東北整練/洗える「ベンベルグ」開発/ナノ技術の新加工で弱点克服
2021年06月24日 (木曜日)
染色加工の東北整練(山形県米沢市)は、旭化成のキュプラ繊維「ベンベルグ」の弱点である湿摩擦堅ろう度や洗濯後の形態安定性を飛躍的に向上させる新加工「MVA」を開発した。
同加工は再生セルロース繊維全てに応用可能だが、まずはベンベルグを軸に旭化成と共同で販促活動を行う。その一環として、旭化成が6月29日~7月1日、ザ・ガーデンルーム(東京都目黒区)で開催する「2022春夏ベンベルグ展」で初披露する。
ベンベルグはさまざまな特徴を持つ一方、取り扱いが難しい。特に湿潤挙動の収縮や摩擦堅ろう度の低下、シワになりやすいなどの弱点がある。濃色の湿摩擦堅ろう度は1~2級、洗濯後の形態安定性も2級にとどまり、ベンベルグを使った衣料品はドライクリーニングまたは手洗い指定が大半だ。
しかし、東北整練が新開発したMVAを施すと、最も難度が高いベンベルグ強撚糸織物でも通常洗濯とつり干しで洗濯収縮率は3%以内を実現。濃色の湿摩擦堅ろう度も3級以上、洗濯後の形態安定性も3・5~4級に向上するなどイージーケア性が格段に向上する。
同社は2017年からナノ材料を活用した加工技術の研究に着手。基礎開発に約2年を費やし、昨年1月に同技術の特許を出願した。旭化成には同年7月に提案し、協力を得ながら「洗えるベンベルグ」をテーマに開発を進めて、技術確立にこぎつけた。柴崎秀之社長は「日本の技術として世界に発信していきたい」と意欲を示すとともに、さらに技術精度を高め、安定生産化に力を入れ、将来的にはMVA専用機を導入したい意向だ。
旭化成もMVAへの期待は大きい。松井雄則ベンベルグ第一営業部長は「これまで濃色の湿摩擦堅ろう度は1~2級にとどまり、基準である3級をクリアできなかった。それだけにMVAによる性能向上は画期的なもの」と高評価。これまで洗濯機使用が難しいため販売面で限界があっただけに、MVAの活用への期待は大きい。国内だけではなく、中国国家基準(GB規格)をクリアできることから、中国へのテキスタイル輸出にも寄与するとみる。
22春夏ベンベルグ展ではMVAのみのコーナーも設けて約35マークの生地を訴求。8月25~27日、中国・上海で開催される「インターテキスタイル上海アパレルファブリックス秋」の旭化成ブースにも出品を予定する。