中国の日系商社/独自素材ブランドの内販加速/大手ローカルの関心高まる

2020年01月27日 (月曜日)

 中国の日系商社が、大手ローカルブランドに向けた独自素材ブランドの提案を強化している。背景には、大手ブランドが日本の素材への関心を高めていることがある。こうしたブランドはスポーツなどの勝ち組。伸び代はまだありそうだ。(岩下祐一)

 三井物産アイ・ファッションの現地法人、三井繊維物資貿易〈中国〉が内販する日本製高機能透湿防水生地「パーテックス」が、ローカルスポーツブランドから引き合いを受けている。「(ローカルブランドが)素材ブランドを利用し、自分たちの価値を高めようとしている」と福島啓之輔総経理は見る。そのため、今年はパーテックスに加え、フランス発の高級フェイクファー「ティサベル」など、グループの独自素材ブランドの内販に重点を置く。

 GSIクレオスの現地法人、科立思管理〈上海〉は今年、日本製原料を使ったアウター用合繊生地の内販を本格化する。昨年はアウター用生地の地元コンバーターへの販売が伸びた。日本独自の差別化されたわたを輸入し、現地の協力工場で紡績、織り・編み立て、染色を行う独自素材で、「光沢感やドレープ性が顧客から評価されている」(井塚正行董事長)と言う。

 豊島国際〈上海〉も、布帛調高伸縮丸編み素材「ワンダーシェイプ」をはじめとする独自素材ブランドの拡販に力を入れている。今年3月に開かれる「インターテキスタイル上海アパレルファブリックス」では、ジャパンパビリオンの中で最大規模のブースを構え、独自素材を訴求する。

 ローカルブランドはこれまで、高級レディースを中心に日系企業の素材を採用してきた。採用される素材は生地商の備蓄品のほか、旭化成の「ベンベルグ」と三菱ケミカルのトリアセテート使いが目立っていた。

 ところが昨年から、ボリュームゾーンの大手ブランドが日系企業の素材への関心を高め、これまで内販では無名だった素材も採用されるようになっている。

 日本の素材を採用する代表格は、「安踏(アンタ)」と「フィラ」「デサント」を展開するローカルスポーツ最大手のアンタ・グループや、スポーツ3強の一角を占める「特歩(エクステップ)」、ダウン最大手の「波司登(ボストン)」など。いずれも市況悪化の中で業績を伸ばす、数少ない勝ち組だ。各ブランドの狙いは、付加価値の高い素材で差別化し、消費者にアピールすることにある。ボストンは、製品やタグなどで採用する素材を積極的にアピールしている。

 地元企業とデサントなどの合弁会社、寧波楽●克服飾は、「ルコック」で20秋企画から東レや帝人フロンティア、モリリンなどの日系メーカーの機能素材を積極採用していく。中古衣料や工場で発生したわたを原料にする伊藤忠商事のサステイナブル(持続可能な)素材「レニュー」を採用したアイテムも打ち出す。

 日本の素材の市場開拓余地はまだある。ボリュームゾーンのメンズカジュアル「GXG」を運営する慕尚グループは、日系生地商の中国品を既に採用しているが、付加価値の高い日本の素材ブランドはまだ使っていない。「中国で知名度がある寝具の『西川』(の素材)とコラボしたダウンウエアに興味がある」と呉磊副総裁は話す。

 昨年からの“国潮(国際ブランド)”ブームを受け、勢いに乗るスポーツ大手の李寧(リーニン)への拡販も今後期待できそうだ。

(●はト部に下)