特集 今治タオル産地(5)/素材・生産 設備編/高付加価値化を支える

2021年07月21日 (水曜日)

 今治タオル産地のタオルは各社ごとに強い独自性を深耕する段階に入っている。消費者の志向はより細分化し、ネット通販を中心にその志向に応える売り場も増えてきた。製品の高い品質、独自性を支える素材、生産設備選びも重要度を増している。

〈機能性とサステを軸に/シキボウ〉

 シキボウはタオル用途に向けて機能性とサステイナビリティーを軸にした糸提案を強化する。綿100%だけでなく合繊も活用することでタオルにおける新たなニーズに応える。

 合繊を活用した機能糸として、芯にポリエステル、鞘に綿を配置することでコットンの肌触りと吸汗速乾性を両立した2層構造糸「クイックドライコットン」を重点提案する。再生ポリエステルとオーガニックコットンを採用した「クイックドライコットンエコ」も用意する。

 ニーズが高まる衛生加工も制菌加工「ノモス」、抗ウイルス加工「フルテクト」を投入する。糸加工が可能になったことから先晒しが主流の今治産地向けにも提案を進める。

 サステイナビリティーも提案の柱。サステイナブルな科学的精密農業で栽培される米綿使いの証である「コットンUSA」認証糸の提案を強化するほか、燃焼時の二酸化炭素排出量を抑制する特殊ポリエステル繊維「オフコナノ」もタオル糸向けに投入する。

〈手頃な価格の機種を提案/伊藤忠システック〉

 伊藤忠システックは今治産地に向け、スパン用部分整経機「KGA163C」やボーナスの電子ジャカード機「JI」など手頃な価格の機種の提案を進めている。

 部分整経機「KGA163C」は、梶製作所(石川県かほく市)と共同開発した機種で、産地企業の要望を取り入れた。精密な張力制御により、デリケートな縦糸や高張力で整経する必要がある糸まで幅広く対応する。

 梶製作所が日本向け仕様を監修し、中国合弁会社で生産することで、高い品質と導入しやすい価格を実現した。コントローラーパネルや各種操作部品など現場が扱いやすい機種となっており、アフターサービスも日本国内で対応する。

 電子ジャカード機ではボーナスの新機種「JiL」を提案する。6月のITMAアジアで発表されたレピア織機用の大口ジャカード(6144~1万1520口)で、標準機種「SI」の機能を厳選することで買いやすい価格を実現した。これで「JI」シリーズは1920~1万1520口対応となる。SIとほぼ同スペックながら小口から大口まで買いやすい価格を実現した。

〈タオルにも「テンセル」を/レンチング〉

 レンチングは、タオルなどホームテキスタイル用途にも精製セルロース繊維「テンセル」リヨセルの提案を強める。綿からテンセルに原料を置き換えることでサステイナビリティーを高めることができるという。

 現在、ある外資系ホテルチェーンが客室に備えるタオルを綿100%から綿50%・テンセル50%混に切り替える動きを進めている。レンチングは、木材パルプを原料とするテンセルは綿花よりも水使用量など栽培時の環境負荷が小さいと主張する。吸水性や発色性も綿を上回る。このためホテルもタオルをテンセル混に切り替えることでサステイナビリティーを高めた客室作りができる。

〈新型コントローラー搭載/ストーブリ〉

 ストーブリの繊維機械販売はドビーやカムなど開口機が順調に回復し、1~6月は前年比増収で推移した。電子ジャカード機は、レピア織機メーカーの納期が長くなっていることの影響を受けているが、今後は更新需要を中心に提案を進めていく。

 電子ジャカード機は今年から新型コントローラー「TC8」型が搭載される。従来の機能を網羅しながら扱いやすさを向上させたのが特徴。タブレット型で扱いやすく、通信速度の高速化にも対応する。同社の電子ジャカード販売の柱は今治で、新型コントローラー搭載機の第1号も今治で導入される見込み。

 製織準備機では、タイイング機「タイプロ」の提案を進める。従来のニードル式ではなくスピンドル式としており、2本取りの自動検知やオートリバース機能を標準搭載する。オペレーターの手間や時間、人為的ミスの削減に寄与する機種として注目されている。

 新型コロナウイルス禍の状況を見ながら、新型コントローラーを搭載した電子ジャカードやタイプロを紹介する産地ツアーを行うことも検討している。

〈タオル用レピアを提案/ピカノールとエディー〉

 ピカノール(ベルギー)の日本代理店を務めるエディーは、今治産地に向けてタオル用レピア織機「テリーマックス―i」を提案していく。生産性や扱いやすさなどが評価を得て、ポルトガルや韓国など海外での導入が増えている機種で、その実績を元に日本でも提案していく。

 ピカノールの織機は、①スマートパフォーマンス②サステイナビリティー③データによる操作④扱いやすさ―に重点を置いて開発されている。テリーマックス―iは、資材用や衣料用で高い評価を得る「オプティマックス―i」の強みを生かしながら、タオルに向く織機として開発された機種。緯入れ8色、最大12㍉のパイル長調整機構を標準装備し、省エネにつながるサステイナブルな設計となっている。産業資材用に対応する高剛性のメインフレームを採用しているため、稼働安定性の高さも特徴となる。

 日本での提案はレピア織機を主とするが、海外では昨年に発表されたタオル用エアージェット織機の新製品「テリープラス―i」の提案も進んでいる。日本でも要望があれば対応する。