特集 オフィス&サービスウエア(2)/経営陣に聞く~2019年前半の商況と今後の展望

2019年07月01日 (月曜日)

〈神馬本店/社長 神馬 真一郎 氏/「美形」を前面に訴求〉

 2019年6月期は、売上高が前年並みの見通しだ。夏物は昨年に比べ大口の案件が少なかったものの、新商品を増やしたことが安定した業績を支えた。事務向けの割合が大きかったが、事務と営業の兼務など最近の職域の拡大を考慮し、接客向けを中心に商品構成を刷新した。

 19秋冬は、カタログで主力ブランドの「美形(ミカタ)」シリーズを前面に押し広げて訴求し、展示会も同シリーズを中心に陳列する。接客向けのウエイトも高めつつ、事務向けはこれまで通り安定的に注力する。

 今期からは、視点を変えながら経営ビジョンを刷新したい。オフィスウエアとしての差別化が求められる中、機能的な素材をどう取り入れることができるかが重要になる。

 将来的にはレンタルやリースのサービスも市場で増えてくるだろう。月間定額制のサービスも可能性がありそうだ。

〈住商モンブラン/社長 長尾 孝彦 氏/今期はIT投資進める〉

 2019年5月期は、売上高が127億円となり過去最高を更新した。利益は精査中だが、こちらも過去最高になる見込み。計画には届かなかったものの、稼ぐ力が安定化してきたと評価している。

 カタログ定番品が潤沢な備蓄を背景に順調に販売を伸ばし、別注も拡大した。ブランド品もそれぞれ好調。メディカルの伸びも目立った。即納率98%という在庫を切らさない取り組みや積極的な営業活動が顧客の信頼を勝ち得たのだと思う。

 今期は売上高142億円を目標とし、来期で150億円を達成したい。ただ、大事なのは売り上げよりも中身。利益を伴わない売り上げは不要であり、その意識は社内にかなり浸透してきた。

 今期はIT投資を進める。デジタル化には既に着手しているが、もう一段引き上げるためにお金を使い、社内外で業務効率化を実現する。

〈ボンマックス/社長 外川 雄一 氏/在庫積み「駆け込み」狙う〉

 オフィスウエアは、2~5月中旬ごろまでは伸び悩んだが、5月下旬から潮目が変わってきた。10月の消費増税を見据え、主力商品の在庫を積み、大口の受注を狙う。

 過去2回の増税を振り返ると、増税前の2カ月間の売り上げは、前年同期に比べ、2割以上伸びている。今回も在庫をそろえ、駆け込み需要に備える。

 サービスウエアの商況もオフィスウエアとほぼ同じで、7月以降に勝負をかけたい。コンセプトにこだわるホテルからの受注も増えてきた。イトキンファンの子会社化などで、2~5月のグループ全体の売上高は、前年同期比5%増と伸びている。

 ユニフォームの新商品は、在庫を積む量を予測する難しさがある。そうなると、価格などで後発商品がどうしても有利になる面がある。それでも商品開発力を磨き、パイオニアであり続けたい。

〈アイトス/社長 伊藤 崇行 氏/駆け込み需要に対応する〉

 今上半期(2019年1~6月)業績は前年同期を上回ることができた。計画には届いていないが、通期売上高215億円の目標はなんとか達成したい。電動ファン(EF)付きウエアが夏場でどれだけ売れるか、消費増税前後をどう乗り切るか、防寒ウエアがどのように動くかがポイントになる。

 業界全体の意識がEFウエアに集中しすぎていることにやや懸念がある。販売店も従来の定番品より話題性のあるEFウエアを売りやすいだろう。それは理解するが、定番品も大事。定番品とEFウエアなど新たな商材の両方をバランス良く売れれば理想だと思う。

 熱中症対策の「アイスベスト」が好調で、入荷待ちの状況。既存販路以外を開拓するツールにもなっており、ありがたい商材と言える。

 消費増税に伴う駆け込み需要もありそうなので、早期生産などで対応したい。

〈チクマ/アルファピア事業部長 岩崎 敦史 氏/SDGs事業強化〉

 オフィスウエアは、夏物の動きが鈍い。2019年11月期の半期を振り返ると、前半は堅調だったが、後半は10連休など休みの多さが影響し、やや失速した。事務服を着る人が減る中で、新しい仕掛けや、商品の絞り込みなど対策を考えたい。

 一方、好調なインバウンド需要に支えられ、サービスウエアの受注は底堅い。男女ペアのスーツや、今年リニューアルした接客向けブランド「ユー・ファクトリー」が春先まで伸びた。特に新商品「マリークヮント」は、予想以上に引き合いが多く、ブランドの力を感じている。オールシーズン商品だが、「夏物が欲しい」という声もあるので検討したい。

 当社は昨年12月、国連が掲げる持続可能な開発目標「SDGs」に対応した事業の強化を発表した。再生繊維やバイオ由来原料を積極的に製品に取り入れていく。

〈カーシーカシマ/常務 増田 庸佑 氏/オフィスウエアをカジュアルに〉

 2019年7月期はオフィスウエア「エンジョイ」、サービスウエア「エンジョイノワール」がけん引し、売上高は前年比10~15%の増収になる見通し。ソフトワーク向け「キャリーン」もファンが増え、採用する業種に幅が出てきた。ただ、夏物は動きが鈍い。最近は、暑さが秋以降も続くので夏商戦を強化したい。

 オフィスウエアがカジュアル化する中、ニーズに合う商品開発が大切になる。19秋冬は、フラットシューズに合う、丈が長めのスカートや、ワイドパンツを打ち出し、新しいオフィススタイルを提案する。

 環境に配慮した素材も増やした。ベッドやアメニティーに古材やリサイクル素材を活用するエコホテルが増えていて、再生繊維を使ったユニフォームは顧客に響きやすい。このほか、拡大する電子商取引(EC)向けの戦略商品も構築したい。

〈サンペックスイスト/社長 宍戸 典之 氏/新社名「サーヴォ」に〉

 9月1日に社名を「SERVO(サーヴォ)」に変更する。「おもてなしの心(Service)をめぐらせていく(Volvo)」という意味を込めた。イストとサンペックスという二つの会社の合併から5年がたち、社員の意識が一つになった今が節目と考えている。

 春の商況は、繁忙期の3、4月は昨年に比べると良くなかったが、5月後半から盛り返してきた。昨年も後半に売り上げが伸びたので、下半期に向けて秋物でどれだけ盛り返せるかにかかっている。分野別では、食品工場向けの白衣が堅調で、売り上げは前年同期比をクリアした。

 昨年から進めているベトナムでのオフィスウエアの販売は、最終サンプルを作り、詰めの段階に入っている。現地の金融機関などにスカート、パンツ、オーバーブラウスを提案する。

〈フォーク/社長 小谷野 淳 氏/時代に合うプロモーションを〉

 春夏の立ち上がりは、欠品がマイナス要因になり、繁忙期の機会損失につながってしまった。昨年移転したベトナムの工場の生産力が安定しなかったことが、要因とみている。繁忙期は終わったが、閑散期のマネジメントをしっかりと行い、次につなげる。

 オフィスウエアは、人口減少が進み、着る人の年齢が上がる中で、これまでとは別の商品が求められている。落ち着いた色や柄のウエアを増やしアプローチしたい。オフィスウエアとメディカルウエアの境界をなくした製品開発も進める。

 中期的な展望では、いかに時代に合うプロモーションをしていくかが大切になる。会社のブランディングでは、営業や物流で顧客に向けたサービスの質を高める。最終ユーザーの一般の人に製品を知ってもらうためにもウェブでのプロモーションに力を入れる。

〈ジョア/社長 神馬 敏和 氏/5月単月で15%増〉

 2019年度前半(1~5月)の売上高は、昨年開拓した新しい協力工場も含めて生産体制が安定したことと、社内の体制を再構築したことが功を奏し、前年同期比5%の増収となった。特に5月単月の売り上げは、夏物のオーバーブラウスの注文増で15%の増収と好調だった。

 19年12月期は、業務の効率化に向けてシステム化や自動化に取り組む。人材採用も積極的にし、新しく採用した数名の幹部候補生が戦力になりつつある。今後はデザイナーやパタンナーなどの採用にも力を入れ、組織力の強化を図る。

 今秋冬は「アンジョアソレイユ」ブランドから、環境に配慮したエコ素材を使った「華やぎコンシェルジュVivid」シリーズを打ち出す。売り上げの一部は森林保全団体モア・トゥリーズに寄付し、森林の保全活動に役立てる。

〈ハネクトーン早川/社長 早川 智久 氏/ターゲット絞り提案〉

 前期(2019年4月期)は売上高10億円台にのせることが出来た。事業の柱であるスクール、ビジネスのうちビジネスがけん引した。オフィスとサービスを融合させた接客業向け「カウンタービズ」は販売代理店に特徴をよく理解していただき、採用先も総合病院などに広がっている。春夏商品も好調だ。

 「おもてなし」をコンセプトにした制服が増えている。接客業の市場は広いがユーザーのニーズは多様で、例えば美容院向けに企画したものが企業の受付に採用されるケースもある。このカテゴリーはニッチなものと位置付け、ターゲットを具体的に想定し提案していく。

 19秋冬のプロモート商品は機能性、快適性に審美性を増した「ストライプニット」など、特徴と対象業種をより鮮明にした。インバウンド、五輪需要を取り込んでいきたい。

〈セロリー/社長 太宰 幹夫 氏/スピード持って市場拡大〉

 本年度上半期(2018年12月~19年5月)の売上高は前年同期比3%増だった。市場の空気は良くなかったものの、売れ筋商品の在庫をしっかり確保していたことで受注率が前年同期比9・5%増と伸び、受注残高が例年よりも少なくスムーズに供給できた。

 特に東京市場での販売が堅調に伸びている。営業担当を増やし、営業にデザイナーも同行するなどの取り組みで、取引先の要望に対しスピードを持った対応ができてきた。国内に縫製工場を持ち、安定した供給ができている点が評価され、取引先の中には工場見学をするケースが増えつつある。

 下半期に向けては伸び悩むサービス向けユニフォームで専門性を持たせた分野別の商品提案を強める。人材育成も強化し、縫製現場では「繊維マイスター制度」によって、若い世代が「目指したい人材」を増やす試みにも取り組んでいきたい。

〈トンボ営業統括本部/執行役員 ヘルスケア本部長 永瀬 公雄 氏/精度高め商品を安定供給〉

 2019年6月期は、ケア(介護)、白衣の販売が伸び悩んだが、入院者向けのコンフォートウエアや検診着の販売が堅調で、ヘルスケア事業全体では前期比約6%の増収で初めて売上高が20億円を超える見通しだ。データの蓄積と分析で在庫の精度が高まり、ニーズに沿った商品の安定供給が増収につながった。

 今年度から投入したスポーツブランド「ヨネックス」の介護・看護向け「メディケアシリーズ」は順調な滑り出し。17年に開発したニットの患者衣も案件が増加している。

 今期は、ヨネックスでチーム医療向けの新商品を投入する。ナースウエアや理学・作業療法士専用ウエアなどイメージを統一し、例年より早めに打ち出す。気温・気候に合わせた素材の提案や、レンタル市場拡大による工業洗濯の増加など業界の流れに沿った対応も強める。

〈オンワード商事/社長 田村 保治 氏/物流システムを効率化〉

 ビジネスユニフォームの商況は、飲食業を中心にしたサービスウエアが堅調に動く。東京五輪・パラリンピックに向けて、外食産業や化粧品、警備、タクシー乗務員など別注の引き合いは多い。メディカルウエアは、2019年度にカタログを刷新したので、来年の納品に期待している。

 物流の改善も進めている。秋冬の物件からは、生産国の中国やベトナム、ミャンマーからの出荷段階で、送り先を分けて日本に運ぶ。港からそのまま顧客へ送り、時間短縮につなげる。

 18年から一般社団法人日本アパレルクオリティセンターとともに、工場の監査を行い、従業員の労働時間の管理や安全の確認など、サプライチェーンの透明性も高める。

 当社は生産や品質管理など全てを内製化していることが強み。今後も高品質なユニフォームを作るために磨きをかける。

〈TBユニファッション/社長 松岡 浩平 氏/細分化してニーズ捉える〉

 別注メーカーとして、デザインや機能といった顧客のニーズに応じたユニフォーム作りを進めている。ワーキング向けを主力とするが、サービス向けについても企画力を生かし、顧客目線に立ったウエアを提案する。

 2019年3月期は売上高、利益ともに過去最高を記録した。ワーキング、サービス向けともに好調だった。ただ、今期は景気の失速感からワーキング向けは厳しいとみている。その分をサービス向けでカバーしたい。

 そのためにも、これまで以上に顧客のニーズを的確に捉えることが重要だ。さまざまな業種や職種、分野ごとに細分化してニーズを拾い上げ、それをユニフォーム作りに落とし込む。

 豊田通商グループのネットワークやノウハウといった強みを生かし、海外販売も視野に入れている。

〈ツカモトコーポレーション/取締役上席執行役員 ファッション事業本部長兼ユニフォーム事業部長 西村 隆 氏/ワーキング分野に注力〉

 ツカモトグループは効率経営の推進と経営資源の有効活用による生産性向上のため、連結子会社のうちツカモトユーエスを含む7社を吸収合併、4月1日に新体制でスタートを切った。前期(2019年3月期)のユニフォーム事業は過去最高の売り上げだった。大口案件の獲得、周年記念などが重なった。需要が多いのは飲料関連、運輸、化粧品、JAや信金など。特にワーキングは前年比60%増と躍進した。

 今期は引き続きワーキングに注力する。オフィスが主力だが、ワーキングを元々手掛けておりノウハウや生産力はある。鉄道など、接客・技術の両方の業種に提案できるのは強み。ほか、独自開発の素材やレンタルサービスの提案で採用実績が少しずつ増えている。新中期経営計画に基づき、ユニフォームをコア事業に、選ばれるサプライヤーを目指す。

〈ガードナー/社長 渡辺 英治 氏/実習生の帰国後もサポート〉

 米中貿易摩擦の影響で、防塵衣を着用する半導体メーカーでは、景気への減速感が漂う。このため自社ブランド「アドクリーン」で、塗装や化粧品、食品工場などへの販路拡張を進める。2020年度中には、全商品に占めるユニフォームの割合を8割まで引き上げる。

 生産面にも変化が表れている。ASEAN地域の生地や付帯加工の品質が向上したため、今後はタイやベトナムの生地の採用も検討する。製品の短納期化が求められる中、用途に応じて積極的に採用したい。

 外国人技能実習生の帰国後の就労も支援する。埼玉県加須市の工場で毎年6人ほど採用しているが、ベトナムに帰国した実習生数人と個別契約を結び、現地工場での品質管理や、ラインを立ち上げた時の通訳兼技術者として協力してもらっている。今後も継続して採用し、協業もしたい。

〈アルトコーポレーション/社長 廣瀬 由武 氏/ユーザー飽きさせない企画を〉

 PB「アルファ・フォース」の「コーデュラ」を使用したアイテムがショップで好評を得ている。個人だけでなく、企業や事業所に納入されるケースも出てきているため、19秋冬からはカタログにも掲載し、納入を伸ばしていく。

 19秋冬はコーデュラのレインフォースメント(補強)仕様の防寒ジャケット、防寒ベストを発売する。表地にコーデュラ、中わたに「ダクロン」を使った高機能な防寒ジャケットは自信作。

 当社はワーキングとカジュアルワーキングを展開している。カジュアルではデニムの企画が好調。市場ではスポーツやアウトドアの要素もワークウエア分野に入ってきており、ユーザーを飽きさせない企画が必要だ。いま市場にないもの、ワーカーが着たいものを仕掛けていく。ショップ、代理店から声を集め、ブランドを強化していきたい。

〈明石スクールユニフォームカンパニー/アクティブチャレンジ部 企画担当部長 浅沼 由佳 氏/ルコック販売堅調〉

 明石スクールユニフォームカンパニー(明石SUC)のアクティブチャレンジ部の2019年5月期は、メディカルやケア(介護)で展開する「ルコックスポルティフ」の販売が堅調に伸びたことで、前期比約5%の増収の見通し。

 ルコックブランドを中心にケアが売り上げに貢献した。メディカルもナースウエアで少しずつ物件が取れ、軌道に乗ってきた。19秋冬展では主にナースウエアの新作を発表するなど、力を入れる。

 今期もルコックを中心に販路を広げる。ユーザーとの接点を作り新規開拓につなげるために、新商品の開発も強化する。従来のトリコットに比べて薄く軽量で、防透性を備えた生地「シルキートリコット」など、新素材をベースに商品開発に落とし込むなどの手法で新しい切り口のものを打ち出す計画で、企画力を高める。