2019年秋季総合特集Ⅴ(10)/トップインタビュー 伊藤忠システック/世界を知る、日本を見せる/取締役営業第一本部長 池端 真滋 氏/ニーズに合わせ提案機種拡大

2019年11月01日 (金曜日)

 「日本の繊維産業の強みは、機能性・信頼性・耐久性などに基づいたクオリティー」――伊藤忠システックの池端真滋取締役は指摘する。その強みを発揮するために何が必要か。現在は国際分業の時代。「日本の産地企業が世界を知ること、そして世界に日本を見せることが重要。商社としてそのお手伝いをしたい」と話す。ユーザーのニーズに応えながら提案機種の拡充に取り組む。

  ――日本の繊維産業の強みとは。

 やはり技術力でしょう。ただ、技術力とは何かを突き詰めなければなりません。よく“QCD(クオリティー・コスト・デリバリー)”と言いますが、この“Q”が強いと言い換えることができます。ではクオリティーとは何か。それは機能性であり、信頼性であり、耐久性です。これが日本の強み。このため現在でも素材分野は高い競争力を維持しています。この強みを発揮するためには、メード・イン・ジャパンを意識した商品展開が必要かも知れません。

 一方で現在はボーダーレス化が進み、国際協業の時代です。その中で強みを発揮し、同時に弱みを認識することが必要になります。その点で当社のような商社に求められる役割もあるでしょう。例えば今年、スペインで国際繊維見本市「ITMA」が開催され、日本からユーザー企業による視察ツアーを組織しました。その際に展示会だけでなくポルトガルのタオル産地を見学しました。海外の産地を見て日本の産地企業も新たな発見があったと思います。そうやって日本の産地企業が世界を知ることが大切です。逆にパキスタンやインドのユーザーを日本に招き、産地企業を見学させてもらうケースもあります。すると彼らもいろいろ驚きます。そうやって日本を世界に見せることが必要でしょう。

 ただ問題は、日本の強みを維持してきた分業体制が人手不足、高齢化、後継者難によって崩れつつあることです。このため産地でも力のあるメーカーは各工程の内製化を進めています。しかし、それができない企業はどうするか。せっかくの強みを喪失する危険性があります。それを回避するためにも自動化や検査関係の機器の重要性が高まりました。それを提案するのが当社の大切な役割となります。

  ――2019年度上半期(4~9月)も終わりました。

 上半期は前年度からの受注残もあってほぼ計画通りに推移しました。通期では環境が厳しくなっています。織機や紡機の輸出はインドの景況が悪化し、パキスタンも伸びが鈍化するなどで状況が悪化してきました。米中貿易摩擦もボディーブローとなって効いています。先行き不透明感から中国の繊維企業が設備投資に慎重になっています。輸入機械の国内販売は前年並みで推移しています。超低浴比液流染色機など新しい機種の引き合いが増えてきました。

  ――今後の戦略は。

 一つは産業資材用の機械の販売をどれだけ伸ばせるかです。そのためにも提案する機械の種類を増やす必要があります。産資用だけでなく環境関連機器や検査・測定機器、センサー、システムも拡充します。やはり商社としてユーザーから“頼りにされる存在”であり続けなければなりません。そのためにはユーザーのニーズを正確につかんだ提案が欠かせません。当社は今年、前身の伊藤忠繊維機器販売から数えて創立50周年を迎えます。やはり変化に適応したものが生き残ります。祖業である繊維機械販売を次世代に継承していくためにも、今後も社会のニーズの変化に対応していくことを目指します。

〈私のリフレッシュ法/気の向くまま歩くと新たな発見〉

 ギターや読書など多趣味な池端さんだが、最近熱中しているのが“散歩”。近所を少し歩く程度ではない。土日を使って3~4時間はたっぷり歩く。「特に目的地は決めず気の向くままに『今日は東に進んでみよう』『今回は西に歩いてみよう』といった感じ」。電車で石切駅(大阪府東大阪市)まで行き、そこから徒歩で生駒山頂を超えて奈良県まで入ったりする。「道中、知らなかった史跡や遺構があったりして、新たな発見があるのが楽しい」とか。「おかげで半年で10㌔痩せました」と体もリフレッシュ。

〔略歴〕

いけばた・しんじ 1986年伊藤忠商事入社。北京駐在、上海駐在などを経て2011年伊藤忠システック出向、16年から取締役。