戦略研究/帝人の産業繊維事業/買収・増設で急成長
2001年11月01日 (木曜日)
衣料用と「2本足」へ/メリハリつけ集中投資
帝人は急速に産業繊維の事業規模を拡大している。従来、衣料用ポリエステル一本足のイメージが強かった同社だが、M&A(事業の合併・買収)によってアラミド、炭素繊維、ポリエステルモノフィラメントなど柱を確立。今後も増設などを通じ、年率5~7%の拡大を進める考えだ。
帝人の経営戦略は「選択と集中」が基本になっている。産業繊維事業グループが抱える素材でも、世界トップシェアを目指して徹底的に拡大強化するアラミド、炭素繊維、工業繊維と、合弁に移管したナイロンやする予定のアセテートなど位置付けは明確に二分される。
《パラ系アラミド/デュポン抜き世界1に》
スーパー繊維の一つであるアラミド繊維は、自社開発したメタ系「コーネックス」、パラ系「テクノーラ」を持っていたが、世界トップの米デュポンと生産規模の差は大きかった。そこで昨年、パラ系では世界2位の蘭アコーディスから「トワロン」事業を買収。さらにオランダと日本の増設のために約214億円を投じることを決めた。
オランダでは「トワロン」の原料・重合・製糸設備を増やし、現状の年産1万1000トンを03年4月には1万8500トンにする。日本では同1400トンの「テクノーラ」を今年11月に2000トンにする。
パラ系アラミドの世界需要は01年で年間3万6000トンと推定され、IT(情報技術)関連用途などで年率10%以上の伸びが見込まれる。増設完了後の合計2万500トンという規模は世界シェア50%を超え、パラ系ではデュポンを抜きトップに躍り出る。
同じパラ系でも「トワロン」と「テクノーラ」は特徴が違う。「コーネックス」を加えたアラミド3素材で用途・市場を住み分けながら、さらに事業拡大を進める構えだ。
《炭素繊維/米国拠点確立を検討》
東レに次いで世界シェア2位のPAN系炭素繊維は00年2月、東邦テナックス(当時=東邦レーヨン)を買収し、子会社化することで手に入れた事業。低迷していた市況も、ここに来てようやく底入れし、いよいよ“攻め”の条件が整いつつある。日本とドイツを合わせ年産5600トンの既存能力内では、品質向上や成型品分野の拡大に力を入れる一方、最大市場である米国に第3の拠点を確立することが重要課題になる。
東レた世界3位の三菱レイヨンはすでに米国拠点を持っており、既存工場のM&Aやグループ会社の敷地内での新会社設立などの選択肢があり、検討作業が進められている。
《モノフィラメント/製紙用世界シェア45%》
工業繊維は、昨年11月に米ジョンズ・マンビルから米国とドイツのモノフィラメント事業(年産1万トン)を買収した。既存の国内設備(同700トン)と合わせると、世界シェアは約25%となり、その中でも付加価値の高い製紙用資材分野では約45%に達する。
ポリエステル・マルチフィラメントは、日本とタイ、インドネシア、メキシコとを合わせ年産6万トンの能力を持つ。世界需要は60万トンと推定されるが、シェアアップのため、海外で1万トン程度の増設が構想されている。
有力なのは重合設備に余力があるメキシコのアクラテイジンだ。99年にアルペックグループの合繊メーカーに50%の資本参加して確保した拠点だが、今年4月には株を75%に買い増して連結子会社にしている。
産業繊維事業グループの事業規模は約1200億円。グループ長の増山明常務は「アラミド、炭素繊維、工業繊維の3事業では年10%の拡大が見込める」と語る。その中で「利益ある成長」を追求し、ROA(総資産利益率)10%を目指すという。
《ノンコア事業/規模適正化で収益改善》
徹底したメリハリ、これが帝人産業繊維事業戦略の最大の特徴だ。3年前までの同社繊維事業は、衣料用ポリエステルを除き、世界市場でメジャーと呼べるものは皆無だった。そこで「1本足打法からの脱却」(安居祥策社長)が始まる。持ってはいたが、規模ではマイナーだったパラ系アラミドと工業繊維のモノフィラメントは海外企業からの買収で、一躍世界トップのシェアを手に入れた。炭素繊維へは“落下傘”的な進出だった。
これらの事業は、世界的に需要増が見込めるうえ、プレーヤーの数も少ない。さらにスペックインすれば安定的なビジネスが可能で利益率も高い。今後の拡大投資もこのコア事業に集中する構えだ。
一方、事業環境が厳しいナイロン、アセテートなどの事業は拡大を追わず、むしろ適正規模化で“赤字を出さない”ことに主眼が置かれる。
その境目に位置するのが、人工皮革「コードレ」。工場集約、生産規模縮小と並行してマイクロファイバー使いの新商品開発や中国への基布持ち込みによる委託加工などが軌道に乗れば、反転攻勢も可能になる。
規模的には世界メジャーの衣料用ポリエステルは構造不況の中、長繊維の国内縮小、分社化という大手術の真っ最中。これが計画通りに成功すれば、産業繊維と衣料繊維という2本足を持ったグローバル繊維事業が誕生する。




