特集 スクールユニフォーム(8)/学生服地・副資材編/安全で快適な学校生活を支援

2021年06月18日 (金曜日)

 安全で快適な学校生活に欠かせない学生服。近年ではストレッチ性や家庭洗濯に対応するイージーケア性など求められる機能は多い。新型コロナウイルス禍によって抗ウイルス性など衛生加工にも注目が高まる。その一方で学生服は式典にも着用する礼服としての役割があり、ふさわしい品位も必要とされる。素材メーカー各社は、こうした要求に応える学生服地・スクールシャツ地、そして副資材を供給する。

〈合繊で快適性高める/機能へのニーズに応える/東レ〉

 東レは、合繊100%や合繊高混率の学生服地の提案を通じて、快適性など機能性への要求の高まりに応えることを目指す。

 学生服地はウール・ポリエステル混が主流だが、近年はポリエステル高混率品やポリエステル100%品への引き合いが増加した。実際に2021年入学商戦で同社の販売量が増加した背景にあるのが、機能性への要求の高まり。特にストレッチ性や家庭洗濯対応のイージーケア性、軽量性では合繊高混率品や合繊100%品に優位性があると同社は指摘する。

 こうした流れを受け、引き続き合繊100%梳毛調織物「マニフィーレ」やストレッチ生地「ライトフィックス」の提案で機能面での要望に応える。学生服分野でもサステイナビリティーやSDGs(持続可能な開発目標)対応への要求が高まっていることから、再生ポリエステルの活用も進める。注目が高い抗ウイルス性についても抗ウイルス加工生地「マックスペックV」を提案する。

 合繊の混率が高まることでコスト面での利点を指摘する声もあるが、同社では価格面での利点以上に機能面での利点を訴求することで、学生服用途での合繊高混率品や合繊100%品のシェア拡大を目指す。

〈芯地の安心・安全性追求/サステイナビリティー対応に注力/東海サーモ〉

 芯地総合製造卸の東海サーモ(岐阜県大垣市)は、経営基本方針を「〝繊維〟と〝接着技術〟で、暮らしにイノベーション」と策定した。ライフスタイルの変化と向き合い、創立63年で培った繊維とその接着の技術や知見を生かして、生活にイノベーションを起こす素材や製品を供給する。国内2工場で紡績から整理染色工程までを担う一貫生産体制を活用する。

 サステイナビリティー対応に力を入れ、リサイクル素材や原着繊維を使った毛芯地と接着芯地を開発。それらを活用した裄綿(ゆきわた)や肩パッド、インサイドベルトなどと併せたセットでの提案を強みとする。接着芯地では、新たにリサイクルポリエステル100%のタイプも開発した。裄綿には、材料のフェルトと毛芯地にペットボトル由来の原料を使用し、高い評価とシェアを得た。

 学生服に最適な芯地としても、安心・安全に使用できるサステイナブル商品を提案する。繰り返しの洗濯による剥離(はくり)トラブルや型崩れを防止する耐久性で〝安心感〟をもたらす。材料にはエコテックススタンダード100レベルⅠ認証の〝安全性〟を付与した。

 現在、静電のニーズに対応するため、導電繊維を使用した芯地やテープ類の開発を進めている。

 安心・安全に寄与する機能を持った商品の開発に注力し、芯地の可能性を広げる。

〈抗ウイルスと環境を柱に/学販シャツ地以外でも普及へ/シキボウ〉

 シキボウは学販シャツ地に向けて抗ウイルス加工「フルテクト」と環境配慮型ポリエステル繊維「オフコナノ」を提案の柱に据える。

 フルテクトは新型コロナウイルス禍を契機に注目が高まり、さまざまな用途で採用が進む。学販シャツ地も2022年入学商戦に向けてアパレルが採用を決めるなど注目は高い。繊維評価技術協議会が認定する「SEK抗ウイルス加工マーク」を取得しているほか、新型コロナウイルスに対する抗ウイルス性も確認している。

 一方、オフコナノは燃焼時の二酸化炭素排出量を削減する特殊ポリエステル繊維。ベースのポリエステルは再生ポリエステルが使用されている。学販シャツ地はポリエステル・綿混生地が主流だが、オフコナノを使うことで、リサイクルだけでなく焼却など最終処分時の環境負荷低減につながる。オフコナノは学販シャツ地以外の用途でも普及を目指す。このため混紡用原料として短繊維でも供給する。

 ユニチカトレーディングとの提携を生かした商品開発にも取り組む。現在、両社による共同開発の検討が進められており、その成果をスクール分野にも導入したいとする。

〈環境配慮型商品に重点/使用済み学生服の回収も/ニッケ〉

 ニッケは2022年入学商戦に向けて環境配慮型学生服地を重点提案する。教育現場でもSDGs(持続可能な開発目標)を取り入れた活動が増えており、この流れに向けてサステイナブルな天然繊維であるウールの良さを改めて訴求する。

 環境配慮型学生服地としてウール・再生ポリエステル混革新紡績糸を使った「エミナル」を重点提案する。通常のリング精紡はカード・コーマ工程の後、粗紡、精紡、ワインディングの3工程を必要とするが、革新精紡は3工程を同時に行い、スライバーから直接、糸をパッケージにする。製造工程が短縮されることで極めて高い生産性を実現しており、省エネルギーにつながる。

 そのほか、非フッ素撥水(はっすい)加工「ロハスコート」も用意するなど環境配慮商材のラインアップを拡充した。機能面では抗ウイルス加工「アンシーン」、調温加工「ウェルモ」も用意する。

 ここに来て使用済み学生服の回収へのニーズも出てきた。このためダイドーリミテッド、ダイトウボウと共同運営するリサイクルシステム「エコネットワーク」を学生服地でも活用する。使用済み学生服を反毛し、不織布原料に再利用する。

 アカツキ商事、ナカヒロ、チクマなどと共同で取り組むオンライン採寸システム「ニッケメイト」も22入学商戦でさらなる採用拡大を目指す。

〈ウール低混率で需要に応える/中国での生産も検討/御幸毛織〉

 御幸毛織ユニフォーム事業部の2021年入学商戦における学生服生地の出荷は前年並みとなった。

 ウール100%素材の採用が減ってきているため、ウール低混率でも風合いの良い生地の提案を進めている。主力商品「プロタック」は、繊細なファインウールを使用した高品位な表面感、光沢感が特長。耐久性のある細い糸が軽量でソフトな風合いを醸し出し、独自の生地設計でナチュラルなストレッチ性を実現している。22年入学商戦に向けては、ウール低混率の商品で低価格指向に対応するほか、ストレッチ、ウオッシャブル機能は必須と見る。

 羊毛価格は、比較的落ち着いているが、欧州市場回復後に価格上昇が進む可能性があり注視している。

 東洋紡STCと後加工の技術交流を進めているほか、東洋紡ユニプロダクツが来秋に開催する展示会に製品を出展するなどして東洋紡グループ間での協力を継続する。

 来年または再来年をめどに、中国での生産に着手することを検討中。3年ほど前からオフィスウエアの生産で実績のある現地協力工場が候補。現在は、三重県四日市の自社工場でほぼ全ての生産を行っているが、学生服でも海外生産に取り組み、コスト面でのメリットを出していきたい考え。

〈2ウエーストレッチを提案/環境配慮型商材の拡充も/東亜紡織〉

 東亜紡織は2022年入学商戦に向けてウール・ポリエステル混の2ウエーストレッチ学生服地「デュアルフレックス」を重点提案する。環境配慮型商材の開発も加速する。

 近年、学生服地でもストレッチ性への要求が一段と強まった。同社では長短複合紡績糸を使うことで2ウエーストレッチ性を実現。ポリエステルは再生ポリエステルを使い、高伸縮フィラメントも原料の一部が植物由来のため環境にも配慮した素材となる。無地だけでなく得意とする先染め柄物も用意していることも強みとして打ち出す。

 そのほか、環境配慮型商材の開発にも力を入れる。現在、ウールと特殊合繊を融合することで環境負荷を低減する学生服地の開発が進んでおり、アパレルとも連携しながら実用化に取り組む。

 学生服分野でも使用済み衣料のリサイクルへの関心が高まってきた。このため同社ではリサイクルシステム「トーア紡エコハーモニー」を学生服分野でも活用する。グループ会社であるトーア紡マテリアルの四日市工場(三重県四日市市)に設置したリサイクルセンターで使用済み製品を反毛し、緑化資材や工業資材の原料に再利用する。

〈ニッケ教育研究所/制服の家計への影響を調査/ウェブサイトや会報誌も充実〉

 学校制服に関する調査・研究を通じて教育の支援を目指す一般社団法人、ニッケ教育研究所は学会やホームページ、会報誌を通じた研究発表と啓発活動に取り組む。

 研究所の顧問を務める甲子園大学心理学部の市川祥子専任講師が19~20日にオンライン開催される日本繊維製品消費科学会年次大会に参加する。20日のポスター発表で研究所と協力して調査した結果の一部を「学校制服導入の有無が家計に及ぼす影響について~費用と負担感に関する一考察~」と題して発表する。

 ウェブサイトや会報誌「未来Watch」のコンテンツも充実する。ウェブサイトはビデオギャラリーの掲載を開始し、第1弾として関西学院初等部の森川正樹教諭による特別講演を配信した。会報誌でも現職の小学校校長による連続寄稿がスタートした。コンテンツの充実で引き続き教育現場への情報発信に取り組む。