三備テキスタイル特集/撚糸企業編

2001年11月02日 (金曜日)

森川撚糸/第4のストレッチ糸開発

 森川撚糸は開発型撚糸企業だ。以前、意匠撚糸製造を行っていたことから、最終製品をにらんだ提案販売をする。下請け的色彩の濃い撚糸業界においては変わり種的存在だ。

 同社はこれまで無撚糸、「ケブラー」デニム、ポリエステル100%使いの経伸びインナーベルトなどの商品を開発。展開してきたが、このほど短繊維単糸でスパンデックス糸をカバーリング撚糸したストレッチヤーンの製法を開発した。

 ストレッチヤーンの製造はこれまで大別して、紡績工程でスパンデックスを芯に入れ外側を綿で包むコアスパン糸、糸加工工程でスパンデックスを芯糸に紡績糸などでカバリングするFTY、ダブルツイスターでスパンデックスと紡績糸単糸2本を引きそろえて合撚するプライヤーンの3種類があった。森川撚糸が今回開発した紡績糸単糸とスパンデックス糸との複合撚糸はそれに続く第4のストレッチヤーンとなる。

 新複合撚糸の特徴は、単糸がスパンデックス糸をほぼ完全に被膜していること。また、製法が極めて単純なため、従来コアスパン糸では難しかった麻糸や綿スラブ糸、ムラ糸でも容易にストレッチ糸が製造できる。しかも、撚糸設備と特殊装置のみで糸加工を行うため、必要な時に必要な量のみの生産ができ少量多品種対応が可能だ。

 さらに双糸のストレッチヤーンに比べ、コストは安い。播州など先染め織物産地では残糸の活用が課題だが、新ストレッチ糸製法を利用するすることで残糸の活用範囲が広がることも考えられる。

 新製法によるストレッチ糸は、大前商事(広島県深安郡、大前英子氏)がジーンズ/カジュアルテキスタイルでモノポリー的に展開している。大前氏によると、このストレッチ糸使いの製品はすでに店頭に出ており「素材を買ったユーザーは従来品(双糸使い)よりかなり安いと感じたはず」だとする。ただ、この製法によるストレッチ糸は糸の形状がそのまま表面に出る。そのため、形状の良い単糸を選ぶことに留意するとしている。

 発明者の森川専務は他の織物産地でも大前商事同様に、真剣に新複合撚糸の普及に取り組む産元や撚糸企業、織布企業などとのタイアップを検討中だ。

荻田興業/絶えまぬ見本作りの姿勢

 荻田興業は村田機械製ダブルツイスター363型を65台稼働する大手撚糸企業だ。このうち40台を設備し、25台は7社の専属工場が生産する。テイクアップツイスターは自家工場の2400錘を含め、8300錘を稼働する。外注協力工場は14社だ。

 販売先は商社が60%、紡績やファイバーメーカーが40%。和歌山のニット業界や、四国のタオル産地も重要な得意先だ。商品開発には意欲的に取り組んでおり、これまでタオル関係で無撚糸を展開してきた。また、短期間で成果が表れるニットメーカーとの共同開発は過去のデータを出しながら、活発に行っている。新規市場にも積極的で印刷関係でも基布用に使用する糸の加工、摩擦抵抗の大きいポリプロピレン糸の大手紡向け加工などを行っている。

 ただ、撚糸の平均番手は34番手とニットやタオル向け加工の低調さを反映し状況だ。それでも、見本作りには常時、ダブルツイスターを1、2台使用しており、最近は30~50番手のコンパクトスピン糸の撚糸も研究中である。

 一般的にはなじみの薄い撚糸だが、紡績や織物・編み物業界を結び付ける中間加工工程として重要な存在だ。あらゆる繊維製品の素材は撚糸加工を必要とする。荻田興業では、撚糸に関するノウハウの蓄積は他社の追随を許さず、開発技術・生産設備・生産能力・品質管理のいずれをとっても国内最大のメーカーと自認するとしている。

荻田撚糸/単錘駆動機を最大活用

 撚糸は下請け的色彩の濃い業界だ。過去には多数の撚糸企業が受注確保を最優先に、工賃競争を行った経緯がある。

 しかし、そうした状況は長続きはしない。元請け、下請けともに業績低迷の中、転・廃業が増大。納期や品質、商品開発で確固たる地位を保つ企業ですら経営は水面下を余儀なくされるのが実情だった。

 荻田撚糸は積極的な設備投資を行うなど前向きの経営姿勢を貫く企業。それを認知し発注するユーザーや中間業者も多い。それでもこの3年間は水面下の経営状況だったという。しかし、それが最近変ってきた。加工賃が底打ちし、以前みられた戦国時代の様相がなくなった。工賃次第で発注先を決めるにも安値受けの撚糸工場がいなくなったからだ。

 荻田撚糸は将来をにらみながら経営する前向き企業だ。最近も、単錘駆動の新鋭ダブルツイスターを導入するなど、活発な設備投資を行った。ダブルツイスターは自家工場場に30台、専属協力工場に20台をそれぞれ稼働する。協力工場のテークアップツイスターやカバリングツイスターは1万錘規模だ。

 本社工場にダブルツイスター20台、郷内林地区の北村工場には単錘駆動タイプを含む10台を設備する。本社工場は10~30番手の太番手が多く、平均は30双糸。1日2交替操業だ。一方の北村工場は40~50双糸平均と細番手に特化しており、とくに強撚ボイル用の単糸追撚やツイル用50、60、80単糸の加工が多い。

 最近では、海外品との差別化から4コ、3コといった多合糸の受注が増えているという。ドラム式設備では困難な撚糸を単錘駆動のカム式撚糸機3台で解決。SS撚りからZZ撚りへの切り替えがワンタッチで行えるため、少量多品種やQR対応に対応している。設備投資による、他社に対する優位性がうかがえる。

 同社の用途別加工内訳はニットが4割と最も多く、次いで地場のワーキングやカジュアルが2割、残りはタオルや婦人衣料、シャツなどだ。従来、タオル産地向けや西脇の先染め産地向けも多かったが、産地の縮小を反映し構成比が小さくなった。タオル向けは15~20%を占めていたが、現在は数%に減少したという。