スパンデックス特集/各社紹介

2001年11月28日 (水曜日)

東レ・デュポン/ブランド価値確立へ

 年産能力8000トンで国内最大手の東レ・デュポンは、日本国内での「ライクラ」(乾式)のブランドイメージ確立に全力を挙げる。

 同社は99年6月から、それまでの「オペロン」をデュポンの世界ブランド「ライクラ」に統一した。デュポンのグローバル戦略に呼応して、今年1月から「ライクラ・アシュワード」と呼ぶ生産販売システムをスタートさせ、カバリング、ニッター、機屋など11社をパートナーに認定。高品質の製品供給に全力を注ぐ一方、ブランド認知度を高めるための消費者向けキャンペーンを行ってきた。

 3年で10億円を予定したキャンペーンは、前倒しで拡大しており、来年3月からは首都圏を中心にテレビコマーシャルも放映する。

 現状はフル生産が続いている。デュポンの他工場が生産していない品種を“応援生産”する以外は、全量国内向けで、アウター用途が伸びているという。

 1万トンに拡大する構想を持っているが、時期は未定。

旭化成/事業規模拡大続く/年内に台湾合弁倍増設完成

 旭化成は「ロイカ」(乾式)の事業規模を内外でさらに拡大する。台湾合弁、台塑旭弾性繊維(FAS)は、年内に倍増設が完成し、年産能力5000トンになる。現状は全量44T汎用糸で、増設後も糸種は必要最小限に抑える方向。大規模な原料プラントを併設しており、コスト競争力での優位性を生かす。

 機能糸や細T糸などを生産する国内も小刻みな能力増強で今年度内に7000トンに増やす。とりわけ、ソフトパワーの「ロイカHS」、吸放湿の同BZ、高セット性の同BXなどサブブランドを付けた機能糸の開発を重視しており、乾式紡糸法では初めての練り込み型消臭機能糸「ロイカCF」も投入した。

 第2、第3の海外拠点確立も視野に入れながら、当面は日台2工場の住み分けで、世界市場を攻める。中国浙江省の編み立て・染色拠点、杭州旭化成紡織も、ファンデーション用など地場需要増加をにらみ2、3年をかけ現状の年産450万メートルを倍増設する方向である。

東洋紡/品質アップに注力/トータルコストダウン追求

 東洋紡の「エスパ」は、乾式が年産5500トン、溶融紡糸の「エスパM」が同300トンで合計5800トンの能力を持つ。前下期は国際的な相場下落の影響を受け苦戦を強いられたが、今上期からは在庫調整も進展し、回復傾向にある。(1)徹底したコストダウン(2)品質向上――に全力を挙げながら、来下期には“完全復活”を果たす予定だ。

 コストダウンは製造現場にとどまらず、すべての段階で取り組み。そのうえで、生産効率のアップが最大のコスト下げとなるという立場から、品質向上による拡販を進める。

 韓国製44Tレギュラー糸との競合を回避するためのカギは差別化糸。乾式では染色加工性からポリエステルとの複合に適した「T―765」に重点を置く。用途では難度の高い経編みの拡大を目指す。

 輸出比率は約65%。かつては7割が台湾向けだったが、中国大陸、香港、米国などへ広がり、一市場への偏重が是正されつつある。

日清紡/溶融紡糸の特長生かす/ユーザーとの取り組み推進

 日清紡の「モビロン」は年産3000トンの能力があるが、世界で主流の乾式は750トンで、溶融紡糸が年産2250トンを占める。この条件を踏まえ、セット性が良くソフトパワーという溶融タイプの特徴を生かした用途で、新規需要拡大を図る。

 現状の販売内訳は数量ベースで、溶融が国内55%・輸出45%、乾式がそれぞれ70%・輸出30%。いずれも輸出が増加傾向にあるという。

 溶融はパンティストッキングなどレッグ関係用途が70~75%を占めるが、インナー用丸編み、アウター用織物など他用途への広がりが進みつつある。これを本格化させるため、アパレルなどユーザーとの新しい取り組みを検討している。

 スパンデックスメーカーには市況底入れとみる向きが多いが、同社は「(テロ事件の影響で)米国需要の減少が懸念され、まったく楽観できない」と厳しい見方をしている。それだけに「どんな局面になっても柔軟に対応できる方針と体制」が必要であり、「原点に立ち返って戦略の再構築を図る」との立場をとる。

富士紡/機能原糸開発進める/テキスタイルで多様な加工

 乾式紡糸「フジボウスパンデックス」年産1500トンと溶融紡糸「ソフラ」1000トンとを合わせ2500トンの能力を持つ富士紡は、(1)原糸への機能性付与(2)テキスタイル化――の2方面から差別化戦略を展開する。

 機能原糸は、吸放湿「スパンフレッシュ」、抗菌防臭「エラフレスカ」、遠赤外線放射「インセラレッド」などがあり、さらに商品開発を進める。

 テキスタイル化は7割まで進んでいる。原糸段階では技術的に制約のある機能性付与も、後加工では範囲が広がる。スキンケア加工「ケアトリナチュレ」やキシリトール加工「キシリフレッシュ」はその典型だ。

 輸出拡大のため今年3月には香港で展示会を開いた。昨年9月に香港事務所が開設され、ユーザーへのフォロー体制が確立したため、今後需要増加が予想される中国大陸への“南玄関”と位置付ける。

 国内では今後、シルバーや健康快適を切り口にした商品提案を強化していく。

カネボウ合繊/乾式汎用糸と差別化/上海華鐘Gへ供給増やす

 カネボウ合繊の「ルーベル」は年産能力800トンと国内最小規模だが、乾式より競合相手が少ない溶融紡糸の特徴を生かして、安定収益の確保を目指している。今上期の輸出比率は約40%で、国内パンスト需要の減少を反映し、5ポイント前後上昇した。

 輸出の最大仕向地は中国だが、カバリングとストッキング製造がある上海華鐘グループへの供給はまだ多くない。今後、華鐘のストッキング事業拡大に合わせて、安定需要が望めるキャプティブユースを意識的に増やす方向。

 商品的には熱セット性に優れたFタイプや22T以下の細T糸などのウエートを高め、乾式汎用糸との差別化、住み分けを図る。

 またポリウレタンとナイロンとのコンジュゲート糸「シデリア」は今年4月、月産25トンから30トンへ増強した。カバード糸にない透明性や適度なフィット性が評価され、欧州からの高級パンスト用途に引き合いが多い。