三菱ケミカル/「CASE」で炭素繊維複合材料拡大/循環型経済にも対応

2019年10月03日 (木曜日)

 三菱ケミカルは、自動車産業の新たな鍵である「CASE」を原動力の一つに、炭素繊維複合材料の販売を拡大する。自動運転やシェアリングの進展によって大手IT企業やベンチャー企業などプレイヤーが増え、事業成長の好機と見る。グループとの連携でリサイクルの体制を整えるなど、循環型経済にも応える。

 CASEは、コネクテッド(C)、自動運転(A)、シェアリング(S)、電動化(E)の頭文字から成る。無人運転サービスをはじめとする新ビジネスモデルの検討や参入が既に始まっていると言われ、自動車の設計や必要とされる材料も大きく変わる可能性があると指摘されている。

 次世代の自動車ビジネスにはGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)に代表されるIT企業やベンチャー企業が関心を示し、自動車向け炭素繊維複合材料を扱う三菱ケミカルにもアプローチがあると言う。同社も積極的に取り組みを進めている段階にある。

 顧客の要求はさまざまだが、共通するのはサーキュラーエコノミー(循環型経済)への対応。グループの新菱(福岡県北九州市)が炭素繊維リサイクルの技術のプラットフォームを確立しており、連携を取りながら、回収を含めたビジネスの仕組みを作る。欧州にも早い段階でリサイクルの拠点を構築したいと言う。

 自動車産業での炭素繊維複合材料の需要は拡大基調にあり、高級車を中心に採用が増えてきた。多様な材料を持ち、加工度を上げた提案を行っている同社の販売も欧州向けを中心にかなりのスピードで伸長し、2020年3月期は予定通り順調に推移するとみている。

 炭素繊維複合材料本部コンポジット製品事業部は「22年度には現在の売上高に数百億円の上乗せ」を目指すが、この数百億円にはIT企業などとのビジネスは含んでいない。「3Dプリントの技術も登場するなど、自動車業界は大変革期にある。顧客の要望に応えて成長を図る」と話す。