特集 20春夏オフィス&サービスウエア(2)/経営陣に聞く/2020年展望
2020年01月31日 (金曜日)
〈サーヴォ 社長 宍戸 典之 氏/今秋海外販売始動目指す〉
2020年2月期は、カタログ商品は前年並みだが、直販が苦戦している。特に事務服を中心に3~5月が厳しかった。そのような中、9月にサンペックスイストからの社名変更、12月に埼玉県羽生市に新設した物流センターが一部稼働を始めるなど変革の成果も出た。特に合理化の一環として進めてきた物流センターは今年1月から本格稼働しており、コスト面での貢献も期待される。
20年は海外生産の短納期体制を構築したい。ファッションでできることがユニフォームでできないことはないと考えている。海外販売では、ベトナム企業と準備を進めており、今秋には成約案件を出したい。ベトナム人の体形を年代別に測定しデータ化しているほか、アイテム別の素材決めを行っている。21年度からの新3カ年計画では売上高100億円を目指す。
〈住商モンブラン 社長 石川 士郎 氏/サステ、首都圏、医療が鍵〉
今上半期(2019年6~11月)の売上高は、大型別注案件の確定延期が響き、前年同期比3・2%減だった。一方、カタログ定番品や、各ブランド品は好調だった。商品力、営業力、即納率の高さなどが評価されているのだと思う。
通期での増収に向けて別注案件を全力で獲得しにいくとともに、引き続き定番品拡販に努める。
今後は社内基幹システムの刷新・強化を図るほか、サステイナビリティー(持続可能性)を強く意識した商品開発と企業アピールを行う。天然由来成分で染色する「オニベジ」を採用したユニフォームが好評を博すなど既にその効果は出ている。
販路戦略としては医療・介護に、地域では首都圏に開拓余地がある。資源投入やブランドイメージの向上に取り組み、開拓にまい進したい。
〈ボンマックス 社長 外川 雄一 氏/「ポリジン」全ジャンルに〉
2020年1月期は、オフィスウエアが前年に届かず、サービスウエアは前年並みの見通し。オフィスは秋冬新作がヒットし引き合いも増えているため、次期につながる手応えはある。サービスは、上半期フラットだったが、下半期になってペースが上がってきた。
20年は、“汗をニオイにしない”をテーマに抗菌防臭加工「ポリジン」を全ジャンルに波及させる。オフィスではオーバーブラウス、アウター裏地、飲食サービスではブロードシャツ、ニットシャツなどに採用、さらに作業服、イベント物販向けドライTシャツにも広げていく。また汗染みが目立ちにくい帝人フロンティアの素材「デュアルファイン」使用のニットトップスも。SDGs(持続可能な開発目標)の一環として、コーヒー豆の搾りかすを使った再生素材カフェエプロンを始める。
〈アイトス 社長 伊藤 崇行 氏/総合力で提案の幅広げる〉
2019年12月期、売上高は前年超えの205億円となった。9月までは全体的に順調に推移し、特に電動ファン(EF)付きウエアや、ワークウエアのカジュアル化が進む中、「タルテックス」などが順調だった。
今年はレディースユニフォームの総合カタログを発行する。事務服だけに限らず作業着、防寒着までも扱う総合メーカーとして打ち出すことが狙い。例えば、現在スモックを制服としている企業にオーバーブラウスを提案してみたり、または新しいタイプのスモックを提案してみたりと、女性向けユニフォーム商品全般に対応できることをアピールすることで、提案時の幅を広げるとともに他社との差別化につなげる。
今年の社内キーワードは“気合”。仕事はやる気でやることが大事と説く。
〈カーシーカシマ 常務 増田 庸佑 氏/プラットホームの確立〉
2020年7月期の上半期(19年8月~20年1月)は、大口別注があり前年同期比10%増の見込み。オフィスウエア「エンジョイ」は病院事務などからの引き合いで比較的好調。接客サービス「エンジョイ・ノワール」では別注案件につながるケースが出ている。デザイナーも増やしたため、今後は介護向け「ハートグリーン」やソフトワークウエア「キャリーン」にも注力していく。
20春夏は「夏」をキーワードにした商品として、強度と通気性に優れたからみ織りを取り入れたベスト、スカートを始める。また医療クラーク向けシリーズも展開。
現行カタログをウェブ媒体に少しずつ転換させている。2月をめどに、着せ替えや色替えができる体験型ウェブツールを導入。並行して社内の納期管理や受発注をフォローするシステムを強化する。
〈セロリー 社長 太宰 幹夫 氏/総合力でブランド認知へ〉
2019年11月期は売上高が前期比8・5%増の51億円となり、目標だった売上高50億円を上回った。主力のオフィスウエアはニット商品、消臭抗菌の空気触媒加工「ティオティオ」を施した商品とも引き続き販売が堅調だった。別注はサービスウエアを中心に大口から受注があり大幅に増収。レンタルもユーザーに対して利便性を高めたことが販売増につながった。
今期(20年11月期)は大きな数字を望むと、在庫増になる可能性がある。6~8月は東京五輪・パラリンピックの影響で物流が止まる可能性もあり、売上高の計画は前期並みにとどめている。小さい積み重ねをきっちりやっていきたい。
新たに環境活動「Re,ユニフォームプロジェクト」を始動させた。商品力、営業力だけでなく総合力で「オフィス=セロリー」としてブランドの認知を高める。
〈フォーク 社長 小谷野 淳 氏/新たなスクラブ投入〉
2020年1月期の売り上げは微増収の見通し。昨年3~5月の繁忙期にベトナム工場の移転が重なり生産に影響が出たことが足かせになった。分野別では、メディカルウエアは堅調に推移し、オフィスウエアは市場環境が良くないこともあり苦戦した。
20年はメディカルウエアの「スクラブ」をメインに医療関係への働きかけに重点を置いていく。新たに、工業洗濯時の色落ち対策として、ポプリン生地を採用した色落ちしないスクラブを2月に投入する。リネンサプライヤーが扱う際の心理的ハードルを下げて浸透を加速させる。当初は5色展開し、その後拡大を図っていく。
オフィスウエアは着用ニーズが変化する中、レンタルサービスについて、認知度を上げるなどして、1年かけてポジショニングを見ていく方針。
〈チクマ アルファピア 事業部長 岩崎 敦史 氏/「マリークヮント」好調〉
2019年はいろいろな意味で転換期という印象の年だった。SDGs(持続可能な開発目標)やAI(人工知能)など、ユニフォームを取り巻く環境も変わりつつある中、これまでの経験と実績だけでは難しくなってきている。
19年11月期のアルファピア事業部は、接客・おもてなし系カタログ「ユー・ファクトリー」がほぼ横ばいだが、その中でも新商品として投入した英国発のファッションブランド「マリークヮント」とのコラボ商品が販売計画を達成し貢献した。女性事務服系カタログ「アルファピア」は市場自体の縮小もあり苦戦。売り上げ規模が大きいため、リピート需要が旺盛な業種に対して企画を立てるなどの対策をとる。東京五輪・パラリンピック需要は間接的には出ている。今年は市場の変化に合わせて商品をリニューアルしていく。
〈ハネクトーン早川 社長 早川 智久 氏/「カウンタービズ」で相乗効果〉
2020年4月期売り上げは、情勢は厳しいが前年越えを目指す。全体では一部前倒し案件や9月の駆け込み需要、既存代理店案件の伸びが寄与しているが、11月にネット通販が鈍化した。引き合いは増えている。
主力ブランドの「カウンタービズ」は、化粧品販売やカーディーラー、病院受付でのニーズが引き続き多く、今期はJA案件も増えている。冬物ではケープ風コートを提案した。
2020年の見通しは、引き合いは強いので新作も含めて期待感は持っている。おもてなしウエアは差別化を図るためジャケット、スカート、ワンピースなどで新作を投入する。カウンタービズもユニフォーム本体にスカーフと「Pリング」をセット販売できるような相乗効果も出てきている。
〈ツカモトコーポレーション取締役 上席執行役員 西村 隆 氏/ワーキングウエア強化〉
2020年3月期は売上高60億円の着地見込み。前年に過去最高売上高63億円を達成したため、その反動が出ている。売上高構成の6割を占めるオフィスウエアは大口案件がなく低調だった。ワークウエアとサービスウエアは伸長したが落ち込み分をカバーしきれていない。
21年3月期は今期並みを維持する方針。2年目を迎える中期経営計画に沿ってワークウエアを伸ばすとともに、中小案件の受注増を目指す。業種別では、鉄道、運輸、化粧品、警備会社など引き合いが強い分野から裾野を広げていく。環境に配慮した独自素材の開発とパターンの更新にも取り組む。大阪・関西万博に向けて、飲食や運輸業などで間接的な需要を見極めていく。
〈ジョア 社長 神馬 敏和 氏/採用企業の成長につながる商品開発を〉
2019年12月期は、夏物のオーバーブラウスが好調だった一方で、秋冬物はワンピースなど部分的に好調なアイテムはあるものの、暖冬などの影響で動きが低調だった。売上高は18年12月期の13億100万円に比べて微増収での着地になりそうだ。
新商品、サービスレベルの向上を図るため、ユニフォーム業界以外の人材採用を活発にし、イノベーションできる体制の構築を進めている。
接客向けの「華やぎコンシェルジュ」や医療関連施設向けの「ハートフルコンシェルジュ」では、各ブランドのターゲット内での多様化の視点で考慮し、ウエア以外の小物などを含めた新たなアイテム開発に力を入れる。当社の商品を採用した企業の成長につながるような、魅力的な商品を作っていきたい。
〈神馬本店 社長 神馬 真一郎 氏/接客向けを「シャンナーレ」で〉
本年度上半期(2019年7~12月)の売上高は前年同期並みで推移しそうだ。今春は大型物件など、先の受注を押さえたことで大きな落ち込みはないものの、プラスアルファをどう作っていくかが下半期に向けて重要となる。
これまで事務服は「セレクトステージ」を軸に美しいシルエットが魅力の「美形(ミカタ)」シリーズを展開してきたが、近年は事務服以上に接客向けでの制服採用が増えてきた。そこで以前販売していたブランド「シャンナーレ」を接客向けにリブランドして20春夏では全面的に打ち出す。
SDGs(持続可能な開発目標)に向けた取り組みも考え、障害者のアートビジネスモデル「パラリンアート」を支援する障害者自立推進機構に協賛する。展示会などで発信し認知を高めることで、障害者の自立に貢献していきたい。
〈ガードナー 社長 渡辺 英治 氏/提案型ビジネスモデル構築〉
2019年12月期の売上高は前年並み。スタートは厳しかったが、4月以降計画通りの着地を目指せるまでに回復した。ただ、秋以降に米中貿易摩擦による影響が半導体市場に出始め情勢の先行きには不透明感が漂っている。
3カ年の中期経営計画の最終年度に当たるとともに創業35周年の節目の年になる今年のテーマは、提案型ビジネスモデルの構築。特に「環境」をキーワードに社員教育を進めていく。
最大市場の半導体向けをはじめ、AI(人工知能)を含めた自動車産業、医薬品工場、ロボット産業向けへのウエア供給などで裾野を広げていくとともに、ICタグクリーニング管理システム「アドクリーンICタグ」など高付加価値商品も積極提案していく方針。
〈チトセ 社長 阿部 陽一 氏/メディカルウエアを強化
2019年12月期は3~4%の増収。中でも好調なメディカルウエアの「ミズノ」は2桁%増となり、エステ・スパ向けから病院寄り商材を増やす「ミッシェルクラン パリ」とともに好調。来年にかけても多くの案件を抱えており、別寸などの細かい要望にも対応できるよう国内で新たな縫製協力工場を増やしている。代理店・販売店のサポート体制も厚くしていきたい。
今年は温暖化による暑さ対策の商品として、脇と背中に空気の流れを作る異素材を使ったメディカルウエアや、飲食店向けカタログ「アルベ」でも暑さ対策商材を増やす。「在庫」と「物流」は今期の重要テーマになり、特に物流施設は増設が急務となっている。飲食店向けユニフォームとメディカルの売り上げ構成を現在の3対1から数年内に3対2にしていく。
〈アルトコーポレーション 社長 ●瀬 由武 氏/生産拠点集約進める〉
2019年は夏期商戦でワークウエアが健闘しており、通期でも増収増益を見込む。
20年は五輪需要が落ち着いた後の買い控えが出てくるかもしれないが、急激に落ちることはないと見ている。ベトナム、ミャンマーがメインの生産拠点だが、中国など製造コストが高騰している拠点の集約を進める。
注力しているワークウエアでは、春夏に向け戦略商品を投入していく。電動ファン(EF)付きウエアではコストダウンしたフードなしベストタイプを新規に投入する。このほか、消臭剤「ファブリーズ」とコラボレーションした長袖シャツを「アルファ・フォース」シリーズから発売する。ワークとサービスに共通する新商品として、ストレッチ性、通気性に優れたニットシャツも計画。
(●はまだれに黄)
〈ボストン商会 社長 米澤 博 氏/外食産業向けに新商品〉
2020年2月期は、活況を呈するホテル業界からの受注が追い風になり微増収微増益の着地を見込んでいる。リブランドからリニューアルまで幅広い事業での依頼を受けることができた。
一方で、定番備蓄品は底上げを図り、市場のニーズに合わせてサイズラインアップを増やすとともに、約40型をリニューアルした。
20年は好調なホテル業界の伸びに合わせて案件を増やしていき、企画提案をしっかり行い、生産体制が整っていることをアピールしていく。併せて外食産業への商品展開を充実させてシェア拡大を成長戦略とする。
外食産業向けは「ボンジョイフル」ブランドとして新商品を投入していく。低価格シャツをはじめ、コーディネート用のエプロンなどをそろえた。和装ブランド「和風」は環境配慮型の天然繊維を提案。
〈明石スクールユニフォームカンパニー アクティブチャレンジ部企画担当部長 浅沼 由佳 氏/大型物件の獲得に励む〉
本年度上半期(2019年6~11月)は、ワーキングの防寒着が暖冬の影響を受けて低調に推移した。メディカルは横ばいで推移したものの、この数年、前年比2桁%の伸びが目立っていたことから若干の減速。ただ、ケアを含めて部門全体では堅調さを維持しており、前年同期比増収となった。メディカル・ケア向け「ルコックスポルティフ」で「国際福祉機器展HCR」などへの継続出展が実を結んだ。
メディカル、ケアとも3月までに想定している大型物件があり、営業活動を強化していく。病院では、若い世代が備品購買のメンバーに入るケースが増えてきた。そのため、関東ではスクラブタイプの白衣の需要が増加するなど傾向も変化している。取引先の動向もしっかりと把握しながら増収を確保したい。
〈トンボ 執行役員 営業統括本部ヘルスケア本部長 永瀬 公雄 氏/スポーティー路線に注力〉
本年度上半期(2019年7~12月)は、ヘルスケア事業の売上高で前年同期比4%の増収を見込んでいる。スポーツブランド「ヨネックス」の介護・看護向け「メディケアシリーズ」が引き続き貢献していて、患者衣や検診着の販売が堅調だ。介護の大型案件も競合が厳しいものの、安定して収益を確保している。
一方、消費増税など環境の変化で昨年10、11月は苦戦した。商況の良かった7~9月に大きく販売実績を積み上げたが、その後、大きな影響を受けた。マイナス要因は増税だけとも思えない。確保したい案件の獲得が難しかった。
下期は、スポーティーなアイテムなどで今まで以上にニーズを捉える。前年度は通期の売上高で初めて20億円を突破したが、さらに積み増して21億を確保したい。