特集 全国テキスタイル産地Ⅱ(4)/デジタル化や環境がテーマに/ITMA2019(バルセロナ)

2019年07月31日 (水曜日)

 繊維機械の国際展示会「ITMA2019」(スペイン・バルセロナ)が先月26日に閉幕した。生産性向上や効率化、操作性の向上、高付加価値化など普遍的なテーマに加え、近年の流れである「インダストリー4・0」「サステイナビリティー(持続可能性)」での新技術提案も随所に見られた。

〈ガイドレス積極レピア発表/ピカノール〉

 ピカノール(ベルギー)は織機の開発で「スマート・パフォーマンス」「サステイナビリティ・インサイド」「ドライブ・バイ・データ」「イントゥーイティブ・コントロール」――を原則とする。ITMAではその方向性を示す機種として、エアジェット織機の新機種「オムニプラス i」を披露した。リード機構の再設計、リレーノズルの改良、電子開口装置「スマートシェッド」の搭載などが特徴で、会場ではカーシートやパラシュート地などでの実演を行った。

 レピア織機「オプティマックス―i」では従来の積極レピア方式に加え、新たにガイドレス積極レピア方式を打ち出した。ガイドレス化によりインテリア用などで高い汎用性を誇るという。ガイドレス積極レピア式では椅子張り地(経糸ポリエステル、緯糸ファンシーヤーン×ジャカード、325~515回転)製織を実演。緯入れをほぼ完全にデジタル化したデニム製織(700回転)やコーティング布(消極ガイドレス広幅レピア織機、フリーフライトグリッパーが460㌢まで使用可)などの実演を行った。

〈マスカスタマイズ実現/島精機製作所〉

 島精機製作所は、マスカスタマイゼーションを実現する受注生産の仕組み「MADE2FIT」やバーチャルサンプリング用に糸のデータを提供する「ヤーンバンク」を披露した。

 MADE2FITは「ホールガーメント」(WG)の特徴と新開発の自動プログラミングソフトを活用した提案で、欲しいモノを必要な時に必要な量だけ生産することを可能とする。消費者がスマートフォンアプリで計測した身体データを送れば、それを自動計算し、あらかじめ用意するベースデータの中から適したデータを自動で選び出す。その生産プログラムが工場の機械に自動転送され、生産計画に組み込まれる。WGを活用することで、小ロット生産・QRを可能とする。縫い目がないことから色は製品染めで対応することができる。まずはニットドレスを提案したが、今後はインレイジャケットなどにもアイテムを広げていく。

 ヤーンバンクはバーチャルサンプリング用の糸のデジタルデータをダウンロードできるサイト。糸をスキャンする手間を省き、シミュレーションの精度や商品企画の効率向上に貢献する。

〈片面、両面を自在に加工/日本ボールドウィン〉

 ボールドウィン・テクノロジー・カンパニー(米国)は、非接触式のスプレー塗布装置「テックスコートG4」を展示した。撥水など様々な加工剤を生地の必要な部分だけに均一に塗布でき、加工剤の使用量や排水量の削減にもつながる。

 テックスコートG4は、撥水(はっすい)などの加工剤や柔軟剤を生地に均一に塗布する後加工機。生地の両面もしくは片面だけへの加工が可能で、表と裏で違う加工もできる。電磁弁を開閉することで加工剤の塗布量は求められる機能性に応じて簡単に調整可能。また、ノズルは個々に止めることができ、さまざまな生地幅に対応する。粘度の制限はあるが、さまざまな加工剤が使用できる。装置は既存設備に用意に後付けできる。

 適量だけを生地に塗布するため、環境にも優しい。余剰薬剤は全量再利用でき、通常のディッピングに比べ、ピックアップ率は50%削減、水やエネルギー消費量も50%削減できると言う。

 同社は昨年に創業100周年を迎えた。元々は新聞印刷の輪転機用が主力だが、液体を均一に吹き付けるなどコア技術を生かしてテキスタイルにも進出した。日本では日本ボールドウィンが同機を販売していく。

〈積極カムでさらに高速化/ストーブリ〉

 ストーブリはさらなる高速化を実現したエアジェット織機用の積極カム「S1792」を披露した。カムの新設計などで従来比13~18%の高速化を実現している。鉱物油から合成油、オイルガス式からオイル循環式に変えて高いパフォーマンスと適切な温度管理を実現し、オイル使用量も従来の半分に減らした。

 電子ジャカードではさらなる大口化を実現した「LXXL」を展示した。「LXL」は1万4336口だが、LXXLは2万口、2台連結で4万口を可能とした。制御電装システム改良され、新電装システム「NOEMI」によりエラー検知性能の向上、制御スピード・確実性の向上を実現。今後、LXL型、LX型もNOEMIに変えていく。

 製織準備機では、アクティブコントロール機能の精度を上げたオートドローイング機「サファイア」に加え、タイイング機「タイプロ」が好評を得た。セレクターニードルを廃してスピンドル式を採用したタイプロは、15年のムンバイ、18年の上海でプロト機を披露し、今回のITMAで量産機を発表。ブースの中でも特に注目された機種となった。

〈独自形状のリードが人気/高山リード〉

 高山リードはITMAで新商品「マジックリード」やタイイングでできた結び目が通るリードなど独自商品を披露し、好評を得た。

 マジックリードはスプリングをなくした新構造を採用しており、通常のリードに比べて25%の軽量化を実現した。軽量化で織機への負荷を低減して高速回転に対応するほか、天地の長さを低くすることが可能となり精度も向上する。経糸との接触幅を短くし、経糸切れの減少にも貢献する形状としている。これまで限定的に展開していたが、今後はエアジェット織機用で広く展開していく。今年中の販売開始を目指す。

 会場ではタイイングでの結び目が通るリードも好評を得た。形状を工夫し、上部分だけゆったりした幅を設けており、糸を上に持っていけば太い結び目部分も簡単に通る。これまで引っかかった結び目を無理やりこじ開けて通していた企業も多いが、同商品を採用すれば織機を傷つけずに済み、作業者の負担軽減にもつながると好評を得た。

〈「ディスカバリー」披露/イテマ〉

 イテマは、次世代のコンセプト機としてフライングシャトル織機「ディスカバリー」を発表した。レピア織機とプロジェクタイル織機それぞれの強みを融合し、新しい緯糸挿入方式を採用。複数のレピアヘッドを持ち、それを一方向に飛ばして製織する。エアジェット織機(AJL)のようにメンテナンスが簡単な機械としている。

 レピア織機では「R9500」の改良版「R9500―2」を披露した。従来比10%の省電力化を実現したほか、CPUやメモリーの性能向上で操作性を高めた。エアジェットの新機種「A9500―2」はエアの消費量を大きく削減するなどの改良を行った。

 産業資材用を展開するイテマテック部門では提携した「パンター」ブランドの「ユニラップ」「ヘラクレス」を紹介した。ユニラップは独自の緯糸供給装置を持つ片側レピアで、炭素繊維の扁平糸などよじれやすい糸の製織に適する。ヘラクレスは最大張力5㌧での筬打ちを可能としたレピア織機。生産性を求める際には消極レピア、緯入れが難しい糸の場合は積極レピアへと生産品種に応じて簡単に切り替えることができる。

〈用途に合わせ自動化技術提案/伊藤忠システック〉

 伊藤忠システックはITMAで発表された欧州機械メーカーの最新機を日本市場に提案していく。自動化、作業効率向上への貢献技術がキーワード。

 同社が輸入販売するドルニエのレピア織機「P2」は、フレームのコンパクト化で従来よりも機台が低く奥行きも短くなるなど作業性を考慮した設計とし、タッチパネルの大型化など操作性も向上した。新規提案のノイズリダクション装置は、防音効果に加えて、空気中に浮遊する繊維の回収と局所空調で品質向上にも寄与する。

 合繊工場の自動化では、ザームの合繊ワインダー用オートボビンドッファー「BoDo」を提案する。コンパクトな仕様の完全自走型ロボットで、ボビンの巻取りが完了するとBoDoが自動で取り上げ、所定位置に自動で運び出す。自走コースは工場のレイアウトに合わせて任意に設定可能。小型でスペースを取らず、レール設置などの工事も必要ないなど既存工場にも導入しやすい。高品質でデジタル制御による簡易操作などが特徴の自動ワインダー「ツインスターⅡ」シリーズなどに対応する。

 バンデビーレではカーペット用織機にも、経糸やパイル糸の自動供給機構が搭載された。クリールへの経糸自動供給装置「スマートクリール」によるもので、生産する柄を自動で読み取り、必要な糸量だけを無駄なく自動で供給する。生産品種の切り替え時も自動で対応し、稼働する現行織機にも装着可能。経糸1本ごとにトルクモーターを装備して張力を管理し、部分整経機では制限があった異種・異番手での連続経糸給糸が可能となった「ファストクリール」を装備し、経糸の準備が不要となる省人化、省スペース化の点でも注目される。

 バンデビーレグループのコブル製タフト機「カラ―テックL+」は、針を個別にコントロールして必要な糸のみ入れ込んでいく機能に加え、パイル糸の個別張力制御、レベルカットループ選択機能を追加。幅広いデザイン表現が可能となった。