帝人フロンティア/非起毛裏毛素材の提案強化/マイクロプラスチック問題に対応

2018年06月05日 (火曜日)

 欧米を中心に合繊起毛素材に対する逆風が吹いている。環境汚染の原因物質とされるマイクロプラスチックの発生源となる懸念が高まっていることがその理由とされる。欧米ブランドなどが合繊フリースを忌避する動きすら出てきた。このため合繊メーカーは対応を迫られる。こうした中、帝人フロンティアがいち早く非起毛の裏毛素材の提案を強化する動きを見せている。

 近年、海洋などに流出するマイクロプラスチックが深刻な環境汚染を引き起こす可能性が指摘され始めた。例えば2016年に国連環境計画(UNEP)が発表した海洋プラスチックに関する報告書では、マイクロプラスチックが海洋生態系に深刻な影響を与えていると指摘。プラスチック廃棄物の処理方法の改善に加えて、プラスチック製品の安易な使用を控えることさえ提言された。

 こうした動きが繊維分野にも波及している。マイクロプラスチックの発生源の一つとして合繊起毛素材(フリース)が挙がる。起毛素材は繊維の一部が切断されているため、洗濯時に微細な毛羽や繊維くずが脱落し、洗濯排水を通じて自然環境に排出されることでマイクロプラスチックの発生源になるとの指摘がある。

 このため、特に欧米のスポーツアパレルやブランドが合繊起毛素材を忌避する動きが出てきた。スポーツウエアはスエットなどで裏毛素材の需要が大きいため、起毛加工を避ける動きは合繊メーカーにとって無視できない動きとなる。

 こうした中、いち早く対応に動いているのが帝人フロンティア。19秋冬の提案ではマイクロプラスチック問題に焦点を当て、非起毛のポリエステル裏毛素材として片面パイル構造の「デルタTL」や中空8フィン断面糸による片面パイル構造経編み地「オクタCPCP」などを打ち出す。いずれも洗濯時の脱落繊維量が通常の起毛品と比較して大幅に減少するデータなども紹介している。

 同社は「欧米スポーツアパレルからも非起毛の裏毛素材を求める声が増えてきた。こうした動きは規制強化も合わせて、ある瞬間に急激に進む可能性が高い。それに備えて、今のうちから商品を用意しておく必要がある」と指摘する。今後、マイクロプラスチック問題は合繊素材のトレンドと開発動向に大きな影響を及ぼす可能性が出てきた。