特集 アジアの繊維産業Ⅱ(8)/ASEAN、南アジアの強化に力/カケンのアジア戦略/施策を着実に実行

2021年03月30日 (火曜日)

 カケンテストセンター(カケン)は、アジア戦略の一環として、存在感を高めているASEAN地域と南アジアの強化を図る。中国の事業を維持・拡大しつつ、旺盛な需要を積極的に取り込むことで成長の加速につなげる。新型コロナウイルス感染拡大の影響は残るものの、試験依頼は回復を見せており、今後は強化のための施策を着実に進める。

 新型コロナの感染拡大はカケンのアジア戦略にも影を落とした。中国に端を発する新型コロナ禍は、封じ込めに成功した国は見られるものの、アジア全域へと広がり、バングラデシュやインドなど、長期にわたって都市封鎖(ロックダウン)といった措置が取られた国もあった。

 中国は生産地として比較的早い段階で回復を見せたが、そのほかの国・地域については、物流関係や資材調達が滞るといったマイナスの影響が続いた。アパレル企業や商社などの担当者が現地に入れていないのも大きかった。こうしたことなどから日本向けの一部では中国生産回帰の流れもあった。

 カケンは2020年度にスタートした3カ年の中期経営計画の中で、バングラデシュやインドを軸とする南アジアの強化を打ち出している。その南インドでは、14年にバングラデシュのダッカに拠点を設置した。試験依頼が増えていたことから20年度に駐在員を1人増やし、2人体制とした。

 インドについては、19年1月にバンガロール事務所を開設している。駐在員を2人配置して、試験受付と試験相談、技術アドバイスなどを行う。ラボ立ち上げの計画は新型コロナ禍によって遅れが生じているが、「バングラデシュ、インドは生産拠点として重要度を増す。ぶれることなく強化策を進める」方針を示す。

〈中国/機能強化で存在感高める〉

 中国に香港検査所、上海科懇検験服務、上海科懇南通、青島試験室、大連試験室、寧波試験室、無錫試験室といった拠点を持つカケン。20年は新型コロナ感染拡大の影響を受け、前半は厳しかったものの、徐々に回復してきた。「急激に回復し、昨年を上回る勢い」を見せる拠点も少なくないようだ。

 青島試験室は、20年前半は新型コロナ禍で試験依頼に減少傾向が見られたが、11月以降は前年を超える試験依頼を受けていると言う。そうした状況下で増えていたのが「短納期対応が求められ、あわただしい」という声だった。

 青島試験室は新住所に移転し、今月15日から新試験室で営業を始めた。多くのことがワンフロアで対応できるようになり、「顧客の短納期対応にも協力できる」とした。山東省はインナー・肌着の産地であり、吸水速乾性の試験機の充実を図っている。

 無錫試験室は、20年について2月から8月までは低調だったと振り返る。しかしながら8月以降は順調に回復し、青島試験室と同様に前年を上回る数の試験依頼がある。21年に入ってからも好調な動きを持続しているが、新型コロナで先は読みにくいと話した。

 そうした事業環境下で求められるのは迅速な対応と捉えている。同試験室の特徴・武器は小回りを利かせた機動力にあるとし、さらに磨きをかける。衣料品以外の試験の強化も図る方針で、21年は靴試験などの充実を目指す。

〈ASEAN地域/提携先との連携を深化〉

 ASEAN地域では、インドネシアでの試験業務と検品事業を行っているカケンインドネシア、タイランド試験室、ベトナム試験室といった拠点を持つ。タイやベトナムでは提携先との連携深化による現地企業の需要取り込みや機能の高度化が課題になる。

 タイランド試験室は、ビューローベリタスとの提携による拠点。20年は新型コロナ禍で前半は試験依頼件数が落ちた。中国がいち早く回復し、一時的に生産がシフトしたことなどが考えられる。ただ11月ごろからは緩やかながら回復基調に入っている。

 今後は新規顧客開拓を進めるが、現地企業の掘り起こしにも力を入れる。タイ現地企業は「丸編みが主体で、縫製もしっかりしている」と話す。日本向けを強化する企業は増えており、期待できるとしている。ミャンマーやパキスタンからの試験依頼も多い。

 ベトナムでもビューローベリタスと提携し、試験室を設けた。20年はタイや中国とは少し異なる動きを見せた。前半は例年通り好調に推移したが、カンボジアとの陸路が閉鎖されたことなどが影響して8月で勢いが止まった。12月以降は徐々に回復基調にある。

 ベトナム試験室は、繊維だけでなく、食品衛生法に基づいた試験にも対応しているのが特徴だ。プラスチックの弁当箱やおもちゃなどの試験を始めて約2年になるが、軌道に乗り始めており、さらに増やす。繊維・衣料品では内販向けの試験を強化していく。