三菱ケミカル「コアブリッドB」/船舶係留用ロープ開拓/高木綱業と共同開発
2019年02月21日 (木曜日)
三菱ケミカルが導電アクリル「コアブリッドB」の拡販に取り組んでいる。ターゲットは船舶係留用のロープ(ホーサー)。共同開発を進めてきた高木綱業(高松市)が、超高強力ポリエチレン繊維「イザナス」などとの複合で商品化した静電気除去性能ロープ「エネルラインロープ」の販促に力を入れている。
金属が使われている用途を高機能繊維で代替しようとする開発がさまざまに行われており、大型船舶を係留する時に使われる金属製ホーサーの分野にはスーパー繊維のホーサーが既に進出している。静電気の発生が嫌われる大型タンカーやLNG運搬船などで使われるホーサーには帯電防止性能が欠かせないものの、その性能を担保する国際的な評価基準がこれまでは存在しなかった。
このため、両社は繊維ロープの帯電防止性能を評価する試験方法の確立を目指し2014年秋に取り組みを立ち上げていた。この際、「国内で試験方法をJIS化するには4~5年かかる上、その後、ISO化を目指すとトータルで開発には10年近くを要する」とみていた。
評価基準の確立にかかる期間を短縮するため、両社は当初からISO化を目指した取り組みに切り替え、4年がかりでコアブリッドBを複合した帯電防止ロープの除電性を評価する試験方法を確立。これが国際標準化機構(ISO)から承認され昨年10月、ISO規格(ISO20615)として発効した。
大型タンカーにはホーサーが何本も積み込まれている。その素材がスチールの場合、直径は10㌢前後になり、複数本のホーサーの総重量は8㌧にも達するという。両社はコアブリッドB5%・イザナス95%で商品化することで「ほぼ静電気が起こり得ない性能」を実現するとともに、総重量を1㌧前後に軽量化できたとしている。
高木綱業はイザナスやポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステルとコアブリッドBとを複合したロープをかねて運送業界やホームセンター向けに販売してきた。このほどISOから承認されたことを弾みに、改めてエネルラインロープの優れた帯電防止性能、軽さなどを打ち出し、大型タンカーやLNG運搬船などのホーサー用途の開拓を本格化させる。