特集 スクールスポーツウエア(3)

2018年08月20日 (月曜日)

〈菅公学生服/新規採用校の獲得が絶好調/カンコープレミアムに期待〉

 菅公学生服(岡山市)は2019年入学商戦に向け、自社ブランド「カンコープレミアム」などの販売が順調に進んでいる。開発本部の田北浩之提案企画部長は、カンコープレミアムについて「来春の採用が着実に決まってきた。手応えを感じている」と述べ、今後拡販に一段と力を入れる。

 スクール市場では生徒減の影響が避けられない中、同社は自社の「カンコー」ブランドを中心に販売が拡大している。18年入学商戦では、新規採用校の獲得が首都圏や中京、阪神エリアを中心に非常に好調で、仙台や広島、福岡などの地方の中枢都市でも採用校が増えた。「ここ4~5年の中で一番良い結果だった」(田北部長)として、新規採用校数は過去最高を更新した。

 カンコープレミアムは、「体育着本来の機能性能を高め、あえてトレンドに左右されないシンプルさを極めた」ことで他社との一線を画す。軽量化に加え、抜群の防風性と保温効果を兼ね備えており、“長く着られる体育着”として利便性や汎用性にも優れる。

 透け防止機能を持つ「ミエンヌ」や、軽量で通気性の良い織物製ハーフパンツ「ハーフレックス」も売れ筋になりつつある。ミエンヌは通気性に優れた特殊素材により、「汗でぬれた場合にも高い透け防止機能を発揮する」ことから、従来品にない機能性で差別化を図る。ハーフレックスも「サラリと着られて、履き心地も良い」などの織物特有の快適性を訴求する。

〈トンボ/「ヨネックス」千校超目指す/19春向け新商品を多数投入〉

 トンボ(岡山市)は2019年入学商戦、ライセンスブランドの「ヨネックス」で累計採用校数の千校超を目指す。橋本俊吾執行役員営業統括本部MD本部長は、「来春に向けて順調に採用が決まっている」と述べ、新商品の投入でラインアップを拡充し、さらに販売を強化する。

 ヨネックスは来春に向けて多数の新商品を投入。ブランドコンセプトの“パフォーマンスの向上”に原点回帰し、高級感を高めたモデルを打ち出した。自社で設備を持つ昇華転写プリントを活用した多彩なデザインに加え、ハーフジップタイプなど、ウエアの種類も拡充する。発表以降、「引き合いが増えている」(橋本執行役員)ことからさらに販売に勢いをつける。

 18年入学商戦は、自社ブランドの「ビクトリー」やヨネックスで新規採用校の獲得が260校を突破し、過去最高を更新した。ヨネックスは年々、販売が増えていることから累計採用校数も900校以上に拡大する。昇華転写プリントにより、「デザインが非常に充実している」ことで、人気が高まっている。

 同社の昇華転写プリントは生地の全面加工に対応できるため、デザイン面で優位性を持つ。色彩の再現性も非常に高いことから、要望に応じて「学校独自の“らしさ”を表現できる」メリットがある。

〈明石SUC/「デサント」人気が高まる/累計採用2千校超の大台へ〉

 明石スクールユニフォームカンパニー(明石SUC、岡山県倉敷市)は2019年入学商戦に向け、ライセンスブランド「デサント」の新規採用校の獲得が順調に進んでいる。前田健太郎営業本部スクールスポーツ部長は、「20年の東京五輪の年には累計採用2020校を目指す」と述べ、大台の2千校突破に向けて勢いを加速する。

 18年入学商戦では、デサントの新規採用校の獲得は200校を突破、累計採用校数は1700校を超えた。スクールスポーツ部としても18年5月期は前期比8%増収の見通し。デサントが人気の理由の一つには、「安定した供給体制」(前田部長)がある。昨年末に拡張した宇部テクノパークアソートセンター(山口県宇部市)の2次加工施設なども生産性を高め、安定供給に貢献している。

 18春では、プレミアムラインの「エクストラモデル」からスタンダードな「ベーシックモデル」まで全ラインの販売が順調に進み、「全体的に底上げができた」と話す。来春に向けて新商品も投入、「エキスパートモデル」からは部分的に昇華転写プリントを使ったデザイン性の高いモデルを打ち出す。

 アスリートのパフォーマンスを向上するブランドとしてデサント本体への信頼感が、「販売の追い風になっている」ことから、今後もスクールスポーツ市場での存在感を一段と強める。

〈ギャレックス/新規獲得校数は200校突破/来春に向け新商品投入〉

 ギャレックス(福井県越前市)は2018年入学商戦で、自社ブランドの「ギャレックス」を中心に新規校の獲得が200校を突破した。田中誠一郎スクール営業グループグループマネージャーは、「生徒数の減少の影響はあるが、採用校の獲得は堅調だった」と話す。

 昨年、一部スポーツ専業メーカーが事業を縮小したこともあり、スクールスポーツ市場ではモデルチェンジ校の獲得に向けた動きが各社で活発化している。来入学商戦でも「まだまだ伸ばす余地がある」(田中グループマネージャー)として、機能性やデザイン性を高めた新商品の投入で、新規校の獲得に弾みをつける。

 主力の自社ブランド「ギャレックス」は新たにブランドのロゴを刷新。ブランド力を高め、「今後の拡販につなげる」考えだ。売れ筋の軽量・高防風性素材の「ウィンドバスター」を使った新ウエアをはじめ、体操服には珍しいカラー杢(もく)を取り入れるなど、新たに3品番を開発した。

 ライセンスブランドの「フィラ」「スポルディング」でもデザイン性を高めたアイテムを打ち出していく。フィラでは女子に人気の高い“ビックロゴ”を採用した。スポルティングはプレミアムをコンセプトに、高級感のあるシンプルなデザインの高機能ウエアを投入する。

 映画やドラマなどで同社のウエアが使われる機会が増えていることから、ブランド認知度の拡大にも力を入れる。

〈ユニチカメイト/体育衣料で「プーマ」に手応え/150校突破に向け販売を強化〉

 ユニチカメイト(大阪市中央区)は、ライセンスブランド「プーマ」の売れ行きが好調だ。2014年の販売開始から「計画通りに採用校の獲得ができている」(清水義博社長)ことから、「20年4月には累計採用校数150校突破」に向け、確実に販売を伸ばす。今春は大型物件採用もあり、プーマブランドを中心に「新規採用校の獲得が順調に進んだ」(清水社長)。特に首都圏や南九州などで販売が堅調で、「ブランドの認知度向上に手応えを感じる」。一方で北九州や中京圏などの「人口や学校数が多い地域へはまだまだ入り込めていない」と、販促に力を入れる。

 高校などでは「ブランド衣料を採用する傾向が高まっている」ことから、世界的スポーツブランドのプーマはブランド力で優位性を持つ。ユニチカ独自の機能素材との組み合わせで、体育衣料に「より高い付加価値が生まれる。他にない商品として支持につなげたい」と話す。昨年女子生徒向けのレディースラインを発売。「プーマは女性ファンが多い」ことから、今後の拡販に弾みをつける。

 生産面では小ロット対応の強化を掲げ、「国内の協力工場と連携しながら設備投資や更新を進めていく」と話す。要望への柔軟な対応力で新規採用校の獲得につなげる。

〈児島/機能向上の“実感”で市場開拓/独創性の高さで違い出す〉

 児島(岡山県倉敷市)は2018年入学商戦、生産がスムーズに進み、「納期への対応がしっかりとできた」(山本真大副社長)ことで順調に販売が進んだ。ただ、今年は市場全体で新入生が大きく減少し、来年以降も影響が続く可能性があり、独創性を持った商品開発で他社との違いを出しながら縮小する市場でも売り上げの維持、拡大に努める。

 2年前から制服、学販スポーツ向けに「安心・安全・愛」をテーマにデザイン性や視認性を高めた商品開発に取り組んできた。今年7月に開いた展示会ではサブテーマ「タッチアンドトライ」として「触って、試して」みるような点を重視した商品をそろえた。「触って、試すことでより実感してもらえるような機能の向上で市場開拓につなげたい」(山本副社長)との狙いがある。

 既に昨年、東洋紡と共同開発した素材「速衣(はやい)」を使ったウエアを参考出品していたが、反響が大きかったことから、来入学商戦に向けて本格的に販売に乗り出す。洗濯、脱水後から着用できるまでの時間が約40分と短く、夜に洗い忘れ、朝洗濯して干しても学校に持って行けることをコンセプトに取り扱いやすさを訴求した。

 他にも透け防止や通気性、ストレッチ性、防風性、軽量化など既存商品と比べて実感できる機能性の向上をうたった商品を拡充した。

 デザイン面でもトレンドのデニム調素材を使った体操服を開発。アシンメトリーでスタイリッシュな印象のウエアを増やすとともに、生地の切り返し部分に視認性の高い生地を入れ込み、安全性を高める工夫を凝らす。

 独自の企画力でニーズやトレンドに応じた商品開発を進め、「販売代理店と“二人三脚”」で、学校に向けた販促を強化する。

〈ミズノ/営業・提案力で生徒数増へ/学校の魅力を高める〉

 ミズノは、2019年入学商戦に向けての体操服の新商品はないが、営業力と提案力を強化し、新規物件獲得に力を入れる。少子化により市場が縮小している中、学校の魅力を高めて生徒数を確保することで売り上げの維持、拡大につなげる。

 このため高機能な体操服の需要は高まっているとし、スポーツ用品開発で培ったノウハウをスクールスポーツウエアに応用、シェアを拡大していく。

 生産面での強化については、海外生産と国内生産を最適なバランスで組み合わせる施策を継続することで安定したモノ作りを行う。

 18年入学商戦では入学生向けに意匠性の高い新商品を投入。ツートンカラーで、大胆な切り返しによる左右非対称のデザインが特徴のアシンメトリーのトレンドを反映した。

 機能面では、スポーツメーカーらしく独自のカッティング「ダイナモーションフィット」を採用。消臭機能を持つデオドラントテープも特色とした。

 18年入学商戦の結果は、「前年比1桁%台の増収だった。他社からの切り替えが増加し、獲得できなかった物件も含めて考えると体操服の変更をする学校が増えていると感じる」と言う。

 ミズノは、ファッション性とスポーツを融合した意匠性の高いスクールスポーツウエアの企画・開発に力を入れている。そうしたことにより新たな学校での採用を増やし、継続的な売り上げ拡大を目指す。

〈ゴールドウイン/進化する「スクリート」/研究施設の技術生かす〉

 ゴールドウインはスクールスポーツブランド「スクリート」の「Vライン」「Sブロック」シリーズを軸に提案する。スポーツメーカーの技術力を生かしたカッティングと素材使いで差別化を図る。二つのシリーズは昨年、軽量化しシルエットを見直した。成長期はウエアのゆとりが必要だが、新シリーズはストレッチ性に優れた素材を使い、細身のシルエットに仕上げた。ボリュームを抑えた分、動きやすいメリットがある。

 ゴールドウイン販売2部の田邉将伯スクール販売グループマネージャー(GM)は「他社にはないデザインで、特にSブロックシリーズは実績が高い。2019年以降も中学、高校をターゲットに売り上げ拡大を狙う」と話す。

 少子化の影響を受け、18年入学商戦の採用校は、新規獲得校と他社への変更を含め、前年比で約10%減少した。田邉GMは「ブランドの移行がスムーズに行えなかった」と振り返る。特に地方の公立高校の募集定員減少が響いたという。

 19年以降の商戦では、人口が多い関東、関西、中京地区に加え、地力のある北信越を重点地域に位置付ける。ゴールドウインは17年11月に富山県小矢部市に最先端技術を備えたスポーツウエアの研究開発施設「ゴールドウイン テック・ラボ」を開設した。田邉GMは「スクールスポーツウエアは継続させることが重要だが、進化も必要。テック・ラボを活用し、価値を持った製品を発信したい」と前を見据える。

〈磐梨中学校/体操服に先進的なデザイン/キャリア教育で体操服を活用〉

 赤磐市立磐梨中学校(岡山県赤磐市)は2015年、約40年ぶりに体操服を刷新した。新体操服は、菅公学生服(岡山市)と岡山南高校(同)との「岡山南高校服飾デザイン科 産学連携実学体験プロジェクト(MPS)」を通じて開発された。導入から3年、先進的なデザインの体操服が地域のトレードマークになりつつある。

 岡山市内から車で40分、のどかな田園風景が広がる中に磐梨中学校はある。全校生徒数は約170人で、全国大会にも出場経験のある柔道部や県内でも珍しいホッケー部があるなど、部活動にも力を入れている。

 新体操服はMPSの一環で岡山南高校の学生がデザインを考案し、磐梨中学の生徒や地域の人たちによる人気投票で決定した。メインカラーのサックスブルーが爽やかで、他中学にはないおしゃれなデザインを採用。着心地も良く、通気性や速乾性などの機能も充実することから、生徒だけでなく保護者にも好評のようだ。「学校全体が明るい雰囲気になった」「生徒たちのモチベーションにも寄与した」などと、波及効果も生む。

 今年は全国的に猛暑日が続くため、学校現場でもさまざまな暑さ対策に取り組んでいる。同校では体操服での登下校を許可し、生徒自身が体調や状況に応じて制服か体操服かを選択できる。「暑さに対応する体操服があれば」と、開発を要望する声も聞かれた。