日系出展者が〝一歩先”提案/「ITMAアジア+CITME2020レビュー」/新技術とサービスで生き残りへ

2021年07月15日 (木曜日)

 アジア最大の国際繊維機械見本市「ITMAアジア+CITME2020」が6月12~16日、中国・上海市の国家会展センター〈上海〉で開かれた。国内外1200社強(18年展は約1700社)が出展し、延べ6万5千人が来場した(同約10万人)。日系企業は18社が出展し、“一歩先”を行く提案で注目を集めた。(上海支局)

 同展は昨年10月に開かれる予定だったが、新型コロナウイルス禍を受け、今回の会期に変更された。その影響と、新型コロナ禍のため海外企業の出展が減ったことで、出展者数、来場者は前回展を大幅に下回った。

 ただ同展の会場では、「想定していたよりも来場者が多い」「連休と重なったことが逆に幸いし、来場者の質が高い。目的を持った人が多い」など、前向きな声が日系出展者の関係者から聞かれた。

 新型コロナ禍の影響を受けながらも、同展の雰囲気が良かった背景には、足元の各社の好調がある。「昨年9月ごろから市況が回復し、『ボルテックス』の販売が急拡大した。それが今は少し落ち着いたが、今度は自動ワインダーへの引き合いが増えている」と村田機械〈上海〉の野々口学総経理は話す。

 津田駒工業のウオータージェット(WJ)織機も、日本製、中国製ともに受注を増やしている。「入れ替え需要が始まったこともあり、しばらく好調が続きそうだ」(津田駒機械製造〈常熟〉の林隆峰総経理)。

 欧州系メーカー各社も快進撃を続ける。ストーブリ〈杭州〉繊維機械事業部の孫松華・中国区業務総経理は「今年の業績は過去最高になりそうだ。新型コロナ禍前は顧客の中国メーカーが海外投資を加速していたが、新型コロナ禍の後、国内での投資にシフトしていることが背景にある。顧客のメーカーがアップグレードを続けていることも、大きな要因だ」と話す。

 イテマ ウィービング マシナリー中国のロレンツォ・マフィオリ董事長も「海外から中国に生産がシフトした影響で、中国の工場が忙しくなり、設備投資に積極的になっている。今年、過去最高の業績を見込んでいる」と述べる。

 中国のある大手織機メーカーの21年出荷台数は、8千から1万台になる見通しだ。これは日本のメーカーの過去最高台数に肉薄する水準と言う。

 足元の販売は好調だが、日系出展者の多くが先行きに対し、厳しい見方を示した。地場メーカーのキャッチアップが加速しているためだ。日本などの海外メーカーのコピーに終始していたところが、ここ数年力を付けてきている。

 そのため、日系メーカーは、生産効率アップや自動化、省人化、省エネなどに新技術で先行しながら、アフターサービスを含めた総合力の高さで勝ち抜いていくことが求められている。

 こうした中、日系出展者は、“一歩先”を行く提案で存在感を示した。

 福原産業貿易は、シングルニット機とベッドマットレス用丸編み機の2本立てを実機でアピールした。ベーシックな天竺を編むシングル機は、従来機と内部構造を全面的に変え、高速回転(1分間に45回)と優れた省エネ効果を両立。シングル機はここ数年、国産メーカーの追い上げにさらされてきたが、同機により再び攻勢をかける。

 村田機械は、渦流精紡機「ボルテックス870EX」や自動ワインダー「プロセスコーナーⅡ」シリーズの最新機を並べた。自動ワインダーは、糸切り装置などの機能を省いたシンプルなタイプを初公開し、注目を集めた。

 TMTマシナリーは、仮撚機と合繊紡糸巻取システムの実機を展示した。目玉の一つと位置付けた「ATF―1500N/V―SZ」は、太繊度糸を生産する省エネタイプの延伸仮撚機だ。ポリエステル長繊維によるカーペット用途パイル糸をはじめ、産業資材分野をターゲットにする。

 島精機製作所は、ホールガーメント横編機「MACH2XS」シリーズの実機と、ニット製衣類の3Dデザインシステムなどの最新ソリューションを訴求。生産効率を大幅に高めたWG横編み機の試作機も紹介した。

 豊田自動織機は映像とパネルで、エアジェット(AJ)織機とWJ織機の最新鋭機を紹介。産業資材用途はガラス繊維向けが伸びている。

 津田駒工業は、平均10%の水消費量の削減を実現し、排水へのグリス混入を70%削減したWJ織機「ZW8200」を、映像とパネルで訴求した。エアーバッグ向けの導入が増えている。

 化繊ノズル製作所は、複合紡糸用ノズルのアピールに注力した。複合紡糸用も地場メーカーが力を入れているため、新しい断面のものを同社から顧客に提案し、需要を喚起していく。

 日本ノズルは、スパンレース不織布やメルトブロー不織布用のノズルと製造設備、湿式紡糸ノズルなど訴求した。力を付ける地場メーカーに対抗し、加工技術での一層の差別化と商品のアップグレードに取り組んでいく構えを取る。

 高山リードは各種織機用リードや、経糸準備機用リード、それらのメンテナンス機器を出展した。内販はガラス繊維用織機向けが好調で、売り上げ全体の半分以上を占めている。

 湯浅糸道工業は、糸道の新製品をアピール。同社製品は、中国でも高級ゾーンで高いシェアを誇る。糸道メーカー間の競争も激しくなっていることから、さらなる差別化と商品開発に力を入れていく。