国内産地企業/存在感増す中国市場/結果が出ず課題も見える

2021年04月07日 (水曜日)

 国内産地の繊維企業が中国市場開拓の動きを強めている。以前から進められている施策だが、新型コロナウイルス禍の早い段階での抑え込みに成功し、経済も順調な同国の存在感は増している。産地全体での取り組みのほか、成果を収める企業の姿も目立ってきた。一方で思うような結果が残せていないケースもあり、課題も見える。

(岩下祐一、川口直康、橋本 学、桃井直人)

 海外市場の開拓は産地企業が長年にわたって掲げてきた課題と言える。中でも中国は経済発展が続いていることから「日本製の高付加価値生地への関心を高めている」との声が聞こえ、チャンスは大きくなりつつある。欧米で新型コロナ禍が続いていることも各社の目を中国に向けさせる。

 産地を挙げて中国市場開拓に乗り出しているのが桐生だ。「桐生織」もブランド化した。新型コロナ感染症がまん延する以前に数社がドイツと中国の視察を行った結果、「中国の方がカットジャカードをはじめとする桐生織物の需要がある」と判断し、提案を強める。

 新型コロナ禍で渡航が難しいといった問題はあるが、「KIRYU textile」ロゴの商標登録を出願し、現在審査中であるなど、着実に前進している。中国視察に赴き、販売実績も持つ織物会社は「価格はネックだが、凝った商品を求める企業・ブランドがあり、その需要をつかめれば可能性は大きい」と話す。

 尾州産地では個々の企業が成果を収めている。婦人服地製造のファインテキスタイル(岐阜県羽島市)は、ここ数年で中国への輸出を伸ばしている。昨年も新型コロナ禍の中でも堅調に推移したが、高級感のあるファンシーツイードが人気を博した。

 婦人服地製造の鈴憲毛織(愛知県一宮市)は2014年に設立した中国法人を拠点に内販を進めている。21年3月期は新型コロナ禍で伸び悩んだが、少しずつ動きが戻ってきた。22年3月期は差別化素材を求める顧客への提案を強めて、1億~1億5千万円の販売を狙う。

 播州産地でも中国法人を持つ産元や生地製造卸の姿がある。そうした企業はインターテキスタイル上海に継続出展し、中国の現地ファッションブランド向けで輸出拡大に取り組んできた。昨年は他の産地と同様に新型コロナ禍でペースダウンしたが、今年に入ってからは回復基調にある。

 産元の1社は「インターテキスタイル上海の成果が出て、ネットを主販路とするファッションアパレル向けで動きが再び活発化」している。ある生地製造卸による大手ブランドへの生地供給は数量ベースで新型コロナ禍前の水準に戻りつつある。細番手を使った綿100%高密度織物などの引き合いが増えている。

 中国市場開拓が進展を見せている半面で、結果が出ない企業も存在する。ある産地の織物製造卸は「以前、中国の企業から『日本の産地を回ったが購入したい生地が限られている』と聞いた」としており、独自性付与や高付加価値化の取り組みは不可欠と言える。

 同じ織物製造卸は「大ロットに対応できないという声もあるが、産地企業の連携で対応できる」とも説く。言葉の問題について、中国人スタッフを採用した企業も存在する。中国内販のハードルは高いが乗り越えられる。中国内販はこれから面白くなりそうだ。