「インターテキスタイル上海19秋展」レビュー(3)/中国市場への取り組み深耕
2019年10月07日 (月曜日)
中国の市況は急激に悪化しているとはいえ、市場規模や成長を考えると引き続き重要な市場であることは変わりない。今回展では中国でのブランディングや機能性の打ち出しなど各社の方向性が示された。
東レグループの東麗国際貿易〈中国〉(TICH)は、中国でのコンバーティングを強化してきた中で、中国開発素材をまとめた「エボトゥルース」ブランドを披露した。東レが日本から海外に展開する素材に「センビズム」ブランドを使うように、TICHのマザーブランドとして今秋冬からエボトゥルースを使用していく。
エボトゥルースでは、東レグループの差別化素材を使い、原綿・原糸からテキスタイルまで一貫で開発した素材をそろえる。今回はエコ・サステイナビリティー(持続可能性)、ウール調、高密度織物などのテーマで開発した各シリーズを披露した。将来の縫製品展開をにらんで製品でも紹介した。
東洋紡STCはこれまでインナーを中心に出展していたが、今回はスポーツも加えた。秋冬はアクリル、春夏は綿、ポリエステル、レーヨンを中心に機能素材を提案した。
機能素材への注目は高く、遮熱や消臭のほか、ニットドレスシャツ「Zシャツ」なども人気だった。ただ、中国では日本とは異なるニーズもあり、例えば日本ではシャリ感が好まれる吸水速乾素材でも中国は柔らかい風合いへの要望が多いなどで、会場で得た声を今後の素材開発に生かす。
中国での拡販は「機能性を武器にトップゾーンを攻めていく」(西山重雄社長)と言う。今後、取り組みを加速するため、紡績などでアライアンス先を増やす取り組みを強化している。
三菱ケミカルのトリアセテート素材「ソアロン」は秋展へは初出展。3月に約10年ぶりに再出展したが、好評だったことから連続出展を決めた。
展示会ではソアロンならではの魅力を改めて訴求し、光沢感や仕立て映えなどファッション素材としての魅力と合わせ、サステイナビリティーや機能性での特徴も伝えた。
ブースはアパレルのみに入場制限したが、絶えず顧客が訪れた。中国市況が厳しい中、高級ゾーンだけでなく、買いやすい価格帯で展開するブランドも差別化のためにトリアセテートを選ぶケースが増えている。今回の提案素材の中では、小松マテーレの「ダイヤモンドSY」加工を施して、ビンテージ感や皮のような表情を持たせた素材やトリアセテート100%などが好評を得た。
ソアロンの販売は全体の65%を貿易が占めるが、近年は中国を中心とするアジアが特に伸びている。中国はさらに伸ばす考えで、サステイナビリティーでの訴求に加え、納期対応を一段と強化する。レディースでの新しいブランドへの提案に加え、メンズやユニフォーム、スポーツなども伸ばしていく。