特集 今治タオル産地(8)/生産設備の革新を支える/機械メーカー・商社編

2018年06月28日 (木曜日)

 ここ数年、今治タオル産地では生産設備の更新が急速に進んだ。準備機械、織機、ジャカード、染色加工機の各工程ともに設備の革新が加速する。こうした動きに最新のソリューションを提案し続けたのが繊維機械メーカー・商社。更新需要こそ落ち着きつつあるが、引き続き産地の高度化に貢献する機械や情報の発信に取り組む。

〈イテマ/レピアの優位性評価/フィードバックも重視〉

 イテマのタオル用レピア織機「R9500テリー」は2017年に今治タオル産地で30台以上の受注を獲得するなどレピア織機として高い評価を受けた。日本法人のイテマウィービングジャパンは、豊富な実績を生かしてさらなる需要の掘り起こしに努める。

 今治産地では旧式レピア織機の老朽化に伴う更新需要から昨年まで積極的な設備投資が行われた。こうした中、R9500テリーはパイル糸のテンションコントロール性能などタオル製織に最適化したテクノロジーや安定した稼働性能などへの評価が高い。特にレピア織機でなければ製織が難しい高付加価値タオルを主力とするタオルメーカーにとっては最有力の選択肢となる。

 ただ、18年に入ってからは受注状況が落ち着いた。更新需要が一服したことが大きな要因だが、産地でのタオル生産の勢いがやや鈍化していることも背景にある。こうした中、これまでの豊富な受注実績を生かしながらリピート需要の掘り起こしに取り組む。複雑な糸使いなどレピア織機の優位性が評価される用途での提案を進めるのが基本戦略となる。

 さらにユーザーからのフィードバックも重視し、機械の改良などにも取り組むことで、レピア織機としての完成度を一段と高めることにも取り組む。

〈ストーブリ/人気が続く「SX」/メンテナンス、耐久性が向上〉

 ストーブリの電子ジャカードの人気が続いている。2017年の販売台数は40台に達し、18年に入ってからやや勢いが鈍化したものの、引き続き堅調な引き合いが続く。さらに工場のスマート化を後押しするモジュール・機器提案にも力を入れる。

 ここ数年、今治産地では電子ジャカードの更新需要が旺盛。このためストーブリの電子ジャカードも17年は「SX」「LX」「LXL」の3機種合わせて40台の販売となった。同社の電子ジャカードは最新バージョンから材料の変更などで耐久性が向上しており、さらにメンテナンス性を改善する改良なども施されていることで故障率が低下していることも好評の理由となる。

 18年に入って更新需要に一服の兆しがあったものの、予想を上回る引き合いが続く。これまでは織機の更新に合わせて電子ジャカードも更新するケースが多かったが、最近ではジャカード単独での更新も増えてきた。このため既存織機との連結システムのバリエーションを拡充するなど対応を強化した。こうした取り組みで18年もSXを主軸に20台以上の販売を目指す。

 最新のコントローラーやモジュールの提案などモノのインターネット(IoT)を含む工場のスマート化を後押しする周辺機器・システムの提案にも力を入れる。

〈ピカノールとエディー/採用に向けて商談進む/サービス・サポート体制も拡充〉

 ベルギーの織機メーカー、ピカノールは最新鋭のタオル用レピア織機「テリーマックス」の提案を強化する。日本代理店であるエディーと連携し、採用に向けて商談も進んでいるもよう。そのためにメンテナンスなどサービス・サポート体制も拡充した。

 テリーマックスは、国内での導入実績はまだないものの、欧州やアジアで好調な販売となり、特にフランスやポルトガルでは導入が増加した。パイル長調整機能など最新機構を搭載するほか、メインフレームに産業資材向け製織に対応する高剛性のものを採用することで高い稼働安定性も特徴。

 来年には韓国でオープンハウスの開催を計画しており、エディーでは日本のタオルメーカーにも参加を呼び掛ける計画。現在、日本のタオルメーカーにとってレピア織機の選択肢は限られている。こうした状況に対して、ピカノールとエディーはもう一つの有力な選択肢としてテリーマックスを打ち出す。

 輸入機のポイントとなるサービス・サポート体制も拡充。ベルギーから技術者が来日してエディーのスタッフと“チームピカノール”として活動する試みも始まった。まずは導入実績の上がる北陸産地での活動が先行するが、今後はこれをタオル産地などにも広げていく。

〈伊藤忠システック/準備機で新提案/低浴比の染色機も用意〉

 伊藤忠システックは繊維機械商社として産地のニーズに最適な機械を世界各国から取り寄せ、産地に紹介することが基本戦略。最近では新たに準備機械や染色機の提案に取り組む。

 同社はこれまで今治産地へボーナスの電子ジャカードを重点的に提案してきた。ただ、ここに来てジャカードの更新需要も一服の兆しが表われている。一方、新たにニーズが高まっているのが部分整経機など織布準備機械。今治産地でのタオル生産が高付加価値化する中で、準備工程の高度化へのニーズが高まる。特に部分整経機は国内メーカーも少ないことから、海外から優れた機種を紹介してほしいと言う声が産地からも上がる。こうした声に応え、伊藤忠システックでは現在、ある海外メーカーと日本販売に向けた商談を進めているもようだ。

 産地のもう一つのボトルネックが染色加工工程だというのは業界の一致した見方である。特に世界的にはスタンダードとなっている低浴比の液流染色は国内メーカーがラインアップしていない。このため韓国の染色機メーカー、ドンア・ダイイング・マシナリーの低浴比染色機を日本に紹介する。そのほか風合い加工機も実績のあるイタリアのペンテック社のエア加工機の提案を進める。