「AFFセレクション」から見えてくるもの/米中貿易摩擦で日本重視/対応力にサステ潮流も

2019年03月12日 (火曜日)

 東京国際フォーラムでAFFが主催した「第2回AFFセレクション」(6、7日)の来場者数は1145人と前回(985人)比16%増加した。主催者目標の千人を大きく上回る結果となった。盛況の背景には「中国見直し」「サステイナビリティー(持続可能性)」「米中貿易摩擦」「コスト対策」などOEM/ODMビジネスの変化を見ることができる。

(鈴木康弘・強田裕史)

 「AFFセレクション」は、“中国高級アパレル&素材展示商談会”と位置付けるように、AFF出展企業の中でも“高級ゾーン”を狙う47社が参加した。日本との取引実績もあり、大半が小ロット・短納期という日本市場独特の発注にも対応できる。

 この特長に磨きをかけるため、第2回目となる今回は「出展基準を昨年以上に厳しくした」と、同展の運営者である中紡広告展覧の孫暁明総経理は語る。技術力、環境保護能力、生産能力に加え、日本語対応力の高い企業をそろえた。その結果、前回からの継続出展は9社にとどまり、38社が新規に出展した。

 この改善策は来場者にも好評だった。「企業グレードが上がり、商談に結び付いた」「日本語対応できる人が多く、スムーズに話ができた」「新規出展者が多く、新しい仕入先を増やせた」といった声が聞かれる。

 人件費の高騰などでアパレル生産は中国からASEAN地域にシフト。昨年の日本のアパレル輸入は、中国が前年比横ばいながら、シェアは59・9%(金額ベース)と6割を切った。一方、ASEANは18・2%増で、シェアは27・5%に拡大している。

 中国の環境規制強化や米中貿易摩擦を回避したことも要因にあるが、ASEANは素材調達やインフラ整備、品質管理面で弱点があり、中国シェアがこのまま下がり続けるとみる向きは少ない。「小ロット・短納期はやはり中国」「品質面や言葉の壁の面でも中国は不可欠」と、アパレルや商社は中国を見直している。

 加えて、サステイナビリティーが重視される潮流もある。今回の出展者の半数以上が生地・製品の一貫メーカーだったことも大きい。CSR(企業の社会的責任)調達を進める上でも、生地のトレーサビリティー(追跡可能性)は明確な方がいい。

 欧州向け輸出を行う企業も多く「エコテックススタンダード100を取得」(江蘇匯鴻国際集団中錦控股)、「sedex(サプライヤー倫理データ交換)、BSCI(ビジネス・ソーシャル・コンプライアンス・イニシアティブ)の認証を取得」(嘉興市帝凱服飾)など、環境保護、安全性や人・労務の企業コンプライアンスが強く求められる時代に注目される。

 「米中貿易摩擦で米国向けは苦戦」(福田実業)し、日本市場への期待は高まる。「近くの米国向け縫製工場のスペースが空き、仕事を求めてきた」(常州福軒国際貿易、青島柏麗雅服飾)という話も出ている。

 常州福軒国際貿易や嘉興市創友貿易は「工賃の下がる閑散期の生産を増やす」「直貿することでコストを下げることができる」(江蘇亦瑾進出口貿易)とコスト抑制にも取り組む。日本のニーズと中国の事情とが合致する情勢になってきた。