伊藤忠商事繊維C/「次世代型」への転換重視/ECとサステイナブルが鍵

2018年05月09日 (水曜日)

 伊藤忠商事の小関秀一専務執行役員繊維カンパニープレジデントは2018年度(19年3月期)の同カンパニーの重点方針に、「次世代型ビジネスモデルへの転換」を掲げる。そのため電子商取引(EC)関連ビジネスの拡大や新技術の活用、サステイナブル商材の開発などに力を入れる。

 小関プレジデントは「変化の波が大きく、当社にも大きな改革が必要」として、そのキーワードに「次世代型ビジネスモデル」を据える。従来型ビジネスをより安定させた上で、新たな分野、技術、商材など「新しいことにチャレンジ」する考えで、この部分では積極的な投資も行う。

 ポイントになるのはEC関連ビジネスとサステイナブル商材の開発。EC関連ビジネスでは、前期に社内横断チームで研究を続けた結果、「具体的な案件が出てきた」。現状のEC関連事業は「本体よりも事業会社で先行」している。

 ブランドマーケティング第一部門では、ジョイックスコーポレーションがEC売上高を30億円超とし売り上げの11・4%を占めるまでに成長させており、「ヴィヴィアン・ウエストウッド」でも10億円を超える売り上げとなっている。この二つの成功事例を他の事業会社や他のビジネスに活用し、EC比率を高める。ブランドマーケティング第二部門は現状、自社ホームページでのEC販売比率が5%に満たないが、18年度中に10%へ引き上げる構想。

 モノのインターネット(IoT)や人工知能(AI)についても、連携や投資を積極化する。

 次世代型ビジネスモデルへの転換のポイントのもう一つが、サステイナブル商材の開発。ファッションアパレル部門では特にスポーツ分野向けに差別化原料の開発に力を入れており、今後も海外法人や各事業会社、追加出資したベトナム繊維公団のビナテックスなど各パートナーとの連携を強化し、グローバル販売を加速する。サステイナブル原料、ウエアラブル分野などに対して投資も積極化する考えで、既に具体的な投資案件も幾つかあるという。

 苦戦が続くエドウインについては、国内縫製ラインを縮小するなど既に適正生産体制へのシフトを進めており、今期は純利益で10億円前後を見込めるという。前期にのれん代の減損損失を出した三景も実ビジネスは順調で、今期15億~20億円の純利益を予想する。

〈減損処理で純利益半減/エドウインなどで〉

 伊藤忠商事繊維カンパニーの小関秀一プレジデントは2018年3月期決算の純利益が前期比半減し、計画の320億円に対しても大きくかい離する124億円となった件について、「主にエドウインと三景で減損処理を断行したため」と説明した。(短信既報)

 小関プレジデントによるとエドウインで約140億円、三景で約20億円、その他ブランドで約40億円の減損処理を行った。エドウインの減損の内訳は(1)買収時の商標権の損(2)繰り延べ税金資産(3)在庫評価損――の三つ。いずれも特に急ぐ必要のない案件だが、「将来の心配をゼロにする」ために行った。

 期初に「基礎的な体力として300億円は見込める」としていた通り第3四半期までは順調に推移していたが、新中期経営計画が18年度にスタートすることなどを勘案し「思い切って処理した」。

 繊維カンパニーの18年3月期は、収益が5224億円(前期比1・1%減)、売上総利益が1219億円(7・9%減)、純利益が124億円(50・4%減)だった。前期中にジャヴァホールディングスを売却したことで「約100億円の減収インパクトがあった」が、繊維資材分野の好調などで56億円の減収にとどめた。19年3月期は純利益320億円を見込む。