特集 スクールスポーツウエア(3)

2020年08月21日 (金曜日)

〈菅公学生服/“筋肉質なカンコーブランド”を/「プレミアム」累計120校に〉

 菅公学生服は、中高向け自社ブランド「カンコープレミアム」の販売を本格化させて2年、今入学商戦で累計の採用校数が120校となり、堅調に採用を拡大していっている。

 「カンコー」ブランドのプレミアムラインとして訴求を強めており、今春は前年並みとなる60校の採用を獲得。大手素材メーカーと共同開発し、防風性や耐久性、軽量性に優れる素材「グランガード」の機能、シンプルながらもスタイリッシュなデザインをアピールしてきたことが奏功した。同社は中学校で高い業界シェアを誇るが、同ブランドでは高校の採用も増えてきている。

 動きやすさや肌触りにも注意して開発しており、安心や安全といった体育着に求められる基本的な品質面の評価も高まっている。「“カンコー”ブランドをより筋肉質なものにできるよう取り組む」(開発本部学生工学研究所の佐藤範和スポーツ開発課長)。

 カンコーブランドのもう一つの柱として、2018年に発表した小中学校向け「カンコーノームコア」も販促を強化。スタイル、素材、マークなどの2次加工と、3ステップの選択で校風に合うウエアを簡単に発注できるオーダーシステムを訴求し、認知度向上に努めている。

 テーマは“究極の普通”で、採用から次のモデルチェンジ(MC)までのサイクルが長い中学校に主に提案し、「普遍的で機能的」「シンプルで飽きの来ないデザイン」といった特徴をアピール。最近では学校に対し、在校生と一緒にオリジナルマークを考える機会を促すなどして提案を強めている。

 その他のアイテムでは、高い防透け性を持つスポーツウエア「ミエンヌ」のTシャツの販売が堅調に推移している。同アイテムの採用で新規の学校と関係を構築し、体操服などのMCにつなげることも想定する。「少子化で新規校獲得の重要性が高まる中、2、3年かけたアプローチを視野に入れる」。

〈明石SUC/「アスリッシュ」拡大に手応え/学年色など企画充実を〉

 明石スクールユニフォームカンパニー(明石SUC)は、今年から販売を本格化させた独自ブランド「アスリッシュ」の2年目に向けて、学年色の充実など商品企画を強化する。

 営業本部の前田健太郎スクールスポーツ部長は「納品や評価で実績を積み上げていて、来入学商戦への手応えを感じている」と話す。

 アスリッシュは、「アスレチック」「スタイリッシュ」を組み合わせた新ブランド。昨年に続き、課外活動など校外着としても着用できる汎用性の高いデザインをアピール。ポリエステルの撥水(はっすい)糸使いで汗染みや蒸れを防止できるTシャツ、保温性や軽量性を高めたダンボールニット使いのトレーニングウエアなどラインアップも充実させている。

 新たにファスナー部分でレッド、ブルー、グリーンなどのカラーバリエーションをそろえ、学年色のニーズにも応えている。「企画力を向上させ、来春には40、50校程度の採用を目指したい」。

 ライセンスブランド「デサント」も販売が堅調で、今入学商戦では100校に採用された。これまでも特徴的なデザインを訴求してきたが、来入学商戦に向けては、縫い目などが表地に出ないフラットなカラーファスナーがアクセントになる「チェストファスナー」、斜めのラインが特徴的な「ライジングライン」、左右非対称のバイカラーデザインが美しい「アシンメトリー」などの新作を提案する。

 同ブランドは、2005年入学商戦からの累計採用校数が1900校に達した。東京五輪・パラリンピックは新型コロナウイルス禍で延期となったが、引き続きオリンピックイヤーにちなんだ「2020年度中に累計採用2020校」の目標に向けて取り組む。

 その他、店頭中心の企画も検討。抗ウイルス対策商品として空気触媒加工「ティオティオプレミアム」を施した体育着、熱中症対策商品として吸放湿・吸汗速乾素材「モイステックス・クリーン」使いのウエアなどを打ち出す。

〈ギャレックス/Pu混で高いストレッチ性/20入学は概ね堅調〉

 ギャレックス(福井県越前市)の2020年6月期決算は、前期比10%ほどの減収となった。3月までは堅調だったが、4、5月に新型コロナウイルスの影響を受けた。21入学商戦向けにはポリウレタン混の生地を使ったウエアを同社としては初めて投入するほか、消臭や防風といった機能性にこだわる。

 4、5月の落ち込みは、修学旅行や運動会などの学校行事に連動した買い替え需要が新型コロナ禍の休校措置の中で減退したことや、水着販売が低調だったことなどが要因。ただ、今期スタートの7月は、「4、5月の落ち込みをカバーできるほどではない」ものの、反動と見られる需要増で前年同月比大幅増収となった。今後については秋の学校行事が実施されるかどうかによって大きく左右されると読む。

 20入学商戦は、新規獲得校が220校(水着含む)と堅調だった。同業他社の事業縮小に伴って獲得を伸ばした19入学の300校には及ばないものの、大阪など「元々強い地域でさらに伸ばせた」ことが奏功した。新規の内訳は「ギャレックス」150校、「フィラ」50校、「スポルディング」20校。

 21入学商戦に向けては、同社としては初めてのポリウレタン混生地を採用した。消臭、防風機能も付与してギャレックスで打ち出す。同ブランドでは抗菌消臭の糸を使った半袖シャツの新作のほか、同糸を使ったジャージーの投入も予定する。

 新作としては他に、大胆なアシンメトリーでスタイリッシュなウエアなどをフィラで3型、胸から肩にかけて大胆なブランドロゴをプリントで配したスポルディング1型を投入し、新規校獲得につなげる。新型コロナ禍で急速にニーズが高まっている抗ウイルス加工の開発にも力を入れていく。

 福井県と中国に自社工場を持つ同社は、工場稼働にも工夫を凝らす。近年は生産時期の平準化がうまく進んでおり、生産ロス低減とコスト削減に寄与。今後も「自社工場、協力工場ともに早期受注の計画生産体制を敷いていく」考え。

〈トンボ/昇華転写が部活着も販路開拓/新型コロナ禍で見せる安定感〉

 トンボは、新型コロナウイルスの影響を受けてスポーツの2020年6月期売上高で前期比微減を想定するが、今入学商戦では自社ブランド「ビクトリー」と、「ヨネックス」ブランドを合わせて新規採用校を堅調に獲得した。昇華転写プリントの販売が安定感を見せ、バレーやサッカーなど部活動の販路開拓も進んだ。

 営業統括本部の河本光正スポーツMD本部長によると、引き続き昇華転写プリントの商品が新規採用の大半を占める。同社は美咲工場(岡山県美咲町)に昇華転写プリントの専用プリンターやCAM(自動裁断機)を持つが、昨年から今入学商戦にかけて専用のプレス機を増設し、デザイン編集システムも導入。当面必要な能力の増強を完了した。

 来入学商戦に向けては、12月に同加工の専用プリンターを追加導入し生産キャパシティーを確保する考えだ。「昇華転写はスポーツのアイテムと親和性が高い。新型コロナ禍によるマイナスを取り返していく」(河本部長)。

 独自開発の軽量ポリエステルニット「ピステックス」を使ったウオームアップウエア「ピストレ」に昇華転写を組み合わせた商品は、ビクトリーだけで展開しているが、特にこの商品の販売が堅調に推移している。素材の軽さや防風性、保温性も継続して評価が高まっている。

 ピステックスでは、撥水(はっすい)、裏起毛、制電、寒冷地向け肉厚起毛4タイプに、軽量性と吸汗速乾性能を高めたピステックス・ドライを新たに加えたことで、提案の幅が広がってきた。最近では特に、寒冷地向けが東北地方などで採用を獲得している。

 18年に開所した縫製のトンボ倉吉工房スポーツ館(鳥取県倉吉市)は、初年度に計画していた生産量を達成した。今年はラインの増設を検討していたが、新型コロナ禍による需要の足踏みを受けて1年ほど保留とする。

〈瀧本/今期を「スポーツ元年」に/「ノンシャカ」など投入〉

 瀧本(大阪府東大阪市)は今期(2021年6月期)を「スポーツ元年」と位置付け、スクールスポーツウエア販売の拡大を目指す。21入学商戦に向け、「ファンスポ」をテーマに自社ブランド「タイガースポーツ」、ライセンスブランド「ロット」で新商品を投入するとともにカタログを一新、提案活動を強めて新規校獲得を目指す。

 同社のスクールスポーツ事業は近年、減ってはいないものの伸ばせてもいなかった。同事業の売上高は全社の1割を占めるが、この比率は同業他社と比べて低い。「改めてスポーツの売り上げを伸ばすことに注力する」とし、展開商品を大幅リニューアルするとともに、営業活動を強める。

 タイガースポーツにおけるファンスポは、ファンクション(機能)とスポーツの融合を意味するもの。「機能素材でより学校生活を快適に」というコンセプトで新商品を開発した。

 目玉商品は「ノンシャカ」。防風、軽量、コンパクトなどの機能を持ちながらシャカシャカ音を軽減するトリコット生地を使用。ハーフジップ、フルジップ、パンツ、ハーフパンツで展開する。

 ライセンス開始8年目を迎えるロットにおけるファンスポは、ファン(楽しみ)とスポーツを掛け合わせたもの。業界で珍しい杢(もく)グレーの丸編み地を用い、スタイリッシュに仕上げた。吸水性や速乾性などの機能も併せ持つ。ロットは累計採用校数が80件となるなど堅調な伸びを見せている。

 足元は新型コロナウイルス禍で提案作業がなかなか進まないが、「少しでも来入学商戦で上向きの結果を出し、その次の年から大きく拡大していきたい」との考えを持つ。そのため、今回のノンシャカなどに続き数年かけて昇華転写プリントなど第2、第3弾の目玉商品を開発、投入していく。

〈ユニチカメイト/グループ連携強める/「プーマ」は着実な伸び〉

 ユニチカメイト(大阪市中央区)は今後の方針として、効率生産やグループ連携による素材開発、電子商取引(EC)事業の研究・実践を挙げる。

 2020年3月期は、売上高が前期比微増の18億円だった。学販は横ばいだったものの、企業ユニフォームなどのOEM事業で新規獲得に成功し、微増収に寄与した。利益は物流費や加工料金などのコスト上昇によってわずかに減少した。

 ライセンスブランドの「プーマ」は累計採用校数が150件を超えた。新規獲得のために導入したブランドだが、ここまで順調に来ている。21年入学では200校超を目指す。

 今期ここまでの商況は、新型コロナウイルス禍で厳しい。休校によって既存生徒からの追加が激減し、運動会などのイベント中止によって買い替え機運が高まらなかった。水泳授業の休止も水着販売に影響した。休校措置が解かれた6月、7月は反動増となっているが、4月、5月の落ち込みはカバーできていないという。

 こうした中で取り組むのが生産の効率化。プーマ、自社ブランドの「ユームーブ」ともに拡販に向けて型数は今後増やしていくが、コスト高対策として「素材は絞り込む方向」(清水義博社長)。その上で、ユニチカグループ内での連携に力を入れて新素材開発を強化する。

 バーチャル採寸やネット販売などが業界内で徐々に出てきていることから、「EC事業の研究を早急に進め、何らかの形で実施していく」方針も打ち出す。

 21年入学向けの新商品は、プーマで上下物3型や半袖シャツ、長袖シャツを、ユームーブで3型を投入する。防風や防汚、吸汗速乾などの機能を盛り込んでいるほか、ユームーブでは「スクールワーキングスポーツウエア」をテーマにデザインをカジュアル寄りにし、着用シーンが広がるアイテムになっている。

〈事業拡大のチャンス/ウオームアップで新企画を投入/ミズノ〉

 ミズノによると、スクールスポーツの市場では価格を求める層と付加価値を求める層との二極化が進行しており、「高付加価値品に強みを持つ当社には事業拡大のチャンス」との認識を示している。

 新型コロナウイルス禍に伴い、採寸ができず納品の後ろ倒しが発生したり、水泳授業の休止により水着販売がなくなった学校があるといった影響が出ているという。

 2019年商戦ではウエアが前年比1桁%の減、水着が大幅減となったが、2020年商戦で2学年分を販売する学校があり、巻き返しを図る。

 最近のトレンドとして、白や学年色の面積が多いモデルへの引き合いが増えているほか、近隣校と重複しないモデルを求めるニーズが継続しているのが特徴という。

 来シーズンに向けては、白生地を多く使い大胆に切り替えを配置したウオームアップの新製品を発売。配色の違いで印象が大きく変わるため、「1モデルで近隣の複数校に対応できるモデルに仕上げた」と言う。

 他校との差別化を望むニーズに応えていくため、デジタルプリントで柄やグラデーションを表現できるようにした。

〈オゴー産業/重ね着の新スタイル〉

 オゴー産業(岡山県倉敷市)は来入学商戦に向け、重ね着で季節や目的に合わせた着こなしができる「レイヤードスタイル」(実用新案申請中)を訴求する。春夏は柄の入った半袖を、秋冬はその半袖と無地の長袖を組み合わせて着用できる。長袖は柄がないために製造コストを削減でき、従来品より価格を抑えられる。

 体育着のメインブランド「スポーレッシュ」で展開する。同ブランドでは、防汚加工や吸湿発熱素材の活用、動きやすさを追求した独自の「SAS(スクール・アメニティ・システム)カッティング」の導入などで販促を進めてきたが、新企画で提案の幅を広げる。