生地商社/コロナで輸出拡大に暗雲/直近業績はまだら模様

2020年04月14日 (火曜日)

 生地商社は近年、輸出や外・外など海外市場向け生地販売の拡大に力を入れてきた。一部を除いて国内衣料品消費に元気がなく、少子高齢化によって将来の市場縮小が避けられないためだ。背景には、日本の生地に対する高い評価もある。この、「海外から高い評価を得るメード・イン、あるいはメードバイ・ジャパンの生地を海外市場に売り込む」という各社の戦略は一定の進展を見せた。しかし昨年当たりから欧米アパレル市況の悪化が伝えられ始めると一部の生地商社の海外事業は失速。ここに新型コロナウイルスの感染拡大が加わり、全く先が見えない情勢になった。(吉田武史)

 主要生地商社の直近業績を見ると、海外市場向けの商況はまだら模様だ。最大手スタイレムの2020年1月期の同事業は、前期比8%増と堅調だった。韓国、香港向けなどは減少したが、主力の欧米向け、中国向けがけん引役を果たした。瀧定名古屋の同期も、紳士・婦人の服地部門、同製品部門がいずれも減収だったが、輸出部門だけが8・5%増と増収に成功。利益に至っては20%増と大きく伸びた。

 澤村の今上半期(19年10月~20年3月)輸出事業は前年同期比5%増だった。柴屋の20年1月期は直接輸出が前期比横ばい。双日ファッションの20年3月期の輸出事業も、最終四半期の失速が響き、前期比横ばいとなる見込み。コッカの19年10月期の輸出売上高は前期を下回った。宇仁繊維の今上半期(19年9月~20年2月)単体業績は売上高が1%の減少で、そのうち輸出売上高は3%の減少だった。

 一昨年ごろまではほぼ全ての生地商社が海外市場向け売上高を伸ばしていたが、まだら模様になった。

 昨年も海外市場向けを伸ばしたスタイレムや瀧定名古屋を含む全ての生地商社が欧米や中国市況の悪化を指摘する。日本と同様、「(海外でも)衣料品消費が低迷」している。「イケイケドンドンの時期は終わった」との指摘も聞かれるようになった。

 「2月からの失速、急減」を強調する声も目立つ。言わずもがな、新型コロナ感染拡大の影響である。

 イタリアや英国、米国などで次々に国民に対する移動禁止が発令され、多くの人が会社に行けない。複数の生地商社によると海外ブランドのバイヤーから、「今は荷物(生地)を送ってこないでほしい」とのメールが毎日のように届いている。送ってこられても受けられる状況にないからだ。苦労して成約までこぎつけたものの、出荷できない、いつ出荷できるのかも不明。そんな状況が続いている。

 3月の「インターテキスタイル上海」展が無期延期になった影響も大きい。大事な商談の場が失われた。「新型コロナを機に(輸出でも)ネット販売が加速するだろう」との観測も出るが、その体制づくりにも時間がかかる。苦しい局面が続く。