影響の広がりはこれから/今日から春節休暇明け/「分からない」が現状

2020年02月10日 (月曜日)

 今日10日から上海市、広東省、江蘇省、浙江省など中国の主要省・市で操業が開始される。新型肺炎で、春節休暇期間が延長されたためだが、感染拡大は続く。納期は既に1週間以上遅れ、「委託先の工場がどのような状況か把握できていない」のが現状。その確認作業から始まると見られるが、課題も多く、当面は混乱が予想される。

■従業員は戻ってくるか

 当初、3日から通常通りに操業が予定されていたが、感染拡大を受け、1月末から中国各省・市は操業再開時期を延期した。北京市は3日に春節が明けていた。日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、「休暇中に1千万人以上が北京市を出て、2日現在で800万人以上が戻っていなかった」ようだ。国内でも移動の困難さがうかがえる。北京市は感染防止と従業員の安全確保のため、10日まで在宅勤務や時差出勤など柔軟な勤務形態を求めた。10日操業とはいえ、従業員がどれだけ出勤できるのかが課題の一つである。北京市ではグループによる会食も禁じられている。

■操業も認可必要?

 深セン市政府は10日以降に操業を再開する企業は(1)感染の予防・抑制を着実に実施できる(2)従業員に対する検査を徹底的に実施できる(3)感染の予防にかかる物資(マスクや消毒液など)を十分確保できる(4)内部管理が行き届いている――の四つの条件を満たすことが必要と通達した。操業開始の5日前に衛生当局に操業再開にかかる申請書と感染防止管理の承諾書を提出しなければならない。

 こうした通達や報告制度が他の省市でも出ると、10日操業も危ぶまれる。「認可制度となった場合、どのくらいで下りるのか。分からないことが多い」(ユナイテッドアローズ)。同社の中国生産比率は45%。4月中旬まで生産は見通せるというが、今後の生産、輸送情報を注視している。

■SC全体に広がる

 海外生産はサプライチェーン(SC)によって成り立つ。縫製工場が稼働できても、生地や副資材の搬入が可能かどうかも重要である。ジェトロが華東地区の日系企業440社に調査(4日現在)したところ、駐在員などの安全確保で8割以上がマスクや消毒液などの物的支援を検討。事業への影響では6割以上が「操業停止などの影響がある」と回答した。各工程での操業停止の影響が複雑に絡み合うことが、10日以降の現場の混乱につながりそうだ。

 ASEANではベトナムが中国との往来を制限した。ベトナムにとって中国は最大の輸入元で、渡航者も中国人が最も多い。縫製工場でも中国素材を多く調達しており、中国以外でも生産活動に支障が生じる懸念がある。

 中国の港湾物流も不安が残る。港湾が通常通りに動くか、貨物の集中によるコンテナヤードの混乱はないかなどである。オンワードグループのカシヤマ大連工場は9日まで操業停止し、物流網の停止もあって、「カシヤマ ザ・スマートテーラー」の納期が遅延している。航空会社の中国行きの航空便が減便されていることも今後の懸念材料だ。

■生地調達、輸出にも

 3月の「インターテキスタイル上海」が無期延期となった。21春夏の素材選定の場にしていたアパレルは当惑する。日本のテキスタイル企業も、中国市場開拓に期待していたが、「4月以降に会場を確保できても、商売上の実効性がかなり失われる」という見方もある。中国での製品生産だけでなく、生地調達や生地輸出といった面でも影響が広がりそうだ。

 「情勢は刻々と変わる。各省・市の指示情報を集めつつ、今後もそれに追随していくしかない」(YKK)