村田機械/製品業界へ見本糸提供/結束紡機の普及目指して

2002年01月21日 (月曜日)

 繊維機械製造の村田機械(京都市伏見区)は、新種の高速空気精紡機、ムラタ・ボルテックススピナー(略称=MVS)の普及を目指し、同機で作った結束紡糸の長所を、繊維製品製造業者へ提案することに力を注いでいる。糸や生地の使用者に認知してもらうことで、紡績会社の同機導入意欲を刺激しようとの狙いからだ。すでに、同社が持つ試験機を使って見本糸を作り、試作用に靴下、タオル、パジャマ関連企業へ提供した。

 「MVS」は、結束紡糸を作るための機械。すでに同社は、「ムラタ・ジェットスピナー」(略称=MJS)商標で同様の機種を発売している。「MJS」は、短繊維の束を別の繊維で束ねた格好の結束紡糸を作るためのもの。この場合、束ねる側の繊維の一端は、束ねられる側の繊維束の中に保持される。このような構造を「MVS」糸特有のものと既報したが、これは誤り。「MVS」糸は、糸を構成するすべての繊維の一端が芯部に保持され、もう一端が結束したような格好になっている。

 「MJS」糸、「MVS」糸ともに、ピリングが発生し難いという特徴がある。ただし、吸水速乾性は「MJS」糸の方が高い。一方、「MJS」では純綿糸の生産が難しいが、「MVS」では容易だ。また、「MJS」は8単までの太番手の生産に向くが、「MVS」は15単から60単までの中番、細番手の生産に向くと言う。

 「MVS」機は現在、米国を中心に300台強据えられている。米国に225台、豪州に27台、インドネシアに28台、イタリアに11台、タイに3台、インドに1台、韓国に1台、香港に1台あるそうだ。日本には10台あり、うち7台は村田機械が保有している。これら「MVS」機のほとんどはまだ試験用として利用されている段階だが、米国、豪州、イタリア、インドの4カ国では商業生産にも活用され始めた。豪州で生産されている「アディダス」商標のトレーナはすべて、「MJS」糸か「MVS」糸を使ったものになっているそうだ。また、米国のウォルマートで販売されているトレーナーもすべて、そうなっていると言う。