アクリルメーカー/不織布市場に攻勢/ターゲットは吸音材
2019年04月18日 (木曜日)
アクリルメーカーが不織布市場へのアプローチを強めている。セーター、肌着といった秋冬衣料中心の事業展開では今以上の成長が期待できないため、非衣料・産業資材領域での取り組みを各社強化してきた。この一環として、三菱ケミカル、東レ、日本エクスラン工業のアクリル3社は自動車関連資材を中心とする不織布用途を開拓するための商品開発、販売促進に力を入れている。(堤 貴一)
縮小を続ける日本の繊維産業にあって、伸び率こそ鈍化しているものの、今も成長路線を維持しているのが不織布市場である。その不織布にアクリルメーカーが注目しており、自動車関連資材として使われている吸音材狙いの取り組みが活発になってきた。
三菱ケミカルは、2017年の「人と車のテクノロジー展2017」に初出展。「サイ」とポリエステル短繊維との複合で開発したサーマルボンドによる吸音材をアピールした。サイは0・1デシテックス(直径マイクロメートル)の超極細アクリル。耐薬品性、耐熱性が高く、優れた吸音性能も発揮する。
既存の1200グラムの吸音材の場合、サイを10%混入すれば600グラムで同じ吸音性能を持たせることができ、大量にサイを混入すれば低周波に対する吸音性能を引き上げられる。
三菱ケミカルは同展に出展して以降、自動車メーカーが指定するパーツメーカーとの共同開発に力を入れており、車外騒音規制がフェーズ2へと引き上げられる20年度をめどに「スペックインを実現したい」と言う。
東レは、グループで展開する不織布関連ビジネスを年商1千億円に引き上げる中期戦略に取り組んでいる。短繊維事業部はポリエステル短繊維を不織布向けに販売しており、吸音材向けが主力用途になっている。
0・7デシテックス以下のゾーンをアクリル「トレロン」で取り込もうとする動きを強め、共同開発を進める不織布メーカーとともに自動車メーカーに対する売り込みを強化する。
自動車メーカーは部品調達の際、複数購買が原則のため、「数社が同じ方向性で開発を強化していけば、極細アクリルの高機能に注目が集まるのでは」との認識を示す。
日本エクスラン工業は耐熱性、耐薬品性を引き上げるためホモアクリル(アクリロニトリル100%)で商品化したSタイプ、Tタイプをバグフィルター向けにチョップドファイバーとわたで販売しており、「ようやく一定の販売規模に育ってきた」と話す。
このほか、機能性微粒子「タフチック」、超吸水性繊維「ランシール」などを展開し、これら非衣料・産業資材向けの商材は現在、同社年商の35%前後を占めている。
吸音材にも注目し、今後数年で非衣料・産資比率を50%に引き上げ、「将来は70%台に乗せる」方向でエクスラン事業の構造転換に取り組む。