特集 染色加工(4)/染色加工技術を生かし、変化に対応/コスト上昇を乗り切る術とは
2018年08月30日 (木曜日)
〈三部門一元化で対応力アップ/生産体制を柔軟に組み替え/大阪染工〉
大阪染工(大阪府島本町)は、無地織物染晒し、捺染、ニット液流染色の3部門の開発・生産管理を一元化し、各加工品種の需要変化に応じて、部門間で柔軟・迅速な人員配置が行える生産体制を整える。
当面は織物加工の人員増強に振り向け、ワーキングユニフォーム向け加工の旺盛な需要に応える。生産能力増強と併せて、その時々の生産余力に応じた納期把握も徹底し、受注集中期でも、正確な納期回答が可能な体制も整備。「生機投入後4泊5日の標準納期の“達成率80%”を改めて目指す。納期の正確な見える化は社内・取引先双方にメリットとなる」と橋場健次社長は言う。
同用途向け受注は数年にわたり好調で、月産約100万メートルの織物加工能力でフル稼働が続く。柔軟な能力増強と納期管理厳密化で、さらなる需要取り込みを狙う。
受注に勢いを欠くニット染色も反転に備えて技術レベル向上が著しい。直行率は9割を超え、白度管理力が特に向上。コスト構造が改善した。
これと併せて、新規開拓で武器とするのが、3部門で対応可能な綿100%品へのスレン染色。「耐塩素性を考慮すればリネン類も含めた汎用性が期待できる」ため、衣料に限らず多分野で提案強化する。色の再現率も「反応染料並みの水準に向けて今後もトライを続ける」。
〈好評の新加工をインナーへ/関東圏・化合繊開拓にも力/飯田繊工〉
飯田繊工(大阪市東淀川区)は、今春提案を始め、アウター用加工で好評な新加工を今後、インナー分野へも横展開する。関東圏、化合繊がらみの新規開拓も引き続き強化する。
今春から打ち出した「キール」「シードル」の両加工は、繊維を改質し、奇麗めの表面感とともに柔らかさやハリ感も加える風合い加工。アウター加工では、今秋冬向けでも既に取り組み先のニッターが大手アパレルへの採用を決めている。加工試験を行った大手インナーアパレルが好反応を示しており、今秋冬向け加工で伸び悩んだインナー分野の反転攻勢の鍵に位置付け、来春夏向けで採用につなげる。
名阪の生地商社への提案強化に加えて、関東圏のニッター、コンバーター向けの提案営業にも引き続き力を入れる。今秋冬向け加工でも5社前後の新規先を獲得。「全自動化設備による品質安定性に加え、大口をこなせる地場染工場減少でニーズはまだまだある」と片平晴夫社長はみている。
介護やメディカルなど資材分野の開拓にも取り組む。北陸産地のスペース不足を背景として同社に「レーヨンのほかキュプラなども含めて化合繊がらみのややこしい仕事が回ってくる機会も増えた」。それを機に合繊メーカーとの関係も深まり、既に加工テストも行っている。
〈情報共有し新規開拓で連携/両社で設備増強も/吉田染工/貴志川工業〉
吉田染工とグループ会社の貴志川工業(ともに和歌山県紀の川市)は今後、両社の連携を密接化し、連携による新規開拓を積極化する。それぞれ設備増強にも取り組む。
昨年6月、東京での合同事務所開設以降、在京アパレルへの直接営業など連携による新規開拓は加速。吉田染工が継続出展する「ミラノ・ウニカ」での展示生地を糸口に、東京でフォロー商談を進めるケースも出てきた。自販用横編み地をベースにした生地OEMも増えており、産地内外のニッターの紹介を絡めた、自社の糸染め・生地染めの一貫提案も進展する。
今後、本社でも連携会議も定期的に開催し、分野を問わず両者の取り組み先共有の機会を増やし、新規開拓の糸口とする。
貴志川工業では合繊100%素材の加工も増えており、北陸産地の加工スペースのタイト化を見越して、化合繊絡みの受注増に備える。衣料向けのトリコット素材やキュプラ使いの試験加工も既に多数舞い込んでいる。
貴志川工業では来年の年明け前後に丸胴生地用シルケット加工機の更新を計画する。現在の2台を小寸から大寸まで対応する新型機1台へ集約し、インナー用途など新分野攻略にも活用する考え。大半の加工を賄う開反用加工機も部品を順次入れ替え機能増強を図る。吉田染工では産地のワインダー業者減少に対応し、染色後の後巻き工程の内製化を進めていく。
〈品質向上へ設備投資継続/別注、白衣で受注拡大/サカイナゴヤ〉
サカイオーベックス子会社で、ユニフォーム地の染色加工を行うサカイナゴヤ(愛知県稲沢市)は2018年3月期、品質向上と、別注ユニフォーム向け受注増や白衣向けのトリコットの好調から3期ぶりに水面浮上を果たした。
同社はワーキングウエア、学生服、白衣などユニフォーム地の染色加工の受託が大半を占める。今期も受注は順調で4~6月は前年を上回る水準にあり、上半期は前年同期比3・5%増の加工量を見込む。
下半期は前年同期が好調だっただけに受注はやや落ち込む見通しながら、本体の繊維販売事業と連携した別注ユニフォームや白衣向けトリコットの受注拡大に力を入れる。一方で、染料価格の急騰はじめ製造コストの上昇により収益が圧迫されていることから「一律では難しい面もあるため、加工別に料金改定に取り組む」(山内進一社長)方針。人材確保難や育成も重点課題に挙げ、省力化、自動化投資も検討する。
同社はこの2年半、品質向上によるロスの削減に取り組んできた。前3月期にはシステム関連の投資により加工データを“見える化”する一方、染色機3台を更新するなど設備面の充実を図った。今期も既に染色機4台を更新しているが、「まだ老朽化設備が4台ある。来期以降、順次更新を進める」と言う。
〈安定化へ用途広げる/「染色改革」でコスト削減/ソトー〉
ソトーはコアである染色加工事業の安定収益基盤の確立とテキスタイル事業の収益改善に取り組む。染色加工事業は繁閑差を是正し「年間を通じて安定した加工数量を維持することが重要」(上田康彦社長)とし、主力のファッション衣料だけでなく、ユニフォーム、スポーツウエア、インナーへ領域を広げる。これまで取り組んできた戦略だが、さらに強化する。
戦略加工の一つがポリエステルの風合い加工「Eエステ」。ウール・ポリエステル混の複合素材にも対応でき、ファッション衣料だけでなく、スポーツ、ユニフォーム向けにも提案。吸水性や速乾性など機能加工も複合し訴求する。領域拡大の一環として「染色改革」と名付けるコスト削減にも取り組む。
テキスタイル事業は織機、編み機を保有するソトージェイテック(岐阜県輪之内町)で尾州産地企業からの受注も行いながら稼働率向上。ファブレスの事業は得意分野に特化する。ベトナム事業は収益改善に「まだ時間がかかる」見通しだが、品質向上とコスト競争力の強化に取り組む。
一方で、ウールの良さを消費者に訴求する試みとして今年4月、楽天市場に出店し初のネット販売にも乗り出した。店舗名は「WOOLOOP」。アイテムはウール100%による枕パッドとピローケースで、価格はそれぞれ3千円。
〈新規受注へ生産体制整備/インクジェット1台増設/コーテック〉
ロールスクリーンなどのインテリア、衣料資材、産業資材向けの染色加工を行うコーテック(岐阜県大垣市)は2018年5月期、売上高が前期比横ばいながらコスト上昇が響き減益だった。今期はインテリアや産業資材の新規受注に力を入れる一方、コストがさらに上昇するため、加工料金への転嫁にも取り組む。
既に衣料資材向けは年初から加工料金改定を交渉し、今春妥結。インテリア用は今春から交渉を開始しており、徐々に改定が進むが「染料価格が急騰しており、運賃の上昇もあり、今後、さらに加工料金の改定を考える必要もある」と小野浩一取締役営業部長は言う。
一方で、新規受注に向けて生産体制も整備した。インテリア向けはカーテン新柄の受注に対応し、今年3月に昇華分散染料使いのインクジェット捺染機を増設した。これにより昇華分散染料2台、水性顔料3台体制となった。産業資材用では3・6メートルの広幅テンター(従来は3メートル)を導入しており、これを活用して織物、不織布での新規受注の獲得を目指す。
自主販売するファブリックステッカー「ペタテック」はホームページ(peta-tec.com)をリニューアルし、本格化を目指す。自社サイトの他、ヤフーショッピングやハンドメードマーケットのminne(カットデザインのセット販売のみ)を通じても販売する。
〈ロボットスーツで領域拡大/受託は個別に、料金改定/艶金化学繊維〉
丸編み地染色加工の艶金化学繊維(岐阜県大垣市)は2018年度上半期(1~6月)、受託の染色加工で前年同期並みの数量を確保する一方、自主販売するロボットスーツは前期比10%増収だった。
受託加工は婦人服向けが低調ながらスポーツ、ユニフォーム向けでカバーした。しかし、カセイソーダに加えて染料価格も高騰するなど製造コストが上昇するため、19春夏向けから新マークはコスト上昇分を加味するなど、個別に加工料金の改定に向けて交渉する。
ロボットスーツは今年1月ホームページをリニューアルした効果もあり「今まで知らなかった企業からホームページを通じて問い合わせが増えている。主力である自動車の塗装ロボット向けだけでなく、裾野が広がっている」と墨勇志社長。今期目標の1億円強(前期は約9千万円)を上回る可能性も出てきたと手応えを示す。
ロボットスーツは産業用ロボットを塗料ミスト、切削粉、水分、油分、熱などから保護し、トラブルの軽減や清掃時間の短縮などのメンテナンスを軽減する丸編み地製品。当初は自動車の塗装ロボットのアーム部分などを覆うタイプだけだったが、金属部品の切削用に撥水(はっすい)・撥油(はつゆ)加工を施したクーラント対応品や、メタ系アラミド繊維を使い熱間鍛造に使用できる耐熱対応品など品種も拡充する。
〈将来に備え基盤強化/コスト上昇対応が課題/尾張整染〉
カーシート地の染色加工を主力とする尾張整染(愛知県一宮市)は2018年、本社工場と石川工場(石川県能美市)で、液流染色機を1台ずつ増設した。今春は久しぶりに新卒採用を行うなど将来に備えた基盤整備へ各種投資を実施する。
現在、本社工場で月産90万~95万メートル、石川工場は95万~100万メートルの規模を維持する。カーシート地以外ではカーテンなどインテリア用が苦戦するも産業資材向けの開拓が進むなど「この2~3年でカーシート地以外の需要家が増えており、裾野は広がっている」と、力を入れる新規の用途開拓が進む。
産業資材向けの開拓に向けては11月7~10日、ポートメッセなごや(名古屋市港区)で開催される異業種交流展示会「メッセナゴヤ2018」に今年も出展を予定する。
しかし、今期(19年3月期)売上高は前期並みを確保できる見通しながら、原燃料価格が上昇しているため、減益となる可能性が高いと言う。
エネルギー費だけでなく、特にカーシート地などに使用する耐光性に優れたアントラキノン系分散染料が急騰していることが大きい。
中島俊広取締役車輌インテリア事業部長兼総務部長は「染料価格の上昇への対応は今期の大きな課題になる」と位置付ける。加工料金への転嫁を需要家へ打診し始めていると言う。
〈初の中期経営計画策定/染料急騰分の価格転嫁へ/岐セン〉
岐セン(岐阜県瑞穂市)は2018年度(18年4月~19年3月)から3年間の中期経営計画「GISEN・イノベーション2020」を策定した。同社の中計策定は「初めて」(後藤勝則社長)で、最終年度の20年度に単体売上高で35億円(18年3月期は31億円)を目指す。
4億円(12・9%)の増収計画であり、受託の染色加工で新規顧客の開拓、非衣料分野の強化に取り組むほか、テキスタイル販売事業、木材染色事業の拡大を見込む。テキスタイル自販は前3月期の約1億4千万円強に対し、3年後3億円が目標。北陸産地の機業と協業によりポリエステル長繊維複合のファッション素材やユニフォーム地に力を入れる。
木材染色は約倍増の1億円を目標に掲げた。自動車内装材用を主力に開発を進めるとともに、産業技術総合研究所と取り組む木材成型品も20年に量産化したいとの考えを持つ。
今期はファッション衣料の起毛加工が順調で、ニットも回復傾向にあり、人工皮革も6月後半からコンシューマーエレクトロニクス向けが復調した。19春夏向けもトレンドに合致した麻ライクな加工に引き合いがあるが、製造コストが上昇する。
レイアウトの見直しや省エネ投資、不良品発生率の削減など生産効率の向上を図る一方、順次浸透させた加工料金の再改定も行う。
〈環境に左右されない体制/異業種に染色技術訴求/茶久染色〉
チーズ染色を主力とする茶久染色(愛知県一宮市)は今期(2019年3月期)、アントラキノン系分散染料の急騰など製造コストが上昇する中で加工料金の改定の交渉も行いながら「外部環境に左右されにくい事業体制の構築を進める」(今枝憲彦社長)方針だ。
具体的には異業種に染色という技術を生かしながら新たな可能性を訴求することで、従来とは異なる商品や用途の展開に力を入れる。その一つが伸縮性と自着性を持つ不織布を使用した配管用テープ。同テープは配管の接続部分に巻き、配管漏れがあった場合、色が茶から白に変色。目視で確認できる特徴を持つ。酸性タイプからスタートし、アルカリ性にも対応できるタイプも商品化した。
この不織布を染色した製品を展示会などで提案していたが、その際に他の加工もできないかとの要望があり、異業種との共同開発に至ったと説明する。
従来とは異なる商品、用途ではポリエステル長繊維にカーボンナノチューブをコーティングした導電糸「Qnac」シリーズにも力を入れる。電線用に適した「Qnac―S」は本格化に時間がかかる見通しだが、電気を通すことでヒーターとして使える「Qnac―T」は各種案件で開発が進んでいるという。
今期の受注量は前年を上回っており、特に産業資材用は前年同期比10%弱の伸びという。
〈染料急騰で料金改定へ/受注回復も生産面課題/オザワ繊工〉
チーズ染色、綛(かせ)染めが主力のオザワ繊工(愛知県一宮市)は18秋冬向けの受注が前年比約10%増と一昨年並みの水準まで回復した。
受注が堅調な一方で、今夏は猛暑などにより外注による綛染め後の紙管巻き取りの生産が落ち込み、納期遅れも生じるほか、染料急騰など製造コストが上昇。生産面での対応と、収益の確保が課題とする。
外注の綛染め後の紙管巻き取り量減少の対策としては新規外注先の確保と、内製化の能力増強を検討。収益の確保策としては10月出荷分から加工料金の改定を進める。
小澤俊夫社長は現在の染料急騰は「異次元」と述べ、10月出荷分からチーズ染色と綛染め、そして、昨年来2度にわたって値上がりしたカセイソーダを使うシルケット加工、それぞれに分けて加工料金の改定を進める。
元々、製造コストの上昇から、加工料金の改定交渉を今春行い、6、7月出荷分からの値上げをいったん妥結していたが、さらに染料価格が高騰したため「仕切り直して、再交渉を始めた」と言う。
同社は「平成29年度省エネ大賞」の省エネ事例部門で経済産業大臣賞(CGO=環境担当役員・企業等分野)を受賞するなど省エネ対策に定評がある。引き続き各種コスト削減に取り組むものの、今回の染料急騰はカバーし切れないと判断し、加工料金を改定する。
〈変化対応へ自販強化/今期も受注は好調推移/みづほ興業〉
染色整理加工のみづほ興業(愛知県一宮市)の2019年2月期は前期に引き続き受注好調で推移する。前期も「繁閑差がなかった」(水谷常夫社長)状況だったが、今秋冬向けも加工が10月までずれ込むほどの状況にある。ただ、「常に市況は変化する。その変化に対応するためにも、自販を強化する」。
テキスタイルの自販はインパナ事業部が手掛ける。現状は全売上高の15%にとどまるが、30~40%を目標に掲げる。16年から一宮地場産業ファッションデザインセンターブースで、イタリアのテキスタイル展「ミラノ・ウニカ」(MU)に出展するのもその一環。「MUでも初年度から引き合いがあり、今年も成果に結び付いている」と手応えを示す。自販を強化することで「他産地やアパレルとの取り組みによる開発が進み、受託加工にもプラスに働く」との考えもある。
一方で、今期は各種製造コストが上昇する。このため「より一層の改善・改革を進めて、コスト上昇の影響度を下げる」とし、工場内レイアウトの変更を進めるほか、ボイラーもA重油から天然ガスに転換した。同時に「独自性のある、より付加価値の高い加工を拡充する」重要性も強調。泡加工「リ・ボーン」や水流縮絨「リファイン」などの独自加工を機械メーカーと取り組んで加工機から開発するが。今後も新加工の開発を推進する。
〈素材、用途 幅広く/衣料向け以外の加工も/東海染工 浜松事業所〉
東海染工の浜松事業所は、綿や合繊複合織物の無地染めから捺染まで幅広い加工を手掛ける。ここ数年はファッション衣料だけでなく、ユニフォームや資材向けへ加工を広げており、現在は売上高の7割ほどを占める。
加工の準備工程から仕上げまでの一貫が強み。現有設備は無地染めが液流染色機、連続染色機、捺染がロータリー、フラットスクリーン、ローラーの3機種。4月から新たな水洗漕が稼働しており、生産性の向上を図った。
さらに、今上期中にはカセイソーダの濃縮装置を導入する。シルケット加工などで使われた、水やカセイソーダなどが混ざった排液を、カセイソーダだけ取り出して再び使えるようにする。そのため、カセイソーダの購入量を減らすことができ、コスト削減につながる。
3、4年前に開発した「現代」加工は、同社の人気商品の一つ。綿などの天然繊維の織物をハリ感のある合繊タッチにする。あえて合繊タッチにすることで、カジュアルな衣料に適している綿などをエレガンスな雰囲気に仕上げることができる。
綿・シルクの混紡糸使いや綿・レーヨンの交織、ポリエステル100%など、これまで得意としていなかった織物の染色加工も手掛け始めた。ファッションやユニフォーム向けに透け防止の加工も開発している。
〈仕上げ機導入へ/受注増や品質向上狙い/艶栄工業〉
艶栄工業(愛知県蒲郡市)は、乾燥機関連の仕上げ機を1台導入する。「SHS加工」の受注増への対応や品質向上を図ることが目的。今期(2018年11月期)までに発注し、来年4~5月に工場に配置する。
最新鋭の機種で、3台の乾燥機を組み合わせたバイオーダー品。生地にストレスをかけずに、素材本来の持ち味を生かした乾燥をできるのが特徴。既存の染色機の生産能力も上昇するという。総額2億円を投じる。
SHS加工はカーテン地などのインテリア向けで、糸の収縮により立体感を出し、独特の膨らみ感を付与する。数年前から好調が続いている同社のヒット商品。嶋田義男社長は「仕上げ機を入れることで、SHS加工もパワーアップする」と話す。
同社は5カ年計画に沿い、近年は積極的に設備投資を行ってきた。高圧液流染色機や水洗漕、ボイラー、排水設備などの増強を実施。「きちんとしたモノ作りができる環境はできてきた」と話す。
人材の確保にも力を入れており、16年には鹿児島県にリクルート事務所を設置。嶋田社長が九州の高校を定期的に訪問してきた。さらに、従業員の賃上げも実施するなどして福利厚生も整えた。
「今の5カ年計画はほぼ予定通りに来ている」と語る嶋田社長。2020年には新5カ年計画も策定する。
〈技術力と納期対応に強み/新ピーチ起毛で通年対応/田所起毛〉
起毛加工の田所起毛(愛知県西尾市)は本社工場で起毛加工を行うとともに、岐阜事業所(岐阜県輪之内町)で先染め・整理加工と起毛加工を手掛ける。
起毛加工は起毛機の設計、起毛方法の特許を約30件取得するなど独自ノウハウを持ち、その高い技術開発力には定評がある。それを生かして春夏向けでも起毛した毛羽を刈り込んだ「ハイカット」加工、磨きを掛けた「ハイポリ」加工を開発するが、さらに盛夏も可能なオールシーズン対応の新ピーチ起毛「ハイクール」を「今年から本格訴求する」(田所勇会長)。
技術的な側面だけでなく、納期管理の徹底も同社の特徴。その強みが生き、岐阜事業所の受注も堅調で「10月までスペースが埋まっている」(河口洋二社長)と言う。
岐阜事業所では内需向けに加え、韓国輸出向けもけん引する。韓国向け輸出はパンツ地の2ウエーストレッチ素材の加工だ。
綿の2ウエーストレッチ素材でも30%という高い伸長性とキックバック性に優れた高難度の加工も手掛ける岐阜事業所。この技術力と納期対応によって需要家から高い信頼を得ている。それを表すのが加工単価。7~8年前に比べて平均20%以上上昇した。今後も付加価値のある加工に重点を置く。
〈新機能加工を開発/設備も積極更新/鈴木晒整理〉
遠州産地の染色整理加工、鈴木晒整理(浜松市)は、綿、セルロース系繊維の風合い加工に加えて、イージケア性を訴求した「クリーズケア」、アレルギー反応を抑制する「アレルアタック」を開発するなど機能性も兼ね備えた加工を強化している。ネット市場への訴求力を高め、スポーツ、ユニフォーム、寝装品用途向けからも受注の拡大を図るのが狙い。
昨春に開発したクリーズケアは、天然繊維、複合素材を対象にW&W性、シワの回復性、速乾性が向上する多機能加工。合繊の機能を同社独自の加工で補った「環境配慮型の商品」として訴求する。
今春、PTJで発表した新加工のアレルアタックは、アレルギー症状を引き起こす原因物質(アレルゲン)の働きを沈静化させアレルギー反応を抑制する。即効性があるのが特徴で洗濯耐久性にも優れている。7月には地元の浜松市から衛生分野での健康衣料の開発コストとして補助金も交付された。今後、インフルエンザなど抗ウイルス加工の付与にも取り組む。
同社は6年前から染色の前後工程も含めた既存設備の更新も積極的に推進。本年度上半期(9月期)には最新鋭のガス毛焼機を導入した。これまでの総費用は多額となっているものの、一部を政府の「ものづくり補助金」、静岡県の「経営革新補助金」で賄った。今期末にはシルケット加工機を更新する。