進化し、深化する糸 北陸ヤーンフェア19レビュー(4)/環境をベースに差別化

2019年11月01日 (金曜日)

 合繊メーカーはサステイナビリティー(持続可能性)に加え、機能性の面でも独自糸を紹介した。

 東洋紡STCは特に改質綿のシリーズに焦点を当て、綿のセルロース分子を改質してpHコントロールや消臭などの機能を付与した「デオドランC」、超消臭素材「@デオ」などを提案した。併せて、経編み向けのサイジングビームサプライシステム「サイプス」を訴求した。足元は順調に拡大中で、現在はインナー用途が多いが、今後は他用途も増やす。

 アクリルでは極細アクリル「極衣」、アクリレート系繊維「エクス」、除菌繊維「銀世界」などを見せた。

 三菱ケミカルはポリプロピレン(PP)、トリアセテート、ポリエステルを紹介した。トリアセテート繊維「ソアロン」は森林認証(FSC)を取得するなど環境配慮型素材である点も訴求した。

 PPはアウトドアなどで人気が高まる防虫機能糸「グリーンネオ」や中空糸「ライブエア」などの機能糸を紹介。PPに限らず特徴的な素材を展開していく方向の中、ポリエチレンの冷感素材「ヒヤッコイ」やBCFナイロンなどにも商品展開が広がっている。

 ポリエステルではサステイナブル素材として常圧可染タイプ「AHY」、再生PET「エコルナ」、通気コントロール素材「ベントクール」などを展示した。

 KBセーレンは子会社に加わったKBセーレン・DTYの概要を紹介した。2018年12月に川崎産業を買収し、今年4月に社名変更した形で、グループ内に仮撚り・合繊サイジングが可能となった新体制を披露した。

 KBセーレンの商品では、特殊素材を中心に打ち出した。液晶ポリエステル「ゼクシオン」は振動減衰性や高弾性率を生かしてテニスやバドミントンのラケット、ゴルフクラブ、電子部品などで採用が進む。芯鞘型熱融着ポリエステル長繊維「ベルカップル」はティーバッグ用が伸び、水処理用フィルターの芯材などでも使われ出している。

 東レインターナショナルはエコ、リサイクルの観点から、ポリエステルの短繊維と長繊維の複合加工をテーマに出品した。東レグループの原綿・原糸を中心にそれ以外の素材を含め、中国、ベトナム、インドネシア、タイなど海外で紡績・加工した糸を展開する。

 純綿糸では特殊紡績で毛抜けを軽減する甘撚り糸を紹介。タオルのパイルや枕カバーなどに販売しているが、丸編みなどにも用途を広げていく。