不織布新書18秋(5)
2018年09月27日 (木曜日)
〈帝人フロンティア/環境商材の訴求強める/B2Cの最終製品拡大も〉
帝人フロンティアの産業資材部門機能資材本部は、環境商材を軸にした商品開発や新用途の開拓に力を注ぐ。環境商材ではナノファイバー「ナノフロント」不織布によるバグフィルター用途が順調に拡大する。バグフィルター向けではメタ系アラミド繊維「コーネックス」の中国販売にも力を入れる考えで、同国での環境規制強化に伴う需要増を取り込む。
水処理膜の支持体に用いる機能紙向けのショートカットファイバーや、自社でも手掛ける機能紙販売も環境商材の一つであり、2018年度も好調に推移する。
新用途の開拓ではさまざまな原料を組み合わせることで多様な不織布展開ができることを武器に、環境商材だけではなく、ヘルスケア分野への参入も図る。
不織布を使った最終製品の事業拡大もテーマに挙げる。売り上げ規模で見ると、現状はB2Bが圧倒的に多いが、B2Cの強化にも取り組む。
寝具製品や、生活雑貨の製品ブランド「ティーコンフォート」、ナノフロントなどを用いたフェースマスクや汗拭きシートの「美JIN革命」がそれに当たる。
〈髙安/わた、不織布フル稼働/原料高騰対応が課題に〉
再生ポリエステル短繊維、短繊維不織布製造の髙安(岐阜県各務原市)は再生わた、ニードルパンチ不織布(NP)などの不織布ともフル生産状態が続く。再生わたはNPによる自動車吸音材向けが増加しており「需要に応じきれていない」(野田博之常務)状態。一方で、原料価格が上昇するため、2019年9月期は「原料コスト上昇分をどの程度反映し、新規用途の開拓も含め生産内容をいかに高度化できるかが課題」とする。
原料高騰は中国の再生ポリエステル短繊維製造子会社である髙安工業〈江陰〉も同様。中国の廃プラスチック輸入禁止で日本からのペットボトル輸出がストップし、中国内では原料チップ価格が急騰。現地調達ではスプレッド(原料コストと販売価格の差)が確保できないため、10、11月には日本からの原料供給に切り替える。
関税もかかるが、「現地の原料価格は今年に入って1・5倍。8月だけでも2~3元は高騰した。この先、どこまで上がるか読めない」こともある。原料チップの中国供給により国内生産用も不足するため、外注で行う原料チップの加工能力も現状比25%引き上げる。
NPは主力の自動車資材に加え、土木資材に力を入れる。林道整備用の補強材もその一つ。スパンボンド不織布より使い勝手が良い特性を訴求し拡大を目指す。
〈髙木化学研究所/研究開発型を指向/差別化わたの開発注力〉
再生ポリエステル短繊維製造の髙木化学研究所(愛知県岡崎市)は「今後も基本スタンスは変えない。規模の追求ではなく、高品質わたの安定供給と差別化わたの開発に注力する」(髙木紀彰上席顧問工場長)方針をとる。
同社は200件を超える特許を取得する研究開発型企業。ペットボトルやフィルム屑(くず)などを原料にした再生ポリエステルわたは1972年に生産を開始した。
現在、片寄工場(同)に月産500トンの再生ポリエステル短繊維設備を持つ。黒や各種カラーの原着、白わたを多品種小ロットで対応するほか、機能性付与などにも特徴がある。機能性わたの一つが難燃タイプや中空タイプ。中空では用途に応じて中空率を変えるなどニーズに応じてカスタマイズもできる。海外勢も技術力を向上させる中で、こうした開発力を一層強化し国内生産ならではの特徴をより鮮明にする。
現在、再生わたは主力の自動車内装材向けを中心に需要は底堅い一方で原料コストが上昇する。このため10月出荷分からコスト上昇分の価格転嫁交渉に入った。
〈小山化学/開発やマーケティング強化/強みと掛け合わせ成長を〉
再生ポリエステル短繊維製造大手の小山化学(栃木県小山市)は、商品開発とマーケティングの強化やグローバル展開の加速、収益性の向上に重点を置く。これらの戦略に、月間300銘柄にも上る多品種少量生産という強みを掛け合わせることで成長へとつなげる。
自動車内装材向けカラー原着わたの販売(不織布向け)を主力とする。天井材やシートバック材、トランク回りなどに用いられるが、不織布からトリコットなどへの置き換えもあって、事業環境は厳しい。そのような中でも2018年1~6月は売り上げと、利益ともに計画をクリアした。
飛躍に向け重点戦略を進める。開発では“売り”である再生ポリエステルを生かすために、難燃などの機能を付与したもののほか、繊細度(2・2デシテックスや1・7デシテックス)の原着わたなど同社にしかできない商品を増やす。
マーケティング強化では自動車用途以外の開拓を狙う。従来は品質や生産性の向上に意識を集中していたが、これからは自らで新用途や新規顧客を求める。鈴木馨社長は「20年には新しい用途や商品が柱になっているように、スピード感を持って取り組む」考えを示す。
グローバル展開では兄弟会社との連携を深める。海外にも原着ステープルファイバーメーカーは存在するが、品質力や色の管理で勝負する。
〈旭化成アドバンス/高付加価値×グローバルが基本/米国市場開拓に取り組む〉
旭化成アドバンスは生活資材や産業資材向け不織布で米国市場の開拓に取り組む。“高付加価値×グローバル”を基本方針に置いた取り組みが加速する。
同社は旭化成のポリエステルスパンボンドやキュプラ長繊維不織布「ベンリーゼ」、人工皮革「ラムース」を中心に多彩な不織布製品を扱う。2018年度上半期(4~9月)も生活資材、産業資材共に前年同期を上回る売上高となった。生活資材は厳冬の影響で流通在庫が減少したことから好調に推移。マスク用も機能性加工の付加価値品が堅調だった。産業資材向けは電線被覆材、空調ダクト、膜支持体、フィルターなど主力用途が横ばいも米国向けでインテリア関連の販売が拡大している。
このため今後は産業資材と生活資材共に米国市場の開拓に力を入れる。現地アドバイザーを活用し、需要家へのアプローチを具体化させる。来年4月には米国にスタッフを駐在させる計画だ。また、旭化成国際貿易〈上海〉と連携し、旭化成の商品の中国市場への販売拡大にも取り組む。
〈クラレクラフレックス/製法×独自原料×製法/独自性をさらに磨く〉
クラレの不織布製造販売子会社、クラレクラフレックスは、スパンレース不織布(SL)、メルトブロー不織布(MB)、独自製法の水蒸気不織布などを保有する。こうした製法技術にクラレの特殊原料を掛け合わせて「独自性を発揮した不織布事業」(クラレ繊維カンパニーの足立篤美生活資材事業部長兼クラレクラフレックス社長)を目指すが、製法の複合化による差別化も進める。
同社はケミカルボンドの「クラフレックス」カウンタークロスを東南アジアにも紹介する。今年3月、HACCP(危害要因分析重要管理点)製品認証を取得。雑菌が繁殖しにくいと好評を得ている。
MBではポリアリレート系液晶ポリマー不織布「ベクルス」がコピー機などで使用され、スチレン系熱可塑性エラストマー「セプトン」不織布もメディカル分野で用途を広げる。
水蒸気不織布は水蒸気に反応する原綿を使い、医療用包帯、農業・園芸資材分野にも需要創出が進む。さらにMBの不織布をSLラインで再加工する開発も進めており、独自性を発揮する。
〈ダイワボウレーヨン/“サステイナブル”前面に〉
ダイワボウレーヨンは、不織布用途でも機能レーヨン短繊維を“サステイナブル”(持続可能な)素材として打ち出す。その一つとして撥水(はっすい)レーヨン「エコリペラス」の提案を進める。
同社の不織布用レーヨン販売は2018年度もスパンレース向けを中心に堅調が続く。ここに来て機能わたや差別化わたへの引き合いも徐々に増加。例えばスキンケア製品向けでは極細繊度わた「ソフレイ」の販売が拡大している。
こうした中、新たに提案に力を入れるのが撥水レーヨンのエコリペラス。特殊加工によってレーヨンの風合いなど特性をそのままに撥水機能を付与した。消臭機能やpHコントロール機能も併せ持つ。
例えば紙おむつの表面材やギャザー部分に使うことで、紙おむつの素材に占める合繊比率を下げることができる。世界的に環境負荷などでサステイナブルへの意識が高まる中、合繊の機能を代替できる天然由来の生分解性素材として打ち出す。同社ではSDGs(持続可能な発展目標)を事業の理念に据えた。エコリペラスはその一翼を担う素材となる。
〈ダイニック/不織布に意匠性付与/インクジェットの活用で〉
日本不織布産業のパイオニアであるダイニックは、インクジェットプリントで意匠性を高めたニードルパンチ不織布(NP)の提案を強める。自動車の天井材やカーペット用途などが主体となるが、耐久性に問題はなく、市場での注目は高い。新たに商標登録も行うなど、積極的に攻める。
耐久性やコスト抑制などが求められる天井材では、ロータリープリントを施した不織布が求められるケースが多く、インクジェットプリントが用いられることは少ない。同社は耐久性インクと印刷適性の付加によって課題を解決しており、優位点である意匠性をアピールするとしている。
現在は埼玉工場(埼玉県深谷市)に半量産機1台を設置している。自動車関連でのビジネスが本格化すれば「順次増設も行う」(ダイニック)計画だが、当面は1台体制とする。海外拠点への導入も検討する。NPのほか、要望があればスパンボンド不織布でも対応するとしている。
インクジェットプリントを施した不織布には新たにブランド名を付ける。ロゴも作成中で年内の展開開始を目指す。
〈オーミケンシ/「ホープ 極」拡販へ〉
オーミケンシは、レーヨン短繊維のブランド「ホープ」のリブランディングに取り組む。その一環で新たに立ち上げたのが「ホープ 極(きわみ)」シリーズ。同シリーズは長年のレーヨン製造技術の集大成とも言える差別化わたで「レイトス」と「ハイキュビス」の二つがある。
レイトスは単糸繊度0・45デシテックスの極細わたに機能材を練り込んだタイプ。布巾では拭き取り効果が向上するほか、体に直接触れるアイテムでは保水量が多く、肌に密着した時の肌触りが良くなる。繊度は通常のレーヨンわたの4分1に迫る細さ。市場からはフェースマスク用途としての関心が高い。
ハイキュビスはY字断面レーヨンわたに機能材を練り込んだもの。かさ高性に優れ、吸水力、保水量の高さに加え消臭などの機能付加も可能。用途としてはフェースマスクや生活雑貨などでの活用が期待される。
今後も「持続可能性」「エコロジー」「安全性」をテーマに同シリーズの拡充に力を入れる。髙口彰取締役は「レーヨンを超えるレーヨンを作る」と意気込みを語り「これまでにない環境配慮型素材を近い将来、新素材として加える」と話す。
〈レンチング/「ヴェオセル」好発進/サステイナビリティーに対応〉
先の「ANEX2018」で、不織布分野での新たなブランド「ヴェオセル」を発表し好評を博したレンチンググループ。不織布ビジネスの次代を切り開く特別な場となった。ブースには既存のユーザーや取引先以外に、新たなコンタクトとなる約150社が訪れたという。
この中で注目されたのが、日常的に使用する分野に向けた「ヴェオセル ビューティ」「ヴェオセル ボディ」「ヴェオセル インティメート」「ヴェオセル サーフェス」など四つのブランド。とりわけ4級アンモニウム化合物を、クウォット・リリース技術を使用してウエットティッシュの表面に放出することで効果的な洗浄と消毒を可能にした「ヴェオセル サーフェス」への関心が高かったと言う。
同グループは「“ヴェオセル”はクリーンで安全かつ生分解性を有する素材を不織布分野に供給することで、業界のスタンダードとなるサステイナビリティー(持続可能性)に対応する。今後もパートナーやお客さまとともに消費者ニーズを探し出し、衛生的で安全な植物由来の繊維を提供していく」と強調する。