特集 ITMAアジア+CITME2021プレビュー/世界の有力メーカーが出展

2021年06月04日 (金曜日)

 アジア最大の繊維機械見本市「ITMAアジア+CITME」が6月12~16日、上海で開催される。本来ならば昨年に開催される予定だったが、新型コロナウイルス禍により今年に延期された。新型コロナの収束はまだ見えない中で、日本からの出展は約20社に減ったが、世界25カ国・地域から1600社以上が出展する。

 世界の繊維機械需要は中国、インド、トルコなどを中心に昨年秋頃から回復基調にある。紡績や編み機や織機、不織布用ノズルなど受注が一気に増えたことで生産が追い付かない企業も多い。需要回復のけん引役の一つとなっている中国で主力機種を紹介するとともに、新製品を発表する企業もみられる。

〈1350SFの高生産性を実現/ベッドマットレス用の注目高まる/福原産業貿易〉

 福原産業貿易は今回のITMAアジアで、ベッドマットレス用の両面選針電子ジャカード丸編み機と安定的な高速生産を実現した「M2XC―A3―2RE」を展示する。

 ベッドマットレス用丸編み機は、ハイゲージで織物のような外観を持つ生地が生産できるのが特徴。近年は生地の表側だけでなく裏側にもジャカード柄をつけて高級感を出すモノ作りが志向される中で、両面選針の電子ジャカード機への注目が高まっている。

 ベッドマットレス用の丸編み機は、高付加価値な生地を生産できる機種として注目を高めている。以前は欧州市場向けが中心だったが、近年は中国市場でも販売を伸ばしている。

 会場では高い生産性を実現したシングルニット機「M2XC―A3―2RE」も紹介する。1350SF(口径×回転数)を安定して出せるのが特徴で、2019年のITMAバルセロナで発表し、生産性を求める企業から高い評価を得ている。機械内部や針などの工夫で省エネも実現している。既に中国で販売実績もあり、パキスタン、バングラデシュ、インドなどの市場でも注目を高めている。

 福原産業貿易の丸編み機販売は、好調に推移する。一時期は新型コロナウイルス禍の影響を受けたが、いち早く動いた中国向けに続いてトルコなども回復し、1~3月の生産量は新型コロナ禍前の水準を超えた。中国ではまずカジュアル衣料用で動き、ベッドマットレス用も続いた。トルコはベッドマットレス用がけん引する形だが、衣料用途も動き出している。

〈省エネが特徴の自動ワインダー/モデルSRを初披露/村田機械〉

 村田機械は今回のITMAアジアで自動ワインダー「プロセスコーナーⅡ」の「QPRO EX」と「FPRO EX」、ボルテックス精紡機「ボルテックス 870EX」を実演展示する。FPRO EXでは、2020年に発売したコーントゥコーンタイプの「モデルSR」を初めて出展する。

 QPRO EXは自動化や省エネ性能が特徴で、今回は中国に多い手揚げ精紡機のボビンの巻取りと自動供給が可能なVCFタイプを出展する。FPRO EXはさまざまな糸種、番手、パッケージ形状での巻取りができる。染色用の低密度パッケージにも対応する。展示会ではヤーンクリアラーとスプライサーをなくしてオートドッファーを標準搭載したコーントゥコーンタイプの新モデルを実演展示する。

 ボルテックス870EXは、最高速度毎分550メートルを実現した機種。紡績可能な素材や用途も広がっており、足元の販売は好調に推移する。ビスコース100%、ポリエステル100%の細番手(50~60番手)の高速紡績を実演するとともに、ボルテックス糸の特徴を生かした生地・製品サンプルも展示する。

〈MBの製造設備を訴求/各種原料で生産可能/日本ノズル〉

 日本ノズルは今回展で、湿式紡糸用ノズルやスパンレース不織布用、メルトブロー不織布(MB)製造設備などを紹介する。MB製造設備による不織布サンプルも用意し、さまざまな原料で生産できる点を訴求する。

 昨年は新型コロナウイルス禍により、MB用のノズル・ダイ、MB製造設備の受注が急増した。外注の活用も含めて生産能力を引き上げて対応し、前期(21年3月期)は好調に推移。親会社である中村超硬の決算によると、日本ノズルの化学繊維用紡糸ノズル事業は、売上高30億円(前年比143・5%増)、セグメント利益6億円(同330・2%増)だった。

 MB製造設備への注目も高まっている。同設備は不織布生産だけでなく、電石加工や検反機、スリット加工なども備える。要望に応じて専用設計も可能。原料もPPだけでなく生分解性ポリマーなどさまざまなMBが生産できる。MBはマスク用での世界的な増設により競争が激しくなっており、そのほかの分野に広げるためにもさまざまなポリマーを扱える仕様が重要になっている。

〈精密加工技術を訴求/3Dプリンターで新事業/化繊ノズル製作所〉

 化繊ノズル製作所は、今回展で紡糸用ノズルや不織布用ノズル・ダイなどを紹介する。パネル展示を中心に、得意とする精密加工技術を訴求する。

 同社の2021年3月期は前年比約10%の増収増益だった。新型コロナウイルス禍の影響で化合繊用は落ちたが、メルトブローなど不織布用が伸びた。不織布の製造においてノズルやダイは品質に直結する重要なパーツであり、中国を中心にさまざまな国からの注文が増えた。

 昨年の旧正月明けから引き合いが一気に増え、前年下半期から業績に反映された。今期(22年3月期)も引き続き不織布用がけん引する形で増収増益を見込んでいる。受注は一時に比べると落ち着いたものの、納期は10カ月~1年先。基幹工場の東江原工場(岡山県井原市)では19年に新ノズル棟を新設して体制を整えたが、それでもタイトな状況が続いている。

 メルトブロー用はマスクの需要が落ち着く一方、フィルターなどでの需要が増えている。ノズル・ダイの生産はマスクで多い1・6メートル幅でなく、2・4メートルや3・2メートルなど広幅の需要が増えている。世界各国でパンデミックに備える動きが出ているため、東欧や北アフリカなどこれまで取引がなかった国からの問い合わせも増えている。

 化合繊用の紡糸ノズルも今期は回復を見込む。ベトナムやインドなどで引き合いがあるなど兆しが出ており、中国製ノズルを使っていた企業が高品質を求めて日本製に切り替える動きもある。

 将来を見据えた投資も行う。このほど東江原工場内に金属3Dプリンターを導入することを決めた。ノズルで培った精密加工技術と3Dプリンターを組み合わせ、新事業を創出していく。

〈高張力織物に適するレピア/消極・積極の切り替え可能/イテマ〉

 イテマ(イタリア)は、今回のITMAアジアで、デニム用レピア織機「R9500―2デニム」や産業資材を中心に幅広い用途に使うことができる「ヘラクレス」などを紹介する。

 ヘラクレスは旧パンターが展開していた機種で、現在は産業資材用織機のイテマテックが展開する。2019年のITMAバルセロナから「イテマテック」ブランドとして展開してきたが、M&Aの承認が降りた昨年12月からイテマ傘下のイテマテック社となった。

 ヘラクレスは積極レピアと消極レピアを迅速に切り替えることができ、農業用織物、コーティング織物、コンベアベルト、フィルター用織物、土木用織物、ガラス繊維織物など幅広い用途に使うことができる。10デシテックスから4万8000デシテックスまで幅広い糸に対応する。複数本の同時緯入れも可能。

 特に高張力織物の生産に特徴があり、標準タイプで経糸張力3トン、強化型機で4・5トンに対応する。バンドレピアなので開口を小さくでき、経糸のテンションを抑えて機械に負担をかけることなく高張力織物が生産できる。バックレストローラーはさまざまな種類の織物に対応できるよう選択でき、巻取り装置は三段式で緯糸密度が極端に低い織物にも、超薄手織物にも確実に対応する。

 日本法人のイテマウィービングジャパン(大阪府茨木市)は、6月中旬までショールームでヘラクレスの実演を見ることができる形にしている。

 「R9500―2デニム」は、高い生産性と品質を実現したデニム用レピア織機。生地左端の捨て耳を不要とすることで糸のロスを削減し、主要部品と潤滑システムの最適化で省エネも実現している。新設計のバンドフックは各部品の寿命を延ばし、レピアバンドはグループのラミフレックスが開発した3層の炭素繊維による新型を採用している。

〈新型コントローラーを紹介/扱いやすい仕様に/ストーブリ〉

 ストーブリは今回展で、フランス製と中国製の主力機種を紹介する。新機種では、ストーブリ杭州が生産するドビー「3018型 ヘッドモデル」が発表される。

 主な出展品はフランス製がカム機「1692型ヘッドモデル」、ドビー「3260型ヘッドモデル」、中国製が上置きドビー「2678型de82スーパーストラクチャー」、カム機「1551型e32アンダーモーション」、LXM型電子ジャカード(2668口・TC8型コントローラー搭載)など。イタリア製のN4L型耳ネームジャカード、スイス製のタイイング機「トップマティック」やドローイング機「サファイアS40」なども紹介する。

 日本のユーザーに向けては、電子ジャカードに搭載される新型コントローラー「TC8型」が見どころとなる。電子ジャカードは電装システムとコントローラーの更新を進めている。新型コントローラーのTC8型は、従来のJC7型の機能を網羅しながら、扱いやすさを高めたのが特徴で、タブレット型で通信速度の高速化にも対応する。まず耳ネームジャカードから搭載されたが、今年から順次、その他の機種にも広げていく。電子制御システム「NOEMI」の搭載も進める。

 準備機では自動ドローイング機「サファイア S40」が出展される。サファイアシリーズは、アゼ取り工程を省略できるなど省人化の面で日本でも注目を高めている。

〈ユーザーの目になって視察/駐在員通じて情報提供/伊藤忠システック〉

 伊藤忠システックは、今回のITMAアジアで、会場に行けない日本のユーザーのために取り組む。現地法人を通じて会場で新しい技術を見つけ、会期後に日本ユーザーに紹介していく。

 これまでのITMAやITMAアジアでは、視察ツアーを組んでユーザーから好評を得ていたが、今回は新型コロナウイルス禍で自粛することとなった。代替として日本の顧客の代わりにブースを訪問し、日本のユーザーが現地に行かなくても情報を得ることができる形にする。

 会場では新しい技術の発掘にも注力する。日本の機械メーカーが展開していない領域を中心に新しい取り組み先を見つけ、日本のユーザーに紹介していく。

 同社が日本で扱う織布関連の機械では、レピア織機のドルニエ、カーペット織機のバンデビーレ、電子ジャカードのボーナスなどが出展している。ボーナスは今回展で、新機種「JiL」を発表する。レピア織機用の大口電子ジャカード(6144~1万1520口)で、標準機種の「Si」の機能を厳選することで、買いやすい価格を実現した。会場では自社ブースなどで5台を実演展示する予定で、うち3台が「JiL」の展示となる。

 積極レピアで炭素繊維からガラス繊維、極細長繊維まで幅広い糸種に対応するドルニエの織機は、世界的に注目を高めている。特にエアバッグやフィルター、インテリアなどの用途で受注が大きく増えており、足元は生産が追い付かない状況が続いている。

〈1350回転の高生産性実現/WJL.AJLで新製品/津田駒工業〉

 津田駒工業はエアジェット織機(AJL)の新機種「ZAX001NEO」とウオータージェット織機(WJL)の新機種「ZW8200」を今回展で披露する。

 AJLのZAX001NEOは、最高常用回転数1350回転を実現するとともに、従来機比20%の省エネを実現した。これまで補強で高速化に対応していたフレームについても新たに開発。全く新しい構造とし、振動を30%低減することに成功した。単純な平板状、箱状ではなく、立体凹凸に富む形状とし、高い剛性と動部材の軽量化を同時に実現している。

 WJLのZW8200は、新型ノズル、新型FDP、独自の筬(おさ)打ち機構により、高速生産と環境負荷低減を実現した。従来機比10%の高速化を実現し、水使用量を10%削減、排水へのグリス混入を70%削減するなど環境負荷低減にもつなげた。

 搭載するUH型ノズルは、安定した緯入れと噴射水の空気中への飛散削減を実現する。新型モーターと送り機構により、多様な緯入れに対応。従来機よりも筬打ちストロークを短縮し、第1枠位置を織口に近接させ、高い織物品位と高速性を両立させるなどさまざまな新技術を搭載している。