特集 シルバー・介護ウエア(2)/“強み”生かし市場へ切り込む
2019年09月26日 (木曜日)
2025年には「団塊の世代」全員が75歳以上になる日本。医療や介護の需要が急増する中で、その従事者を支えるユニフォームの役割は大きくなる。メーカー各社は独自の強みを商品開発に生かしながら、新たな市場へ切り込む機会をうかがう。現在開催中で、27日まで東京ビッグサイト(東京都江東区)で開かれる「国際福祉機器展HCR2019」では各ユニフォームメーカーの最新商品が集う。
※【ブース番号】はHCR2019の出展ブース。番号がない場合は非出展
〈デザインも「プロ」表現/ナガイレーベン〉
ナガイレーベンは、HCRで「プロファンクション」の新作を発表する。機能性だけではなく、デザインでもプロフェッショナルを表現する。
プロファンクションは、2016年に発売した。患者をベッドや車椅子から抱き起こすときなどの動作を妨げないように、肩回りを動かしやすく設計している。背中の上部にメッシュを使い、暑さ対策にもこだわった。
経営企画本部マーケティング室の今井一誠室長は「介護医療院やデイサービスといった医療色が強い現場での採用が多い」と説明する。「動きやすく安心感がある」と現場からの評判は上々で、19年はプロファンクションが持つ機能を、他のブランドでも展開している。HCRの会場でもプロファンクションを全面に打ち出す。
【ブース番号】W4―040
〈清潔感のある環境提供/アイトス〉
アイトスは、人気の杢(もく)調カラーが特徴的なポロシャツを6色展開する。素材は吸汗速乾素材の「ディンプルメッシュ」。抗菌防臭加工を施し、着用者にも施設利用者にも清潔感のある環境を提供。介護職に限らず汎用性の高いアイテムとして展開する。
介護向けでは、生地の適度な肉厚感や女性に好まれる透け防止機能が好評なサイドポケットポロシャツ「7668」、ライクラ社のポリトリメチレン・テレフタレート(PTT)繊維とポリエステルの複合繊維「T400ファイバー」を採用したストレッチカーゴパンツ「7843」の販売が好調。スポーティーデザインで軽くて薄くて暖かい、機能性わた「光電子」を採用したライト防寒「6169」も、屋外で活動する介護スタッフに評価されている。
総合ユニフォームメーカーの特徴を生かし、アイテムを幅広くそろえ、「厨房」「送迎」「清掃」「受付」などさまざまな職種ニーズに対応できる。
〈“ストレスフリー”テーマに/ボンマックス〉
ボンマックスは、ケアスタッフウエア「ナチュラルスマイル」で“ストレスフリー”をテーマに、現場で発生するストレスを多角的に解消するウエアを提案する。
動きやすさや作業効率を向上させる機能を付与し、スタイリッシュなデザインのジャージーを2ライン投入。水回り作業も安心でき、軽やかな着心地と伸縮性が特徴。
介護現場で避けられない臭いや汚れなどの悩みを解消するため、消臭性や速乾性に対応したポロシャツ2ラインを打ち出す。
〈若者が着てみたいウエアを/カーシーカシマ〉
カーシーカシマは介護ウエアブランド「ハートグリーン」で、北欧のデザイナー集団「スカンジナビアン・パターン・コレクション」とコラボレーションした商品を提案している。
北欧の自然をイメージしたカラー、街並みや果物などのモチーフのプリントなどが、在宅でも施設でも利用者に落ち着きを感じさせる。女性向け介護ウエアをいち早く手掛けた同社らしく、動きやすさと使いやすさを考えたシルエット、仕様。
アイテムはブルゾン9800円、プルオーバー6800円、パンツ8000円、エプロン4400~5900円など。
10月23~25日に幕張メッセで開催される「第2回介護&看護EXPO」では「これからの介護を担う若者たちが着てみたいと思うケアウェア」として出展する。
〈ヨネックスはじめ商品充実/トンボ〉
トンボは、メディケア向け「ヨネックス」ブランドに「チーム医療シリーズ」と、学販スポーツで実績のあるウオームアップウエア「ピストレ」を「防風ジャケット」として投入する。ニーズを見直し、例年より多数の商材で市場を開拓する。
ヨネックスは元々、学販スポーツで販売が堅調なブランド。昨秋、介護・看護ウエアにも投入した。コンセプトは「スポーティ&スタイリッシュ」で、動きをサポートするハイレベルな機能を追求する。
新たに打ち出すチーム医療シリーズは、ナースウエアや理学・作業療法士専用ウエアなどのイメージをそろえる。デザインはもちろん、機能性や作業性を兼ね備えた商品を開発。認知拡大を図る。
ベースブランドの「キラク」にも防風ジャケットを展開。季節、気候に合わせた商品として「清涼シリーズ」を発表する。ワンランク上のおもてなしブランド「リュクス」では、「ブラックシリーズ」を投入。介護ウエア業界では珍しい黒を基調に目先を変えた。
【ブース番号】W4―027
〈奇麗さと動きやすさ追求/明石SUC〉
明石スクールユニフォームカンパニー(明石SUC)は、「ルコックスポルティフ」の介護向けで機能的なポロシャツを打ち出し、市場開拓を進める。これまでのイメージを変え、奇麗さと動きやすさを追求した。
ルコックは、介護施設だけでなく病院の職種で着用されるケースも増加。スポーツブランドならではの機能性をうたう商品企画を強めながら販路拡大に努める。
HCRでは、ブランドの象徴でもあるトリコロールを基調としたブースを設置。ストライプ柄で、カジュアル感がありながら介護の現場で必須となる収納性が高いニットシャツ2タイプと、襟のバタつきを抑えて着崩れを防止するポロ襟デザイン1タイプを出展する。
今期(2020年5月期)に入り新規物件が少ないものの、売り上げは前年同期を上回るペース。HCRで新商品を披露し、販売拡大に弾みをつける。
【ブース番号】W4―045
〈三つの価格帯でニーズつかむ/シーユーピー〉
シーユーピー(岡山市)は、取引先の志向の多様化を受け、介護ウエアの価格帯を広げることでニーズをつかむ。高価格帯の「アイナ」と定番の「プロフィーリング」、値頃感のある「ハッピーウインド」の計3ラインで新商品を打ち出す。9月末発行のカタログでは、合計6マークを発表する。
設立24年のノウハウを生かし、プロフィーリングでは“10年後も着たくなる”ユニフォーム「テンユー」、「真・スタンダード」ポロシャツを開発した。
アイナは、すっきりとしたシルエットながらゆとりを持たせ、「美しくかつ動きやすい」商品を投入。ハッピーウインドは、スタンダードかつ簡素なデザインで工業洗濯に対応したパンツを発表、今後、介護専用デザインに刷新し機能なども追加する。
スクラブタイプは看護中心だったが、プロフィーリングとハッピーウインドで介護専用の商品を開発。ニーズの変化に的確に対応している。
〈介護から医療従事者向けまでそろえる/カゼンWLD〉
カゼンWLD(東京都文京区)は「国際福祉機器展(HCR)2019」で、女性に特化したデザイン、シルエットのニットシャツや、兼用でもサイズによって男女で着分けができる商品を展開する。シックで落ち着いた色合いのニットシャツも打ち出すなど、施設の雰囲気に合わせた着こなしが選べる。
ウインドブレーカーや訪問バッグ、ウエストポーチといった新商品も加え、外出の際のコーディネートも提案。定番商品もポロシャツやチノパン、動体裁断シリーズなど、医療従事者向け商品も幅広くそろえ、提案を強める。
【ブース番号】W4―047
〈「腰ケアパンツ」で新商品/住商モンブラン〉
住商モンブラン(大阪市中央区)はサポートベルトが一体型となったパンツで、売れ筋の「腰ケアパンツ」の新商品をはじめ、「アシックス」のシューズ・ウエア、「ローラアシュレイ」の患者衣・マタニティー・介護バッグ、小松マテーレの天然成分配合ファブリック「オニベジ」を使ったシャツ・エプロン・スクラブなどHCRで打ち出す。
介護市場の広がりとともに、同社のケアユニフォーム需要も年々高まってきている。ブランド商品の販売強化とともに、腰ケアパンツの新商品拡充や、心のやすらぎを理念としたローラアシュレイの新商品「患者衣・マタニティ」によって新たな販路開拓につなげる。
同社は国連の掲げる17項目から成る開発目標SDGsに対応した持続可能性や環境保全への取り組みを強化。廃棄する天然資源を染料に使ったオニベジの商品コンセプトや優しい色が、SDGsに共感するユーザーに受け入れられつつある。
【ブース番号】W4―030
〈消臭機能や着用感アピール/セロリー〉
セロリー(岡山市)は、「アイフォリー」でニット切り替えによる快適な着用感と消臭抗菌機能の二つを軸にした商品を打ち出し、現場のニーズに沿った提案を強化する。可動の多い部分にニット素材を用いる「ニットフィット」、消臭抗菌の空気触媒加工で黄色ブドウ球菌などの繁殖を抑え清潔感をキープする「ティオティオ」を施したギンガムシャツや「動パン+」(うごパンプラス)を投入する。
HCRに新商品を出展し、腕や肩、脚の負担を軽減できる機能や、臭い・汚れが付きやすく改善を求める介護現場の声に応えた機能を訴求する。
HCRではその他、介護ウエアのレンタルと納品管理もPRする。全国規模で施設を展開する大手介護事業者に対し、ユニフォームの購入と比較して手配や数量管理がしやすいレンタルをアピール。在庫などの管理業務自体もアウトソーシングとして請け負い、業務効率化に貢献する。
【ブース番号】W4―038