学生服メーカー/生産、物流改革を進める/過去最高売上高の更新続くも……

2019年09月24日 (火曜日)

 学生服メーカーの大手3社は、今年の入学商戦に引き続き2020年の入学商戦も堅調で、制服モデルチェンジ(MC)校やスポーツでの新規採用校の獲得によって増収基調が続く。一方で人件費、物流費、原材料費などさまざまなコストアップのため、利益面での低調な状況も続く。過去最高売上高を更新しながらも一向に増益の確保ができない情勢から生産、物流改革を進める。(於保佑輔)

 学生服製造大手の菅公学生服、トンボ、明石スクールユニフォームカンパニー(明石SUC)の3社は、ここ数年の入学商戦でシェアを伸ばし、15年度から増収基調が続く。しかし、16年度以降はさまざまなコストアップでトンボ以外が減益に転じ、17年度は売上高が3社とも過去最高だったにもかかわらず、減益となった。

 18年度についても、引き続き増収で過去最高の売上高を達成しながらも利益面は低調になりそうだ。明石SUCを含む明石グループの18年5月期連結決算は、10期連続で増収だったものの、3期連続の減益だった。

 トンボは子会社化した瀧本を除く19年6月期について増収を見込む一方、物流コストの増加などで減益の見通し。菅公学生服も19年7月期の見通しはスポーツの売上高が100億円超になるなど堅調だが、利益面は不透明。

 20年の入学商戦も、ニッケの調査によるとMC校が8月末段階で中学・高校合わせて170校に達する見通しで、今年の155校を既に上回る。3社ともMC校の獲得を堅調に伸ばしているだけに特に生産、物流での効率化が課題となる。

 菅公学生服は生産が追い付いていないことから、尾﨑茂社長は「今年中にも素案を出し、生産改革を進める」と話す。「根本的に(生産)能力が足りていない」として、基幹工場を軸に人工知能(AI)とモノをインターネットにつなぐIoTを取り入れ「さまざまな仕組みを一新する」。10億円規模の大型設備投資も想定する。

 物流拠点も5カ所に集約し、年内に前橋市と宮崎県都城市に相次いで物流センターを新設する。

 数年後に関東市場で100億円の売り上げ規模を目指すトンボは、21年中に茨城県笠間市に新物流センターを設ける。総投資額は25億~26億円になる見通し。東京本社の物件全てを新物流センターからの出荷に切り替える。アソート業務など物流の効率化を進めながら、近藤知之社長は「新物流センターの完成で、さらに関東でのシェアを高めたい」と意気込む。

 明石SUCは、多品種小ロットで採算が悪化する自家工場の生産性の向上が課題。河合秀文社長は「納期に合わせてモノ作りをするのではなく、日々の目標を設定する」といった意識改革の必要性を示唆する。

 働き方改革関連法や政府の最低賃金で年率3%以上の引き上げ方針によって、国内に多くの工場を抱える学生服メーカーは人件費の上昇にも頭を悩ます。さらに学生服地の値上げの圧迫も勢いを増す。さまざまなコストアップの自助努力での吸収が限界に近づく中、制服の値上げを「お願いしていく必要がある」(明石SUCの河合社長)との認識が強まる。