東洋紡/新工場建設、秋には決定/タイが最有力候補地

2019年08月21日 (水曜日)

 東洋紡の楢原誠慈社長は大阪で19日会見し、火災で喪失したエアバッグ用ナイロン66長繊維製造設備の再建に関して、「秋までには新工場建設を機関決定したい。立地の最有力候補地はタイ」との考えを示した。決定後は1年程度の工期で工場建設を終え、早期に稼働を再開したいとの考えを示す。

 同社は2018年9月に敦賀事業所(福井県敦賀市)で発生した火災によってナイロン66長繊維とクッション材「ブレスエアー」の製造設備を失った。設備再建に向けて検討を進めてきた結果、ブレスエアーに関しては「元々小規模な設備だったこともあり、敦賀事業所で既に再建を進めており、9月には稼働再開できる」見通し。

 一方、ナイロン66長繊維に関しては主力用途がエアバッグのため、「需要地のほとんどが東南アジアなど海外。このため日本国内での再建は難しい」と明言した。同社のエアバッグ基布製造の主力拠点もタイにあり、モジュールメーカーも東南アジアが多いことから、「タイを基本に立地の最終検討を進めている」と話す。海外での工場建設となれば同社単独では難しいとして、現地企業との合弁方式となる見通しも示した。紡糸機など主要設備は既に発注していることから、秋までには機関決定し、その1年後には稼働を開始したいと言う。

 一方、繊維・商事事業の現状に対しては「アクリルは原料高騰に対して価格転嫁が遅れており、中東民族衣装用織物の市況も回復していない」と厳しい見方を示す。ただ、「繊維は急激な拡大は難しいが、東洋紡でなければ生産できない商品もあり、それを求めるお客さまも存在する」として、引き続き利益率を重視しながら「メリハリを利かしながら経営資源を投入する」との基本方針を示した。