2018秋季総合特集Ⅴ(8)/top interview 伊藤忠システック/「自動化」「環境」が焦点/取締役 営業第一本部長兼繊維機械第一部長 池端 真滋 氏/“頼りにされる”存在へ

2018年11月02日 (金曜日)

 国内の繊維産地で人手不足の問題が顕在化し、新興国では環境規制の強化が一段と進むなど繊維製品の生産を取り巻く環境が大きく変化している。繊維機械商社である伊藤忠システックとして「ユーザーが困っている問題に対して最適なソリューションを提供することで、“頼りにされる伊藤忠システック”であり続ける」と池端真滋取締役は話す。

  ――今後の繊維産業にとって大きなインパクトを与える要素は何でしょうか。

 国内の繊維産業は、いかに“顧客満足度の高いモノ作り”を実現するかが問われていますが、そのための人材確保が非常に難しくなっています。産地企業は今後、ますます自動化・省人化を進めざるを得なくなります。しかし、自動化・省人化というのは言うほど簡単ではありません。新しく工場を建設するなら、自動化・省人化の機構を備え付けた機種を採用することができます。しかし、日本の産地企業の場合、既存の工場の既存の製造ラインに対して自動化・省人化の機構や設備を入れていかなければなりません。そのためには既存設備をカスタマイズする必要があります。そうしたニーズに対応するために当社のような機械商社の役割があります。単純に自動化・省人化の機構・機械を紹介するだけでなく、ユーザーそれぞれの既存設備に合わせた形で改造などの対応も含めた提案が重要になるでしょう。

 もう一つは、やはり“環境”です。新興国では環境規制がますます強化されることでしょう。また、環境規制が厳しいのは日本も同様です。環境負荷の低い繊維機械が求められますし、そういった機種を国内外に提案することが欠かせません。例えば染色機械は世界的に水使用量を減らし、廃水による環境負荷を抑えるために低浴比化が進んでいます。加えて近年では染料価格が世界的に高騰していますから、そのコストを抑えるためにも染液の節約は一段と重要になりました。こうした問題に対して、低浴比の染色機をユーザーに紹介することも必要でしょう。

  ――2018年度上半期(4~9月)の商況はいかがでしたか。

 例年と比較すると、やや逆風でしたが心配するレベルではありません。国内産地への輸入機械の販売は、欧州製の高級機の販売が鈍化していますが、これは想定の範囲内です。設備投資には定期的に需要の山谷があり、ちょうど谷間に来ているだけだと見ています。日本製繊維機械の輸出は例年並みで推移しました。インド向けは現地の税制などの問題で低調ですが、パキスタン向けは紡績機械関連が好調でした。中国向けも全体としては横ばいも、丸編み機の販売が増加しています。

  ――18年度下半期に向けた課題は。

 やはり“頼りにされる伊藤忠システック”であり続けることが重要です。ユーザーが困っている問題に対して最適なソリューションを提案することが必要。そのために国内の産地の状況の分析をさらに深化させ、ニーズを掘り起こすことに力を入れます。また、産業資材分野に向けた機械の提案にも力を入れます。やはり衣料と産資は車の両輪。それぞれに対して欧州を中心とした繊維機械メーカーの最新機種を紹介することと、日本の繊維機械メーカーと連携して開発を進めることが重要です。

 輸出についてはパキスタン向けの好調が続いていますので、商材を拡大させたい。現在は粗紡機、精紡機、自動ワインダー、織機の販売が中心ですが、これ以外の機械に関しても提案を進めます。

〈私のお気に入り/いつも手元に置いておきたい名器〉

 中学1年生の時に始めたギターが趣味の池端さん。単身赴任中でも手元に置いているのがアコースティックギターの名器、ギブソン「J-45」とマーチン「D-28」。週末に自宅で楽しむだけでなく、社内パーティーで演奏を披露したこともあるそうだ。「それぞれ音色が全く違う。J-45は“ガンガン”と音を出せるが、D-28は“キラキラ”した音が出る」と、ギター談義が楽しい。いずれは子供に譲りたいと思っているが、「子供がギターに関心を持ってくれないのが問題」と苦笑い。

〔略歴〕

(いけばた・しんじ)1986年伊藤忠商事入社。北京駐在、上海駐在などを経て2011年伊藤忠システック出向、16年から取締役。