特集 小学生服(5)/有力学生服・素材メーカー/多様なニーズへの対応力強める

2019年02月18日 (月曜日)

 有力学生服・素材メーカーは、小学校服市場に対し、さまざまな視点からのアプローチを強めている。学校の現場や保護者から出てくる多様なニーズに対し、商品だけでなくサービスも含めて、市場開拓の足掛かりを作ろうとさまざまな取り組みを進める。

〈菅公学生服/教育ソリューションで市場創出〉

 菅公学生服(岡山市)は、昨年の総合展「スクールソリューションフェア」で教育ソリューションとしてこれまで取り組んできた事例や独自の教育プログラムを紹介した。

 特に小学校向けで関心が高かったのが“非認知能力”を育むプログラムで、主に児童期(小学生)を対象にした「カンコーNCSプログラム」。“アイデアドーナツ”や“CQツリー”といった個々の考えを引き出し、整理(建設的発想)することのできる独自ツールや、“クリエイティブディスカッション”を組み込むことで、創造的な発想や表現力を身に付けることができる。ただ、単発的にプログラムを取り入れるのは意味がなく、継続的な取り組みが必要となってくる。

 教育ソリューションを単に制服モデルチェンジへつなげるのではなく、「こういう学校像を目指すから、それに沿った制服に変えたいという要望に応える」(曽山紀浩取締役開発本部長)ような形でのビジネスを模索。長期的な視点に立って事業の拡大に取り組む。

 小学生向けの商品では「カンコータフウォッシュ」の販売が前年に比べ10%増と引き続き堅調。家庭洗濯ができ、洗濯を繰り返しても劣化しにくいことや、ピリングやひっかき傷が発生しにくいことなど「品質と耐久性に共感してもらっている」(曽山取締役)と、リピートで買うケースも増え、イートンや詰め襟服だけでなくポロシャツなどアイテムも広がる。小学校全体の売り上げも前期比5%増で推移しており、教育ソリューション事業と同じように腰を据えて市場開拓に取り組む。

〈明石SUC/防災学習教材を広げる〉

 小学生服市場は年々、学校数、生徒数とともに減少傾向にあるが、明石スクールユニフォームカンパニー(明石SUC、岡山県倉敷市)の小学生向け制服販売は「売り上げを維持している」(営業本部の江藤貴博スクール第一販売部長)。

 小学生向けにイージーケア性が高いポロシャツ「ラクポロ」など高付加価値の商品の販売が増加。空気触媒加工「ティオティオ」で抗菌や消臭、防汚などの機能も高く、販売数量は前年比20~30%増と堅調に伸ばす。「安かろう悪かろうの商品を買うより、長い目で見れば機能など付加価値の高い商品を買う方が良いといった認識が広がっている」ことが背景にありそうだ。

 2017年に消費者の声を反映し開発した給食着は、ニット製でシワになりにくく、ティオティオで機能も高く「通常の給食着に比べて値段が高いが、順調な売れ行き」と言う。

 19年入学商戦から女子中高生向けに人気キャラクター「リカちゃん」をモチーフにしたブランド「リカ富士ヨット」を打ち出したが、小学生向けにも商品開発を進める。

 小学校向けの防災学習教材も開発。昨年は豪雨や地震など災害が多かったことに加え、「防災に役立つ教材があまりなく、かといって自分で教材を作る時間がない先生も多い」(スクール第二販売部の中村孝新規事業開発課長)ことから高い関心を集めた。今年4月から一部の小学校で導入を開始。合わせて開発した「防災学習かるた」についても大型書店を中心に販売を始めている。

〈トンボ/中高連動企画を強める〉

 トンボ(岡山市)は小学生向けに、中高生の制服と同じように機能性を強化した「トンボ・ジョイ」をはじめ、学校別注向けのDCブランドライン「コムサスクールレーベル」「オリーブデオリーブスクール」、小中一貫校向けライン「トンボプライマリー」など幅広い商品群をそろえる。

 昨年の総合展ではトンボプライマリーで目を引く明るいタータンチェックを取り入れた制服など紹介。最新素材を取り入れながら「中学校や高校と連動する形での提案を強めてきた」(営業統括本部MD本部の青江宏明スクールMD部副部長)。

 制服の動きやすさやイージーケアへのニーズが高まる中、中高向けではストレッチ性を高め、より快適な着心地を実現したニット素材「ミラクルニット」を開発。今年の入学商戦から早くも同素材を採用した学校が広がり、手応えをつかむ。

 これまで小学校向けの制服は、中高向けにニーズの高かった機能性を落とし込み、商品化するケースが多かった。ミラクルニットのような商品もその一つで、「中高生に比べ、小学生は運動量が多い。型崩れや物性面などしっかり精査しながら商品化していきたい」と、ニットでの新たな商品開発も進む。

 毎年、「WE LOVE トンボ」絵画コンクールを開催。昨年は15万点近くの応募があり、小学生からの応募が最も多かった。「学校とトンボのつながりを深めるきっかけになっている。コンクールを大きな柱としてブランディングを強める」として、制服を採用する小学校が少ない中でもコンクールを通じて認知度を高める。

〈オゴー産業/サクラクレパスと商品開発〉

 オゴー産業(岡山県倉敷市)は、文具メーカーのサクラクレパス(大阪市中央区)と小学校低学年や女子児童向けのアイテムを想定した商品開発に乗り出す。同社は詰め襟服などで「鳩サクラ学生服」ブランドを展開しており、お互いに「サクラ」を商標に持つ“縁”から商品開発でのコラボレーションに至った。

 「クレパスやクーピーペンシルの商品パッケージは多くの人が知っている」(片山一昌経営企画部長)ことを生かし、コンセプトや付加価値を盛り込んだ商品を開発、6月の展示会で披露を予定する。

 同社は小学生服市場の開拓を強めており、昨年発表したスクールニット「アクティ」が早くも一部の学校で採用され好評。アクティはポリエステル100%で生地の表と裏にゲージ差をつけ、独特の表面感を出したセーター、ベスト、カーディガンで、店頭販売も進んでいる。

 防災頭巾付きの多機能ランドセル「プレセーブ」ではこれまでのオレンジだけでなく赤や黒も追加。一部の販売代理店を通じてインターネット販売も始まった。子供たちの危険回避能力の向上と地域の安全な環境作りに役立つ「全国安全マップコンテスト」の取り組みも、新たな学校との接点ができるなど広がりつつある。

 今後はスポーツウエアも企画を充実させる。「小学生服市場への当社の立ち位置が少しずつ固まってきた。存在感を高め、必要な会社だと思ってもらえるようブランディングを強める」と言う。

〈東レ/合繊の強みや機能加工〉

 東レは小学生服素材としてポリエステル100%の梳毛調素材「ミランザ」や高い耐久性を持つ防汚加工「テクノクリーン」の提案を進める。通学路などでの安全性を高める高視認性素材の拡販や新たな機能加工として防虫加工もアピールする。

 小学生服は中学・高校の制服以上の強度と家庭での取り扱いやすさが求められる。こうしたニーズに東レはポリエステル100%素材やポリエステル高混率素材の物性、機能で応える。ミランザは高品位な素材感でありながら、耐摩擦性も併せ持つ。小学校生活6年間では成長に合わせた買い替えが必須なため、価格面でも合繊には強みがある。

 防汚機能も小学生服では重要になる。テクノクリーンは汚れの付着を抑え、洗濯時には汚れが落ちやすいという機能加工で、家庭洗濯が必須の小学生服にとって最適な機能と言えるだろう。ミランザや、シャツ地に加工して提案する。

 防虫加工「ウィズリリーフ」も最近、小学生向けで提案を始めた高次加工の一つ。子供の体への影響も配慮した薬剤を使用しており、蚊やダニを寄せ付けない効果がある。50回洗濯後も機能を発揮する。

 安全性の観点から視認性を高める素材「ブリアンスター」の普及にも取り組む。関西の自治体と連携し小学生低学年で2018年からテスト着用を実施している。ウエアに加えベストや雨具、帽子など周辺アイテムも含めて安全面で貢献する。

〈ニッケ/ウール素材の良さ伝える〉

 ニッケは小学校服でのウール混素材の採用増に向けて、ウールならではの天然の機能や感性の高さをアピールする。

 小学生は活発な動きが日常的なため、強度や扱いやすさから標準的なものは合繊が主体だ。ウール混率はニットで18~19%、布帛で30%以下が定番となる。成長による買い替えが必要になるため価格設定も配慮が必要だ。

 ウールの良さは長期間着用した時の見た目の違いにでる。ニッケが独自に着用済みの学生服を回収し合繊100%素材と比較したところ、ウール混素材は紺や黒の深みが長持ちする、合繊100%素材特有のてかりが少ないといった違いがあるという。

 小学生服素材として「ニッケ アクティブウール」の販売を進める。ウール混率は15~30%。肌側に、吸湿性に優れたメリノウールを使用した多層構造の生地で、透湿拡散性に優れる。衣服内の水蒸気を素早く吸収・拡散して蒸れや汗冷えを解消し、優れた温湿度コントロールを実現する。家庭洗濯にも対応する。

 昨年から「ニッケ教育研究所準備室」を立ち上げ、小学校に標準服やウール素材のメリットを効果的に伝えるための研究を始めた。既に高校で実績のある学校への“出前授業”や出版物などを通じて、制服のメリット、ウール素材の特性を伝えられないか検討する。