OTEMAS/繊維産業のIT革命を提案・6号館AゾーンにITパビリオン展開
2001年09月28日 (金曜日)
《「インターネットビレッジ」に注目》
第7回大阪国際繊維機械ショー(OTEMAS)はインテックス大阪の2~6号館を会場に開催される。このうち6号館Aは「特別企画・ITパビリオン」として、染色加工機械、デザイン・データモニタリングおよび加工用ソフトウエア(CAD・CAM)、マルチメディア関連、出版物および情報資料の各分野企業107社が出展する。
繊維業界は、ERP(エンタープライズ・リソース・プランニング)導入による合理的なマネジメント実行が期待され、それにはITの技術的背景が必須とされる。繊維産業は他産業に比べ歴史的に生産のグローバル化が進み、多くの商品で企画、生産が多国籍化し、国内で生産される商品を海外品がすでに大幅に上回っている。これだけ繊維産業はグローバル化が進んでいるにもかかわらずグローバルマネジメントのIT化が遅れたのは、繊維品の特性として「要求される用件において感覚的な要素が非常に高い」「コンテンツの製作技術が不足」「通信網の性能不足」などが影響している。商品のライフサイクルが短いため、データ入力の手間と効果のバランスが取れないといった事情もある。今回の「7th OTEMAS・ITパビリオン」は感覚情報を伝えるための画像処理技術とマネジメントシステムを融合し、従来の概念では希薄だったアパレルやその他繊維製品のマーケティングと素材の生産設備等も含む装置を統合した。さらにEDI(電子データ交換)、ロジスティックスまでを含めて提案、展示を行う。
《繊維にITをプラス》
OTEMAS25年の歴史で今回初めて展開するこの「ITパビリオン」は繊維ファッション産業に特化したIT関連の展示会として「世界トップクラス」(主催者)であり、ブロードバンドを背景に「インターネットビレッジ」や、三次元CGファッションショー、リアルファッションショーなど繊維ファッションとITを融合する試みであり、言い替えれば、従来のアパレル業にIT技術をプラスすることにより得られるものとは何なのかを考える場となりそうだ。
「インターネットビレッジ」はシンボリックゾーンとして設けられており、ダイワボウ情報システムが「DiSわぁるど in OTEMAS」と銘打ち出展している。ここにはNEC、富士通、日立製作所、日本IBM、アライドテレシス、NEC三菱電機ビジュアルシステムズ、セイコーエプソン、コンパックコンピュータ、シャープ、ソニー、東芝、日本HP、富士ゼロックス、松下電器産業、アイ・オー・データ機器、オリンパスプロマーケティング、キャノン、フジ写真フィルム、メルコ、マイクロソフト、コンピュータアソシエイツ、トレンドマイクロという22社ものIT関連企業が集結している。すべてダイワボウ情報システムの取引先であり、内容はPC本体が10社、周辺機器が9社、ソフトウエアが3社となる。
「DiSわぁるど」の開催テーマは「ブロードバンドが運ぶ感動 eXperience」としており、インターネットによる感動的な世界を演出していく。繊維ファッション産業に各種ソリューションを提案するITパビリオンの中核的存在として注目される。
《ファッションショー/国際色豊かに 韓国、中国から来演》
ITパビリオンは特別ゾーンⅠ=ファッションショー、特別ゾーンⅡ=インターネットビレッジの2つの特別ゾーンを設けている。このうちファッションショーを行う特別ゾーンⅠでは、10月8日に学生作品ショー(2回開催)、合繊メーカー水着キャンペーンガールショー、9日と10日に韓国ショー(各日2回)、11日と12日に中国ショー(各日2回)、13日は学生作品ショー、学生作品受賞発表、審査員パネルディスカッションが順に行われることになる。
韓国は繊維産地の大邱市から「大邱大阪OTEMASファッション交流展」のタイトルでファッションショーが行われる。中国はやはり繊維産業の中心地、上海からの来演。韓国と中国はそれぞれデザイナーやモデルで20人程度が来日する。うちファッションモデルは各10人程度とみられる。ファッションショーの企画運営は東洋紡ファッションプラニングインターナショナルが担当している。
学生作品ファッションショーは、応募し第一次審査を勝ち抜いた21作品が披露される。作品応募テーマは「e│ファッション」でIT技術を衣服の製作工程および流通媒体(CG)に取り入れることをコンセプトとする作品に限られた。ファッションショーはCGとリアルがクロスオーバーした形式で行い、その際使用するCG映像はすべて事務局で用意した。
応募対象は学生で、6月28日に1次審査が行われ、7月3日に結果発表された。1次審査を通過した21作品がOTEMAS期間中のショーで披露され13日に最終審査を受けることになる。審査委員長はビューティー・ビーストの山下隆生だ。
《ダイワボウ情報システム鍛冶信弘取締役関西事業部長/ブロードバンド基盤に積極提案》
ダイワボウ情報システムは第7回OTEMAS「ITパビリオン・インターネットビレッジ」として「DiSわぁるど in OTAMAS」を出展します。開催テーマは「ブロードバンドが運ぶ感動 eXperience」で、インターネットの普及とブロードバンドによるインフラ基盤強化により急激に加速している「繊維eビジネス」を提案します。内容は例えば不正アクセスやウイルスなどの監視、セキリティー診断、指紋認証などを含むセキュリティーサービスソリューションが繊維業界のIT化とともに重要になってきた点や、繊維グローバル化にともない日英・英日翻訳など翻訳サービスが重要になっている点をとらえています。ファッションを繊細に表現する液晶表示装置、営業機動性高めるモバイル機器も必要です。
このうち当社ブースでは、パソコンおよび周辺機器販売で業界最大規模の電子商取引システム「iDATEN(韋駄天)」を中心に紹介しています。これは全国に1万5000社ある当社のパソコンおよび周辺機器販売パートナー会社との間をインターネットで結んだもので、商品データベース数30万アイテム、常時在庫アイテム数が3万アイテムあります。これにより営業マンが販売パートナー会社各社と協力し顧客の抱える問題に対し問題解決(ソリューション)能力の高い提案型販売を積極的に進めていきます。
繊維業界におけるデザイン出力からCAD出力までをみても、サーバ、PC、プリンタをネットワーク接続しデザインから製造までの工程を高度化する必要があります。「DiSわぁるど」では、PC本体10社、周辺機器9社、ソフトウエア3社の合計22社の協賛メーカーを集結し72小間、731平方メートルの規模で繊維業界のITソリューションを提案しています。
《情報集積度高いアパレルにメリット/流通につながる繊維IT技術》
「ITパビリオン」では従来のOTEMASビジターとしては来場の少なかったアパレル関係者の来場増を期待している。繊維産業のIT化を進めることは繊維産業の中でも情報の集積度が高いアパレルにメリットがある。しかし、これまでのところ、コンテンツとして表現する技術的背景の不足、十分なコンテンツを通信できるインフラの不足がその実現を遅らせてきた面が否定できない。
今回のOTEMASでは繊維産業の近未来を見据え、繊維産業のIT化を2、3年後のことと想定、繊維IT産業モデルとその実現の可能性を秘めたコンテンツやシステム、これに直結するハードウエアを一堂に展示し、素材からアパレル製品の企画、生産、販売、顧客管理に至るまでアパレル業界に必要なシステムが提案される予定だ。
ユニフォームアパレル・サンリット産業の小池俊二社長も「ITパビリオンはアパレルやさらに流通業界を睨んだ内容を含んでいるものと判断している。紡績機械や織布機器など川上業界の機械は我々アパレルには馴染みがないが、アパレルや流通につながる繊維IT技術ならば興味も湧く」と今回のOTEMAS「ITパビリオン」に興味を示している。
21世紀はマスカスタマイゼーションの時代で個人を満足させる衣料をいかに工業生産として行えるかということにかかっている。個人とメーカーの情報通信、商品の的確な配送、決済のためにもITは中心的な役割を果たしそうだ。リアルの店舗、バーチャルの店舗も並行して発展し、製造チームのサプライチェーンマネージメントもITを基礎に成り立つ。
ITパビリオンでは、テーマコーナーの提案と個々のデモンストレーションが連携し、その様子は会場でレンタルするモバイル機器で確認することができる。会場外でもモバイル、インターネットを通じて会場の様子をリアルタイムで見ることができるという。ファッションショー中継を含めIT機能を存分に体感できるイベントがアパレル業界にもメッセージを発信することになりそうだ。
《ハードウエアからソリューションまで》
ITパビリオンの企業出展ゾーンでは(A)ハード&アプリケーション(情報関連機器とソフトウエア)(B)デジタルマーチャンダイジング(C)システム&ソリューション(D)チャレンジコーナー(ITビジネスインキュベーター)(E)eコマース(F)ネットワークソリューション(G)海外パビリオンという7つの部門がある。海外パビリオンには、台湾、インドネシア、マレーシア、タイなどの各国ブースが出展する。
「ハード&アプリケーション」ではプラットフォーム、周辺機器・デバイス、ソフトウエア、サポート、サービスなどIT関連企業のハードウエアからソリューションまで提案。「デジタルマーチャンダイジング」ではCADシステムの応用による製作過程の効率化、インクジェットプリントシステムを中心としたデジタルプリントによるコスト削減などITを活用した新たなマーチャンダイジングの数々を紹介する。インクジェットでは、東伸工業、ミマキエンジニアリング、コスモ、コニカなどが自慢の機種を展示する。
「システム&ソリューション」では生産管理システムやグループウエア、電子データ交換などのウエブソリューションやERPパッケージなどSCMを支援するトータルソリューションが登場する。「チャレンジコーナー」ではソフトハウスやシステムハウスが出展、「eコマース」ではファイバーフロンティア、OZEN、エイトピアなどeコマースの実例をみることになる。豊田自動織機、村田機械、岡村製作所などのITパビリオンブースは繊維機械ではなく、物流に関するソリューションを提案することになっている。
《NOCを構築、利便性を向上/大阪国際見本市委員会》
大阪国際見本市委員会は「7th OTEMAS」会期中、ネットワークオペレーションセンター(NOC)を設置し、出展企業のインターネット利用の利便性向上を図る。その構築と運営はディーアイエスシステム販売が委託を受けて実施することになった。
ブロードバンド時代に対応、6Mの光ファイバーをインテックス大阪会場に導入し利用する。こうした専用回線は出展企業個々が独自に敷設すると費用が高いため、これを主催者側が事前に準備するメリットは大きい。出展者が帯域不足を感じず利用でき、技術者を常駐させることでトラブルも即時解消する。
同見本市会社は数々の展示会を成功させてきたが、NOCを設立するのは今回が初めて。ブロードバンド時代に対応して出展者、来場者のインターネット利用がよりスムースになるよう便宜を図った。出展者はこうした回線に費用をかけるよりも展示会本来の部分に費用をかけたいのが本音。出展者が安心し、効果的な展示ができる環境作りの一貫としてNOC設置がある。
《自社最速機種デビュー/インクジェットプリンター・東伸株式会社》
東伸工業(本社・尼崎市)は、55年の設立当時から、染工場を客先として、捺染機器の製造・販売からスタートした実績を持つ。見本刷りの際のコスト負担を合理化したい、効率化したいという客先のニーズから、インクジェット方式の開発に踏み切った経緯がある。しかし、いくらコストメリットがあっても、熟練者の目にかなう完成度でなければ、設備としては落第だ。
本来、「プリンター」といえば、紙媒体への印刷技術を指す。布への印刷と一口に言っても、素材によって、色のりの性質も違うし、厚みによっては、インクの吸収性にも時間差がある。
画像の解像度とテキスタイルの性質をどうインクジェット方式になじませるか、同社といえども、理屈通りにはなかなか急展開しなかったようだ。だからこそ、開発に当たっては、布送りのベルトひとつ挙げても、同社ならではの細心の配慮が施されている。ベルト部分にフェルトを使用することですべりを抑え、薄地から編み物に至るまで、スムースな出力を可能にした。また、裏地を汚さないようベルト洗浄装置をつけるなど、仕上げにもテキスタイル本意の姿勢を貫く。
今回のOTEMASには、「イメージプルーファー」の新機種をデビューさせる。これは、従来機種(毎時平均8~10㍍)に高速タイプ(30㍍)を追加したもの。インクの噴射ノズルを大容量(300dpi)にしたため、厚地のタオルや、ベルベットにも色の深みを表現できる。品質はあくまで「スクリーンプリントを再現するものでなければならない」(一ノ瀬四郎社長)とし、クオリティーにはシビアだ。