タイ東レグループ/アジアでも“新合繊”を/ユニフォーム、スポーツを拡大

2021年03月25日 (木曜日)

 紡織加工のトーレ・テキスタイルズ〈タイランド〉(TTT)、合繊長繊維製造のタイ・トーレ・シンセティクス(TTS)などで構成するタイ東レグループは、主力用途であるシャツ地や裏地の需要が新型コロナウイルス禍によって激減したことを受け、ユニフォームやスポーツ用途の拡大を進めるポートフォリオ改革に取り組む。開発にも力を入れ、アジア地域でも“新合繊”のような画期的な開発の実現を目指す。

 2020年度(21年3月期)は新型コロナ禍による外出制限や在宅勤務普及によって世界的にスーツやドレスシャツの需要が激減した。このためTTTは売上高の約40%を占めたポリエステル・綿混織物がシャツ地を中心に苦戦。ポリエステル長繊維織物もスーツ需要減退で裏地用が落ち込んでいる。中東民族衣装用ポリエステル短繊維織物も市況低迷と新型コロナ禍による商談停滞で低迷した。TTSも衣料用ナイロン長繊維は内需向けが主力のためタイ経済の悪化とインバウンド需要消失で振るわなかった。

 在タイ国東レ代表であるトーレ・インダストリーズ〈タイランド〉の松村正英社長は「シャツ地や裏地の需要減退はライフスタイルの変化によるもののため、今後も完全には回復しない」と厳しい見方を示す。このため21年度(22年3月期)はシャツ地、裏地ともに減産を計画する。ポリエステル・綿混織物は比較的需要が安定している学販シャツ地などに力を入れ、ポリエステル長繊維はスポーツ向け織物やニット生地を拡大する。

 メガブランドやSPAのサプライチェーンに参画することを重視。物流網混乱を背景にサプライチェーンの物理的距離の短縮を求める動きもあり、タイと周辺諸国で糸・わた、生地、縫製まで一貫生産できることを強みにする。TTTでTTSの原糸を活用することに加え、インドネシアなど東南アジアの東レグループ各社の原糸・原綿の活用も進める。

 松村代表は「加工技術の組み合わせも含めてどれだけ差別化品を開発できるかが勝負。日本で“新合繊”を開発したようなことをアジア地域でも実行する時代になった」と話す。

 SDGs(持続可能な開発目標)やサステイナビリティーへの取り組みも不可欠。TTSで再生ポリエステル繊維「&+」(アンドプラス)を拡大し、TTTでサステイナビリティーを確保した「ベター・コットン・イニシアチブ」(BCI)認証の綿花を組み合わせるなどの商品企画も進める。労働環境も含めたサステイナブル生産体制を証明する国際認証「エコテックス・ステップ」も取得した。

〈エアバッグ基布はフル生産回復〉

 新型コロナ禍の影響で衣料用途が低迷する一方、産業資材用途の市況はいち早く回復している。タイ東レグループも特に自動車関連の勢いが戻った。

 TTTは20年度上半期こそ世界的な自動車生産の減少でエアバッグ基布も減産を余儀なくされたが、自動車生産正常化にともない11月から受注が急回復。現在はフル生産となっている。

 TTSの産業用ナイロン長繊維もエアバッグ原糸が下半期から回復し、こちらもフル生産となる。産業用ポリエステル長繊維もゴム資材用途が好調で比較的安定している。