技術の目

2019年01月08日 (火曜日)

 「技術の眼~NEW WAVE GENERATING TECHNOLOGY~」では将来的にニューウェーブを巻き起こすような重要な技術になりうるかもしれないものにスポットを当て、紹介する。

〈YKK/フック形状を改良〉

 YKKは連射タイプの面ファスナー「パワーフック」の新商品(1QCLF)を開発した。面ファスナーはフック(オス)とループ(メス)の係合が原理で、サポーターやグローブなどでベリベリと剥がすもの。連射タイプのパワーフックは織り・編みの繊維製面ファスナーに比べ、材質の選択が幅広く、フック形状のバリエーションも豊富で、成型のため、品質も安定している。

 新商品はフック形状を改良し、剥離強度(剥がれ)の方向性によるばらつきを軽減した。相手側となるループ面も同時に開発。せん断強度(横ずれ)にも優れる。「5千回の耐久性試験でも強度の保持率に問題はない」と言う。洗濯の際に糸くずなどを拾いにくいのも特徴。

 カラーも12色で展開し、用途を広げる。既存品は主にカーテンやサポーター、血圧計などに使われているが、スポーツ、ベビー、介護衣料の前立てなどでの使用も期待でき、「着脱の音も小さい」ようだ。

〈興和、農研機構/ミノムシの糸 産業化へ〉

 興和と農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)は、ミノムシの糸が自然界の繊維で最強といわれるクモの糸を超える強度であることを発見し、その産業化を可能にする技術開発に成功した。素材メーカーなどと連携して量産化、商品化に乗り出す。

 両者は共同で、ミノムシの人工繁殖方法や大量飼育方法、効率的に採糸する方法を確立した。ミノムシの糸は、タンパク質で構成されるシルク繊維。その優れた秩序性階層構造と、それが繊維切断まで維持されることが高強度の要因だという。肌触りの良さ、吸湿性、細さ(約4¥文字(G0-ACA3)㍍)、生分解性といった特長も兼ね備える。

 ミノムシが移動の際に糸を吐き続ける習性を生かし、真っ直ぐの長い1本道を移動させることで、数百㍍という長い糸を採糸することに成功。これまではミノムシのミノを利用した草履やバッグなどしかなかったが、長繊維の採糸実現により多様な分野での商品化を可能にした。

〈東洋紡STC/新たに超消臭「@deo」〉

 東洋紡STCは20春夏用インナー・肌着素材で、新たに開発した超消臭素材「@deo(アットデオ)」の販売を開始する。

 アットデオは、わたの改質で「業界最速クラスの消臭スピードを持たせた」新素材。肌着向け中心の販促に取り組んでいる。未洗濯品でアンモニア消臭率を測定したところ、他社品が5分経過、10分経過時点でどちらも60%の消臭率だったのに対し、アットデオは5分で70%、10分で85%の消臭率を示したと言う。

 10%の混率でSEK基準をクリアすると言い、昨年12月に開いた東洋紡グループ繊維総合展では、綿やレーヨン「リフレス」によるテキスタイル、製品でアピールした。

 潤いにこだわって開発した「うるおいコット」やリフレスなどを打ち出す。

 綿の改質で水分率を7%から12%に引き上げ、しっとり、しなやかな風合いを持たせたのがうるおいコット。リフレスでもわたの改質によって水分率を12%から16%に引き上げた。

〈田村駒/伸び~るインナー販売〉

 田村駒は、開進(大阪府箕面市)の特殊伸縮性丸編み生地製品を販売する。綿主体の素材で、横方向に2.5倍、縦方向に1.5倍に伸び、緩やかに元に戻るのが特徴。着脱もスムーズで圧迫感がない。婦人・紳士・子供インナーなどに向ける。

 この生地は綿80%・ナイロン15%・ポリウレタン5%のほか、綿95%・ポリウレタン5%などがある。肌面は綿100%にしており、肌に優しい。素材の耐久性にも優れ、洗っても形崩れしにくく、家庭洗濯も可能。

 開進は製造法の特許を持ち、「和歌山で編み立て、大阪で仕上げ加工を施し、奈良で縫製。縫い合わせ部分も糸切れしにくく伸びる。熟練の技術者が1枚1枚丁寧に縫製」(開進)する。既に病院のリネンサプライ、ボックスシーツなどにも展開し、介護関係の展示会にも出品している。

 田村駒は「機能性の高い素材であり、インナーを中心に販売面を担当していく」という。

〈大阪電気工業/導電繊維の売れ行き好調〉

 電線・ケーブルメーカーの大阪電気工業(大阪市中央区)が販売する導電繊維「オデックス」の売れ行きが好調だ。

 同社は電線・ケーブルの加工・製造が売り上げのほとんどを占め、導電繊維の供給はこれまで抗菌機能付き靴下、導電性手袋、特殊ユニフォーム、防爆フィルターなどに限られていた。ところが近年、繊維企業で情報通信技術と衣料を組み合わせたウエアラブル商品の開発が盛んになったことで、需要が拡大し、衣料用途の売り上げが急速に伸びていると言う。既に、大手紡績、合繊メーカーなど繊維企業で実績がある。

 オデックスはナイロン66に銀をコーティングした繊維で、ナイロンと銀が持つ機能や物性を併せ持つ。この素材だけで導電性をはじめ、電磁波シールド(1ギガヘルツ帯で40デシベルの減衰率)、静電気抑制、赤外線反射、抗菌・消臭といった多機能を付加できる。異なる糸との撚糸を想定した原糸販売に加え短繊維でも供給可能。

〈サカノ繊維/食品工場用「白い空調服」〉

 ユニフォーム製造のサカノ繊維(東京都墨田区)は、食品工場向けの熱中症対策に白衣に電動ファンを取り付けた「白い空調服」を昨年から発売、順調に売り上げを伸ばしている。

 夏の屋外作業や建設・建築業などで採用が多い空調服だが、食品工場や厨房など、部分的に高温になる環境でも省エネ・冷却効果を発揮する。

 腰部の左右に設置された2基の小型ファンが外気を取り込み、汗を蒸発させることによる気化熱で体を冷やす。セフト研究所および空調服(同板橋区)の特許と技術による仕組み。

 異物混入を警戒する食品工場だけに、体毛が袖や襟から飛散することのないよう密閉性を高めている。一方で衣服内の熱を排気しやすいよう腕にメッシュ生地の排気口を設けた。電動ファンは容易に脱着ができるため、汚れてもすぐ洗濯できる。