プロミネント〈ベトナム〉/現地生地調達拡大に全力/現状の40%を60%超に
2018年09月10日 (月曜日)
伊藤忠商事繊維事業のベトナム中核拠点、プロミネント〈ベトナム〉の谷衡一郎社長は、「生地の国内調達拡大に全力でまい進する」とし、自社縫製品に占める現地生地の比率を現状の40%から60%超に引き上げる考えを示す。関税メリット享受によるコスト低減やリードタイムの短縮化がその狙い。そのため今後、同国繊維公団ビナテックスとの連携強化やテキスタイル部の活用、グループ連携などを進める。
(ホーチミンで吉田武史)
谷社長によると同国で縫製される全てのアパレル縫製品のうち、自国製の生地を使用する比率(国内生地自給率)は2017年度で36%だった。前年度からテキスタイル課を新設するなどでその引き上げに努めてきた成果もあり、同社では40%で国全体の比率を上回る。政府は60%への引き上げを当面の目標に掲げており、同社の今後の目安もそれを上回ること。そのため今年度からテキスタイル課をテキスタイル部に昇格させたほか、日本から生地事業に精通するスタッフも招いて取り組みを強めている。
今年3月に伊藤忠の香港繊維子会社、伊藤忠テキスタイル・プロミネント〈アジア〉(IPA)を通じて行ったビナテックスへの追加投資も現地生地調達拡大戦略に寄与する。同国には台湾系、韓国系、中国系、現地系の生地メーカーが存在するが、その情報収集に力を発揮するのがビナテックスとの連携。
縫製工場には以前からスタッフを派遣して品質管理に努めてきたが、今後は生地メーカーにも人材を派遣して、納期や品質などを「日本市場対応にレベルアップ」させていく。
生地の現地調達を拡大する目的は縫製品販売を拡大するためで、調達した生地をそのまま販売するケースはほとんどなく、縫製品への供給がメイン。同社の縫製品輸出先は、日本が半分を占め、米国、欧州と続く。中国製生地では対日でAJCEP(日・ASEAN包括的経済連携)の恩恵を受けることができず、欧州やその他国・地域向けでも、発効が見込まれるEVFTA(EU・ベトナム自由貿易協定)やTPP11(包括的および先進的な環太平洋連携協定)の恩恵を受けられない。関税メリットを享受するためにも、現地調達の拡大を急ピッチで進める必要がある。
リードタイムの短縮化という目的もある。社内で「超QR」と呼ぶ取り組みを進めており、その実現のためにも現地生地調達の拡大が必須条件になる。
生地の共同開発も進める。その際に活用するのが、タイ、インドネシアを拠点とするグループ企業との連携で、既に幾つかの新しい生地を開発した。「ASEANを面でとらえて」生地開発を進め、縫製品までの一貫事業を各国の連携によって強化していく。