特集ハイテク繊維/東洋紡、クラレ
2001年12月19日 (水曜日)
第2世代のハイテク繊維/特徴生きる分野で需要拡大
パラ系アラミド繊維に続く第2世代のハイテク繊維も好調に推移している。独自の素材特性が評価されているのだろう。いずれも量的には小さいが、その価格は高い。その戦略をしっかり組み上げている点が量を追わねばならないパラ系アラミド繊維との違いかもしれない。
東洋紡は高強力ポリエチレン繊維「ダイニーマ」(年産410トン)、PBO繊維「ザイロン」(同200トン)ともフル生産が続いていることから早期増設を計画する。「ダイニーマ」は00年後半から低調であったが、今上期からフル生産。「世界的に高強力ポリエチレン繊維は玉不足で、ヘルメット用織物、釣り糸、スポーツカイト用糸など撚り糸など加工品の輸出が堅調」という。
PBO繊維「ザイロン」は「開発後期が終わり、本格販売の夜明けを迎えている。基盤は固まった」。月によっては15~20トンの販売に達するなど「完全に玉不足にある」。とくに、防弾チョッキなど防護衣料向けの輸出が伸びており、欧米向け輸出比率は80%に達している。
懸案の耐熱フェルト用短繊維も「まだ価格面で抵抗は強いものの、着実に伸びており、リピーターも多い」ようだが、まだ短繊維でのボリュームが見込めないこともあって、次の増設は長繊維専用機で行う予定だ。
今後は2素材とも既存用途だけでなく、ゴム補強(ザイロン)、コンクリート補強(ダイニーマ)など繊維補強複合材料での開拓が遅れているとして、同分野での商品開発などを加速させ、次の増設に備える。
クラレの高強力ポリアレリート繊維「ベクトラン」(年産400トン)も倍増設を計画している。「パラ系アラミド繊維のように量は追う戦いは挑めないものの、手応えはある」とする。
延縄を中心とする水産資材が東南アジア向け輸出を中心に堅調に推移していることもある。「ベクトラン」にとって水産資材は事業基盤でもあるからだ。
水産資材は「ベクトラン」がもつ低吸湿性、クリープ性(伸びが少なく、経時変化がない)が評価されている訳だが、さらに原着糸を生産できるという特徴もある。この特徴を生かしたのが、テニスなどのネットコード。従来、球技用ネットを張るにはワイヤーなどが使われている。
こうした独自性を生かし「特徴が生きる分野を着実にモノにしていく」のが基本方針で、ネットコードのほか、防護用途や同社が比較的強い建築土木などに狙いを定める。
面白いところでは最近、見かけるようになった玄関の引き戸網戸。そのコード類にクリープ性を生かして「ベクトラン」の黒原着糸が使われている。
また、将来に向けて、インテリア、FRP(繊維補強プラスチック)の開発も進めているようだ。