メディカル、介護ウエア/得意分野で市場に切り込む/安定供給へ設備投資も

2019年03月14日 (木曜日)

 「団塊の世代」が全て75歳以上になり、医療需要が急増する2025年を前に、国は住み慣れた地域で医療や介護サービスを受けることができるよう仕組みづくりを進める。医療と介護の垣根がなくなる中で、メディカル、介護ウエアメーカーは、各社の得意分野で市場に切り込む。安定供給へ生産基盤を整備する動きも出てきた。

(國分瑠衣子・於保佑輔)

 介護ウエア販売で実績を伸ばす大手学生服メーカーの菅公学生服、トンボ、明石スクールユニフォームカンパニー(明石SUC)の3社は、患者着やスポーツブランドと協業したウエアを打ち出し、今期も前期比増収での着地を見込む。

 好業績の一つの要因には、学生服メーカーが得意とする営業力がある。医療機関に比べ、数が多い介護事業所は営業に苦戦するメーカーも少なくない。「学生服で培った足を運ぶ営業力と、得意のニットでじわじわとシェアを拡大している」(明石SUCアクティブチャレンジ部の浅沼由佳企画部長)と、機動力を発揮する。

 各社の商品戦略では“広く浅く”よりもそれぞれの得意分野を深堀りしたウエアが目立つ。

 ナガイレーベンは、医療現場での動きやすさとクーリング効果を追求したウエア「プロファンクション」の機能を、複数のブランド15品番に広げる。スポーツブランドのウエアを展開するメーカーは多いが、経営企画本部マーケティング室の今井一誠室長は「医療現場とスポーツの動きは異なる。両腕を前に伸ばすという医療現場の特徴的な動作を解析した」と説明する。

 業界でいち早くオリジナルのスクラブ販売を始めたフォーク(東京都千代田区)は、「ジップスクラブ」や米国発のワークウエアブランド「ディッキーズ」の売り上げが伸びている。小谷野淳社長は「広く商品展開すると焦点がぶれる。ニッチを掘ることに意味がある」と、スクラブの商品開発を進める。

 4年ぶりにカタログを発行したオンワード商事は、チュニックとスクラブ、パンツ計13型30品番を発売した。19年は、これまで手薄だった代理店を通した営業にも力を入れ、販売網を強化する。

 住商モンブラン(大阪市中央区)は、腰の負担を軽くする「腰ケアパンツ」の販売が好調に動く。長尾孝彦社長は「商品の品質や魅力を高め、豊富な在庫力や物流の強みを生かして、商圏の拡大を目指す」と力を込める。

 国内では工場が立地する地方都市が深刻な人口減少に直面する。生産性を上げるために工場に設備投資する動きも出てきた。

 国内生産が半数を占めるナガイレーベンは、18年9月に8億円を投じ、秋田県大仙市に「ソーイングセンター」を稼働させた。大仙市内の別々の場所にあった物流センターとカッティングセンターを同じ場所に集約した。海外から最新式のハンガーシステムを導入し工場の「見える化」を進める。

 同社は、大仙市とその周辺に協力工場を含め、10カ所以上の縫製工場を持つ。朝井克司取締役業務本部長は「人材集めが難しくなる中、生産性を高めてボリュームを維持する」と話している。