特集 2018秋冬オフィス&サービスウエア(2)/経営陣に聞く 戦略と課題

2018年07月03日 (火曜日)

〈サンペックスイスト 社長 宍戸 典之 氏/デザインに新しい風〉

 2019年2月期はオフィス、サービスウエアを担当するデザイナーや自社工場の人員を増やし、製品の質を上げる。18年2月期のユニフォーム全体の売上高は前期比5%減でオフィス、サービスウエアが伸び悩んだ。

 特徴ある商品が企画できなかったという反省から、今期は一般アパレルのデザイナー3人を採用した。オフィスウエアに2人、サービスウエアに1人増員し、ユニフォームの枠にとらわれない企画につなげる。

 商品の管理体制も強化している。群馬県と埼玉県にある物流センター内に検品場を立ち上げ、メーカーとして責任あるモノ作りにつなげる。7月には自社工場にベトナムの技能実習生5人を迎え、生産体制を充実させる。地方は人手不足が深刻だが、少しでも歯止めをかけられるよう踏ん張りたい。

〈住商モンブラン 社長 長尾 孝彦 氏/商品の中身新たにシェア拡大〉

 2018年5月期は売上高が前期比6%増の123億円だった。飲食・サービス業向けウエアが伸び悩むとともに今年1月の大雪で想定よりも1億円強の売り上げが減ったが、小口の案件に支えられ、食品工場用白衣と介護・メディカルウエアは順調に伸ばした。

 食品白衣はHACCP(ハサップ)の法制化やレンタル向けが好調で前期比30~40%の増収で事業の3本柱の一つに育ちつつある。介護・メディカルウエアもライセンスブランドの「ローラアシュレイ」「アシックス」「ジュンココシノ」もそれぞれ40%の増収と大きく伸ばした。

 今期は売上高133億円を計画する。18秋冬から飲食業向けの「ブランシェ」や「ジュンコ ユニ」といった新ブランドの販売を本格化する。今までのやり方を踏襲しながら、商品の中身を新たにしてシェアを広げていきたい。

〈ボンマックス 社長 外川 雄一 氏/インバウンドに期待〉

 オフィス、サービスウエアとも2019年1月期の上半期は確実に数字を取れたので、下半期もこの勢いを維持したい。外国人観光客が増え、ホテル業を中心にリニューアルの動きは出ている。

 ここ数年、オフィスとサービスウエアの境界がなくなってきている。業種も車のショールームや金融機関、住宅展示場など多様化している。顧客の声を商品に生かす。

 オフィスウエアでは、業界初の裾を楽に上げることができるパンツを企画した。短期雇用の従業員が多い職場を中心に提案したい。見た目はウールライクだが、簡単に手入れできるウエアも開発した。

 サービスウエアは、耐久性が高い素材「コーデュラ」のスーツシリーズを男女ペアで展開する。求人効果がある「リー」も飲食店向けにバリエーションを充実させる。

〈アイトス 社長 伊藤 崇行 氏/総合力をもっと生かす〉

 本年度上半期(2018年1~6月)の売上高は前年同期比横ばいになりそうだ。3月以降カタログ定番商品を中心に販売が堅調で、1、2月の落ち込みをカバーした。在庫も主力商品は十分確保し安定供給に努めている。

 今年から「業種会議」を立ち上げ、さまざまな業種についての情報の集約と共有を強めることで商品企画の精度を向上させている。販売傾向を見ても他社にない特長を持った商品の売れ行きが良い。一方で総合力の“うたい方”がまだまだできていない。総合力をもっと生かす方法を考えるとともに、20年の東京五輪のユニフォーム需要拡大を見据え幅広い商品開発に取り組む。

 下半期はこれからの販売に期待できる新商品が充実している。通期(18年12月期)は売上高205億円(前期197億円)を計画するが、少なくとも200億円には戻したい。

〈カーシーカシマ 常務 増田 庸佑 氏/メンズスーツを定番化〉

 2018年7月期の売上高は例年並みになる見通し。分野別ではサービスウエアが好調で10%ほど伸びており、幅広い業種から受注がある。秋冬から、ホテル向けにイージーオーダー対応のメンズスーツを定番商品として扱う。

 男女ペアの提案に力を入れ、夏に刷新するソフトワークウエア「キャリーン」もユニセックスなデザインを意識している。今後も男女で提案できる商品を増やしたい。

 19年秋に予定されている消費増税では、駆け込み需要に対応できるよう、売れ筋商品の備蓄を増やすことも検討したい。中小企業を中心にユニフォームの着用をやめる動きもあり、価値の高いウエアを作り続けることが必要だと感じている。

 生産面では、顧客の要望に応えることができるように、国内工場の内製化を進める。

〈セロリー 社長 太宰 幹夫 氏/強い分野をより強く〉

 本年度上半期(2017年12月~18年5月)は、主力の「セロリー」ブランドを中心としたオフィスウエアの定番商品と、サービスウエアなどの「WSP」がそれぞれ売り上げを前年同期比4%以上伸ばし堅調だった。ツイードニットや空気触媒の「TioTio(ティオティオ)」加工を施した商品など「ヒット商品」がけん引している。

 一方で別注は24・5%減で、前期から伸び悩んでいる。更新を控える雰囲気が見られるものの、来期は既に大口の案件を受注できており、巻き返しを期待している。

 18秋冬も販売が好調な「パトリックコックス」ブランドをはじめ、引き続き新商品の投入を例年より増やし、オフィスウエアを軸に強い分野をより強くする。下半期も厳しい環境が続くが、目標とする売上高50億円(前期47億円)に少しでも近付けたい。

〈チクマ アルファピア事業部長 岩崎 敦史 氏/19年にカタログ刷新〉

 2018年11月期の上半期の売上高は前年同期比3%増で、地道な数字の積み重ねが結果に結び付いた。オフィスウエア「アルファピア」は売り先がオフィスから幅広い業種に広がってきている。カーディーラーやホテルの受注も増えてきた。JAや病院事務といった需要もある。女性の社会進出を反映し、ニーズも変わってきている。

 来年カタログ創刊25周年を迎える「ユーファクトリー」は年々、他社との競争が激しくなる中、商品戦略を練り直して2月にリニューアルする。イベントや美術館、博物館の受付などに需要があるラインなので、仕掛けをつくる。19年は翌年に迫る東京五輪、消費増税の駆け込み需要など春から秋までにヤマ場を迎えるだろう。物流費や加工費用の上昇、出荷時間の繰り上げなどの課題をどう克服するか考えていく。

〈フォーク 社長 小谷野 淳 氏/将来へデジタル投資〉

 2019年1月期の上期のオフィスウエアは、好調な企業業績に支えられ、売り上げは堅調だった。今期から社内の営業体制を変え、オフィスとメディカルウエアの担当を分けて専門性を高めている。

 デジタル化が進む中で、今後はいかに営業効率と販売の精度を高めるかがポイントになるだろう。当社は紙のカタログとウェブの連動を始めている。オフィスウエアカタログ「ヌーヴォ」では、商品ごとにQRコードを付けて、読み取るとウェブページで製品を360度全方位から確認できる。メディカルウエアカタログでも同様の取り組みを行っており、今後もデジタルへ投資する。

 文化学園大学と共同で行う、オフィスウエアのパターン開発も引き続き進める。「究極のコンフォート」を考えながら、ブラウスやスカートを提案したい。

〈ジョア 社長 神馬 敏和 氏/秋商戦で巻き返しへ〉

 本年度上半期(2018年1~6月)、多くの引き合いをもらったが、生産面が追い付かず機会損失が発生し、計画通りの売り上げを確保できなかった。秋商戦までに元の状態にまで戻し、取引先への信用回復につなげていきたい。

 売り上げ規模の割に「新商品の種類が多い」という声を頂くことが多い。毎シーズン各シリーズの商品のマトリックスを作りながら細やかにマーケティングをして商品を打ち出している。

 そのような差別化戦略による商品企画力で評価をもらう一方、今まで順調だった生産面で今回のような問題に直面し、危機感が芽生えた。生産体制に対し常に敏感になりながら工場の開拓をしておかなくてはならない。

 期初に掲げた通期(18年12月期)の売上高14億4千万円の目標について何とか達成に向けて巻き返しを図りたい。

〈ハネクトーン早川 社長 早川 智久 氏/好調なスタート〉

 2018年4月期は微増収減益だったが、新年度に入り大手化粧品メーカーや病院など幅広い業種から受注があり、良いスタートを切れた。

 売れる商品に共通しているのが、他社にはない色合いのウエア。昨年発売したマゼンタ、ロイヤルブルーのワンピースは、商社の受付などで採用されている。機能性に加え、目を引くウエアが支持されている。

 18秋冬のレディースユニフォーム「カウンタービズ」は、二つのシリーズを新しく展開する。昨年発売したスカーフを自在にアレンジできる「Pリング」も好評で、意匠登録を出願している。

 生産面では、栃木県下野市の自社工場への設備投資を進める。7月上旬には2台目のCAD/CAMを導入し、工程を内製化していく。並行して新卒で採用した若手の育成にも力を入れる。

〈神馬本店 社長 神馬 真一郎 氏/新たな切り口で価値高める〉

 2018年6月期は、「美形(ミカタ)」シリーズを中心にカタログの定番商品の販売が堅調だったが、売上高が前期比横ばいになりそうだ。ただ、来季は既に中口、大口の案件も獲得できており、流れとしては悪くない。

 需要が拡大する接客向けの強化と新しい企画担当者を入れたことでカタログの商品構成に幅出しができ、従来の事務服も相乗効果で引き合いが増えつつある。東京五輪直前になれば需要がさらに増える可能性があり、商品をそろえて対応できるようにしておきたい。

 18秋冬では差別化を一段と進め、カタログでは試着体験ができるAR(拡張現実)サービスを導入し、より商品を手に取ってもらえるような工夫を凝らす。骨盤ケア機能付きスカートでは特許を取得した。ヘルスケアという新しい切り口でもユニフォームの付加価値を高める。

〈ツカモトユーエス 社長 西村 隆 氏/企画、提案力を強化〉

 前期(3月決算)のユニフォーム事業は受注物件が少なく減収となったが利益率が改善し利益は前年並みを維持した。今期も同様、オフィスウエアの伸び悩み分を通信、運輸・交通業向けのサービス・ワーキングで補っている。

 オフィスウエアで案件が多いのは金融業だが、メガバンクは省人化、地銀も再編が進む中でモデルチェンジに慎重なケースが増えている。一方でメンズスーツが好調で、インバウンドによる接客サービス業の需要は継続しそう。ペア企画など幅広い業種に対応できるのは当社の強みの一つ。2019年のラグビーW杯、20年の五輪に向け提案力を強化していく。

 自社開発のレンタルシステムの利用が少しずつ増えてきた。専属の課を設けて需要の掘り起こしを図っている。セキュリティーの強化やコスト削減といった要望にも応えていく。

〈アプロンワールド 社長 矢澤 真徳 氏/飲食店に可能性〉

 飲食店向けの定番商品を中心に、2018年も売り上げ、利益とも堅調に動いている。ユニフォームのコストを重視する企業が多い中で、個性を出そうという動きも出てきた。例えば定番のTシャツとエプロンの組み合わせからシャツに変更したり、刺しゅうやプリントで差別化する店舗もある。

 肉料理一つをとっても、シュラスコやステーキといった専門店ができるなど、細分化が進む中でそれぞれの店に合ったウエアを提案したい。

 外国人観光客の増加を追い風に、モダンな和風スタイルも受けている。サービスウエアは高級路線とベーシックなラインに二極化しており、両方の声に応えたい。

 食の安全に対する関心が高まる中、食品工場向けの白衣は安定した更新需要がある。引き続きコストパフォーマンスに優れた商品を展開する。

〈TBユニファッション 社長 杉浦 充 氏/オリジナル企画に注力〉

 昨年から取引先企業の景気は良い状態が続いているため、ユニフォームのモデルチェンジなどが増えており、当社としても販売は好調。2018年3月期は売上高が前年比10%増で増収増益だった。売上高に占める割合はワーキング向け、サービス向けでそれぞれ半々ぐらい。

 今後の展望としても、悪くはないとみている。特にサービス向けは20年の東京オリンピック開催を控えているため、首都圏を中心に買い替え需要の雰囲気も出ている。ワーキング向けも需要は引き続き好調と予測している。

 商品としては機能性など付加価値の高い物を打ち出していく。取引先の要望に応えたオリジナルユニフォームの企画も得意としているので、今後もオリジナルを中心に、2、3年先を見据えた企画、提案力を磨いていきたい。

〈トンボ 執行役員営業統括本部ヘルスケア本部長 永瀬 公雄 氏/現場に足を運ぶ〉

 2018年6月期は、介護者向けのケアウエアで前年にあった大型物件がなかったことや、以前のような介護関連の施設の建設ラッシュがないことで販売が伸び悩んだ。一方で現場へ足を運ぶ営業を強めてきた成果が出つつあり販売の物件数は前期より増加した。

 他社と差別化した商品が充実しつつある検診着やメディカルウエアの売り上げは前期比2桁%増と好調。ケアウエアの落ち込みをカバーし、ヘルスケア事業全体の売上高は微増収を見込む。

 医薬品卸など新たな販路開拓が進む薬剤師専用ウエア「ウイキュア」や、素材混率と編み方を工夫し特許を取得した医療機関向けニット患者着も着実に販売実績ができつつある。今期は営業統括本部の販売本部、スクールとスポーツのMD本部と情報交換を密接にしながら販売力を強め、スクールやスポーツに並ぶ事業の柱に育てていきたい。

〈ヤギコーポレーション 社長 八木 圭一朗 氏/半歩先の提案 常に〉

 2018年1~5月は、微増収微増益で推移している。メディカル向けが、思ったほどではないが伸びている。横ばいを想定していたオフィス向けも微増収微増益。3年前からの大手代理店との取り組みが実ってきた。

 今後も、東京オリンピックまではなんとかなると思う。それ以降も、急な落ち込みはないとは思うが、顧客ニーズをとらえた開発を続け、半歩先の提案を常に行うことが必要だ。

 14年にスタートしたメディカル向けは、右肩上がりで拡大してはいるが思ったほどではない。しかし、顧客のニーズをクィックにフィードバックできるようになってきた。消臭剤など周辺商品も提供している。やっとそれなりの体制になったと思う。病院向けの直販に加え、リネンサプライ大手との取り組みも拡大している。

〈アルトコーポレーション 社長 ヒロ瀬 由武 氏/「コーデュラ」拡大〉

 18秋冬も引き続きワーキングブランド「アルファフォース」に力を入れる。「コーデュラ」を使ったウエアが好評で、型数を増やす。具体的には、コーデュラのフリース素材を使ったジャケットとパンツを出すほか、通年企画として肩や膝にコーデュラを採用したデニムのウエアを開発した。体を動かした時に発熱する素材「ストレッチエナジー」のコンプレッションウエアも提案する。

 ユニフォームは売って終わりではなく、安定した在庫を持ち、購入者をフォローすることが大切な商材。外国人観光客の増加に伴うホテルの建築ラッシュなどを考えると、ワーキングウエア需要が一気に減るとは考えにくい。今後もワーカーが買いたくなる商品開発を続ける。ショップでの販売と並行し、電子商取引(EC)で扱う量も増やしたい。

〈ガードナー 社長 渡辺 英治 氏/創業の精神に立ち返る〉

 2018年12月期の上半期は予算、売り上げともに計画通りの数字を出すことができた。主力の半導体や自動車分野の防塵衣に加え、食品工場の需要も出ている。2020年の東京五輪に向けて、HACCP(ハサップ)導入義務化の動きなど衛生管理意識が高まっている。

 当社は2020年に創立35周年を迎える。18年から20年までの中期経営計画では、創業の精神に立ち返ることに重点を置き、クリーンユニフォームメーカーとして品質最優先のモノ作りをする。支店、営業所では前倒しで販売目標を達成したところもあり、35周年を良い形で迎えたい。

 現在、ユニフォームの自社製品の割合は7割ほどだが、20年までに8割に高めたい。生産体制では国内の自社工場で外国人技能実習生を受け入れ、短納期小ロットに対応する。