールとエディー〉

 ピカノールの日本代理店を務めるエディーは、衣料から資材まで幅広い品種に対応するレピア織機「オプティマックス―i」の提案を強める。足元では資材用途での引き合いが堅調で、新たに打ち出した広幅(540センチ幅)のガイドレス式の提案も始める。

 ピカノールのレピア織機の基幹機種「オプティマックス―i」はさまざまな糸種に対応するとともに多様な緯入れが可能で、衣料、産業資材、工業資材、農業資材など幅広い用途に対応する。生産性や品質安定などの面も評価が高い。

 緯糸挿入方式はガイド式とガイドレス式(フリーフライト)がある。ガイドレス式は高い汎用性や経糸への影響が少ないなどの面から注目を集めるが、要望が多かったさらなる広幅化も実現した。6月のITMAアジアでは360センチを超える540センチ幅のガイドレス式レピア織機「オプティマックス―i―R―540」を発表した。会場で高い注目を集めたが、日本でもエディーが同機種の提案を進めていく。

 日本では今後もレピア織機を中心に提案していく考えだが、海外ではAJLの「オムニプラス―i」も注目を高めている。高速生産における安定性や6色緯入れなど総合力の高さが評価されている形で、電子開口装置「スマートシェッド」の搭載も始まった。顧客からの要望があれば、日本でも提案を進めていく。

 ピカノールのイーペル工場(ベルギー)は、今年に入って需要が急増し、足元は生産が追い付かない状況が続いている。インドやパキスタン、トルコなどからの大量受注が背景で、月産800台のフル生産を続けている。

〈開口機が順調に回復/ストーブリ〉

 ストーブリの繊維機械販売は、開口機(ドビー、カム)が前年比30%増と順調に推移しており、フランス工場の稼働も昨年末からタイトな状況が続いている。織機メーカーの世界的な受注拡大が背景にあり、7月以降も現在のペースが続くとみられる。

 日本での製織準備機販売は1~3月は動きが鈍かったが、4月以降に動きだし、6月からは前年比増となった。北陸産地などで設備投資意欲が回復し、ドローイング機を中心に動きだした。

 合繊長繊維用ドローイング機のサファイアシリーズは、アゼ取り工程を省略できるなど省人化、自動化の面で評価を得ている。現在は「サファイア S30」をさらに使いやすくする形でアップグレードした「サファイア S32」の提案に力を入れている。

 サファイアS32は顧客の選択肢を広げ、処理スピードや価格などそれぞれのニーズに柔軟に対応する形となった。ヘルドフレームはこれまで12枚枠をベースに16枚枠まで可能だったが、S32は8枚枠、12枚枠、16枚枠と4枚ごとに仕様を変えることが可能。

 タイイング機では「タイプロ」の提案を進めていく。従来のニードル式からスピンドル式に変更され、2本取りの自動検知やオートリバース機能を標準搭載する。省人化や人為的ミス削減などの面で注目されている。

 電子ジャカード機は、今年から新型コントローラー「TC8」を搭載することによる利便性の向上を訴求する。従来コントローラーの機能を網羅しながら、タブレット型で操作しやすくなったのが特徴で、通信速度の高速化にも対応する。

〈イテマテックを本格提案/イテマ〉

 イテマウィービングジャパンのレピア織機販売は、資材用途を中心に引き合いが増え始めている。イテマ本社が世界的な需要増を受けて生産に追われる中で、日本での納期は延びている。それを受け商談が早めに進む動きも見られるという。

 産業資材用では今年から「イテマテック」の本格提案を開始した。旧パンターが扱っていた織機をそろえ、衣料から産業資材まで幅広い用途に対応する主力機種「R9500」とは異なる領域で提案を進める。

 今春には、本社ショールーム(大阪府茨木市)で高張力織物の生産に特徴を持つ「ヘラクレス」を実演させて個別商談会を行った。実演では、コンベアベルト用基布を300回転(経糸張力3・5トン)で安定生産するなど高い生産性も披露した。

 ヘラクレスは農業用織物、コーティング織物、コンベアベルト、フィルター用織物、土木用織物、ガラス繊維織物など幅広い用途が生産でき、10デシテックスから4万8千デシテックスまで幅広い糸に対応する。特に高張力織物の生産を得意とし、標準タイプでは経糸張力3トン、強化型機で4・5トンに対応する。バンドレピアなので開口が小さく、経糸のテンションを抑えて機械への負担を抑えることも特徴の一つ。バックレストローラーは生産品種に合わせて選択でき、巻取り装置は3段式で緯糸密度が低い織物にも、超薄手織物にも確実に対応する。

 イテマテックでは、特殊な糸を使う織物に向く「ユニラップ」もそろえる。ポリエステルやポリプロピレンのフラットヤーン、高抗張力モノフィラメント、ラメ糸、ブークレ糸、グラスファイバーなどさまざまな糸種に対応する。

〈テンプルで“困り事”解決/アスキー〉

 織機用テンプル製造のアスキー(浜松市)はエンドユーザーの多種多様なニーズへの対応に力を入れている。織布の際の“困り事”を解決するため、顧客1社ごとにカスタマイズしたテンプルを提案。今後は新たなテンプルの開発も進める。

 テンプルは製織する際に生地を引っ張る役割を持ち、リード(筬〈おさ〉)の摩耗や経糸切れを防ぐことができる。基本的にはリング、ゴムリング、ローラーの3種類あり、リングの数を変えたりすることで、さまざまな織物に対応している。

 例えばリングテンプルで1列の針付リング仕様であれば、テンプルマークの発生しやすい織物に向いている。ローラーテンプルでゴムローラーと4列の針付リングの仕様では長繊維織物に向くなど織物に合った組み合わせが可能だ。

 織物に合ったテンプルを使うことで生地に傷が付きにくくなるほか、摩耗したテンプルの汚れが生地に付着することを防ぐこともできる。同社では海外製織機はもちろん、製造年が古い織機などにも対応できるテンプルの相談にも応じている。

 テンプルは消耗品だが通常、レピアやシャトル織機に使う場合は10年以上の耐久性がある。打ち込み本数が多い高密度や太番手使いの織物、高速織機に使うテンプルなどは摩耗が激しくなるため数年で変える必要がある。そのため最近では、耐摩耗性を高めたテンプルの開発も進めている。

 新型コロナウイルス禍によって、織布企業への発注はこれまで以上に小ロット多品種の傾向が強まっている。製造する織物によってテンプルを変えることで、より品質を高めたモノ作りに貢献する。