学生服メーカー/“3強”時代の幕開けへ/トンボが瀧本子会社化

2019年06月05日 (水曜日)

 日鉄物産は3日、子会社である学生服メーカーの瀧本の株式を5月31日にトンボへ譲渡したと発表した。トンボは瀧本の株式の過半数を保有することで子会社化する。学生服メーカーの売上高だけを見ると、2位のトンボが4位の瀧本を子会社化することで、菅公学生服を抜き、1位に躍り出る(グラフ)。少子化で生徒数の減少が深刻化する中、大手“3強”を中心に業界再編が本格化していきそうだ。

 瀧本は日鉄物産グループとして「スクールタイガー」などの商標を持ち、中高生向け学生服を中心に生産・販売。都市部の私立学校への供給に強いとの定評があったが、近年は菅公学生服、トンボ、明石スクールユニフォームカンパニー(明石SUC)の大手3社の攻勢が激しく、制服モデルチェンジ(MC)校の獲得では後れを取っていた。

 この2年間の決算を見ても3社が増収基調の一方で、瀧本のみ減収が続いていた。今期(2019年6月期)も瀧本は減収減益の見通しで、他の3社は増収を確保する見込み。大手4社の中でも売上高の格差が広がりつつあった。

 少子化による生徒減で市場縮小が加速し、大手間での競合も激しくなる中、日鉄物産によると「トンボから昨春話があり、株式譲渡となった」と言う。「今後も素材、縫製の業務は手伝う」方針で、日鉄物産の業績への影響はないとする。トンボは4日の時点で瀧本の子会社化に対するコメントを出していないが、瀧本の独自性を維持しながら経営資源の効率化を進め、共有化・集約化を図るとみられる。

 トンボはこの数年、国内での生産基盤を強化してきた。14年にブレザー生産のトンボ倉吉工房(鳥取県倉吉市)を開設。18年にはその隣接地に、スクールスポーツ用のトンボ倉吉工房スポーツ館を新たに増設した。

 MCが活発な東京を中心とした関東市場の早期の売上高100億円を目標に掲げ、21年には茨城県笠間市に物流センターの大型投資も計画。市場でのシェア拡大に向けて足場を固めてきた。

 学生服メーカーの大手2位と4位の統合によって売り上げ規模も約380億円(18年度の合算)となり、トップの菅公学生服の売上高348億円(18年7月期)を超えることになる。アソートやLGBT(性的少数者)対応といった市場のニーズの変化とともに、少子化による市場縮小で先行きが見通しにくくなる中、今回の大型統合をきっかけに業界再編が進む可能性がある。

 トンボの瀧本子会社化について、ある学生服メーカーの首脳は「他の業種の子会社になるより、業界を知るトンボで良かった」と肯定的な意見。「これをきっかけに業界の構造が大きく変わってくるのでは」と指摘する。素材メーカーの関係者も「他の業種だった場合、供給構造が大きく変わった可能性もあったが、当面は変わらないと思う」と胸をなでおろす。