「ITMAアジア+CITME2020」開幕/日系出展者が“一歩先”提案/地場系のキャッチアップに対応
2021年06月15日 (火曜日)
アジア最大の国際繊維機械見本市「ITMAアジア+CITME2020」が12日、中国・上海市の国家会展センター〈上海〉で開幕した。国内外1200社強(18年展は約1700社)が出展し、自動化や省人化、省エネのニーズに対応した最新鋭機を訴求。日系企業出展18者は、地場機械メーカーのキャッチアップにさらされる中、“一歩先”の提案で存在感を示す。会期は16日まで。(岩下祐一)
同展は昨年10月に開かれる予定だったが、新型コロナウイルス禍を受け、今回の会期に変更された。その影響と、コロナ禍のため海外企業の出展が減ったことで、出展者数は前回展を大幅に下回った。
出展者数の減少に加え、開幕日が端午節の3連休の初日と重なったで、来場者が減ることを心配する出展者もいたが、開催初日、2日目ともほぼ例年並みの人出だった。日系出展者からは「想定していたよりも多い」「連休と重なったことが逆に幸いし、来場者の質が高い。目的を持った人が多い」との声が聞かれた。
各社の中国内販は、好調に推移している。「昨年9月ごろから市況が回復し、『ボルテックス』の販売が急拡大した。それが今は少し落ち着いたが、今度は自動ワインダーへの引き合いが増えている」と村田機械〈上海〉の野々口学総経理は話す。
津田駒工業のウオータージェット(WJ)織機も、日本製、中国製ともに受注を増やしている。「入れ替え需要が始まったこともあり、しばらく好調が続きそうだ」(津田駒機械製造〈常熟〉の林隆峰総経理)と言う。
地場の繊維工場は今年、設備投資に動いている。繊維業の1~4月固定資産投資は、前年同期に比べ2割以上増えた。前年に新型コロナ禍の打撃を受けた反動もあるが、今年に入り3期連続で前年同期を大幅に上回った。
投資をしているのは、市場がいち早く回復した内需向け工場だけではない。輸出向け工場も「(コロナ禍で厳しい輸出向けから)内需にシフトする中で新しい商品を開発し、設備投資を行っている」(日系出展者関係者)。
一方で、内販の先行きに対しては厳しい見方を示す日系出展者が多い。地場メーカーのキャッチアップが加速しているためだ。日本などの海外メーカーのコピーに終始していたところが、ここ数年能力を高め、「一見しただけではコピーとは分からなくなった」(日系メーカー関係者)。ある日系織物工場関係者は「地場メーカーの織機の品質が急速に上がっており、導入を始めた」と明かす。
そのため、日系メーカーは生産効率アップや自動化、省人化、省エネなどに新技術で先行しながら、アフターサービスを含めた総合力の高さで勝ち抜いていくことが求められている。
今回展でも日系出展者は、“一歩先”を提案する。
福原産業貿易は、ベーシックな天竺を編むシングル機の最新機種を前面に打ち出した。従来機と内部構造を全面的に変え、高速回転(毎分45回)と優れた省エネ効果を両立している。
津田駒工業は、平均10%の水消費量の削減を実現し、排水へのグリス混入を70%削減したWJ織機「ZW8200」をアピールする。
島精機製作所は、ニット製衣類の3Dデザインシステムなどの最新のソリューションとともに、生産効率を大幅に高めた「ホールガーメント(WG)」横編み機の試作機を訴求している。