特集 カーペット(5)/素材メーカー/ナイロン供給体制充実/バイオーダーなどキー
2018年04月16日 (月曜日)
国内のカーペット用BCFナイロンは、インビスタと東レが全体の9割程度を独占してきた。そこに三菱ケミカルが2017年に参入した。
三菱ケミカルは、ポリプロピレン(PP)長繊維「パイレン」を生産するが、ナイロンを加えて中高級ゾーンを拡充する。
同社は、購入したナイロン6チップを使い、同社の溶融繊維工場(愛知県豊橋市)で既存のPP紡糸機を活用して生産する。「KILAVIS(キラビス)」ブランドで、60色の豊富なカラーバリエーションをそろえる。繊度は1380デシテックス(T)。さらにキラビスの在庫以外のカラーと繊度(1100~3千T)にも柔軟に対応するバイオーダーを強みに挙げる。当面、年間1500トンのBCFナイロンの販売を目標にする。
現在、カーペットで使われるBCFナイロンは、紡糸工程の前段階で顔料を添加して作る原着ナイロンが増える傾向にある。インビスタは、その原着糸の豊富なカラー展開が強みの一つになっており、今年半ばに米国サウスカロライナ州の繊維生産工場のカーペット用原着ナイロン66の生産能力を高める。
同社は3千万ドルを投資し、繊維機械メーカーのツルッツラー社のかさ高長繊維エクストルーダー技術を活用した紡糸機を導入。小ロットで効率的に原着ナイロン66を生産できる。現在、試運転しており、今年半ばに本格稼働する。
同社の日本法人、インビスタ ジャパンが販売するカーペット用ナイロン「アントロン」は米国製が大半を占める。原着タイプは994Tと1385Tをそろえて、994Tは67色、1385Tは80色をそろえる。原着タイプはここ数年、売り上げに占める割合を上げており、50%程度まで高まっている。川合秀幸執行役員は、今回の生産能力増強で「リードタイムの短縮などが期待できる」と話す。
東レの産業資材事業部は、「(BCFナイロンを)オーダーメードしてほしいとの需要にも応える」(舟橋輝郎事業部長)ため、BCFナイロンを生産する岡崎工場(愛知県岡崎市)の生産体制を小回りの利く形にし、オーダーメードにも対応する。
BCFナイロン売上高の約70%はタイルカーペットを中心とする建築資材向け、残りはマットを中心とする自動車内装材向けになる。ベースは小さいが、ラグ用途への拡販も狙う方針で、断面形状を工夫した新糸を投入することも期待材料だ。
インビスタは18年の売上高について前年比5%増を計画。東レはBCFナイロンの販売量19年3月期に前期比10%増やす。三菱ケミカルは19年3月期のカーペット用糸販売量について前期比10%増を計画する。切磋琢磨(せっさたくま)して市場の盛り上がりに応える。
〈帝人フロンティア/海外展へ積極出展/和テイスト追求〉
帝人フロンティアのインテリア部は、カーペットの輸出に向けて海外展へ積極的に出展している。
今年1月にドイツで開かれた世界最大級のフロアカバリング国際見本市「ドモテックス」に2年連続で出展した。前回展より和テイストを強め、タイルカーペットを中心にアピールした。
国内カーペットメーカーの協力を得て出品した。インパクトのある「鬼瓦」をプリントで描き、ケミカルカービングで立体感を持たせたタイルカーペットをブース中央に配し、来場者へ効果的に訴求した。サクラや紅葉、竹、せせらぎをモチーフにして、特許技術のグラデーション染色や原着糸、プリントで柄を表現した。特に夜空に咲き誇る桜を描いた「夜桜」が好評だった。
輸出にはコスト高やリードタイムの長さなどの課題もあるが、「価格差を埋められるようなデザインを追求」(同部)して実売へつなげる。
来年も引き続きドモテックスへ出展予定で、同部インテリア第一課の中野晶之氏は「チームジャパンで、メード・イン・ジャパンのカーペットを世界へアピールしていきたい」と話している。
〈中国「ドモテックスアジア」/日系出展者が内販拡大/市場の高品質ニーズ高まる〉
【上海支局】アジア最大級の床材見本市「ドモテックスアジア/チャイナフロア」が3月20~22日、上海市内で開かれた。日系企業はカーペットメーカーの東リ、スミノエ、日本絨氈と、素材メーカーのユニチカ、タフティングマシンの道下鉄工、山口産業が出展し、中国内販やそのほか海外向けを拡大しようと、日本製などの高付加価値品を訴求した。
中国の内販市場は低価格志向が続いているもの、高品質が求められており、日本製品の商機が拡大している。こうした中、出展者の多くが内販を拡大させている。
東リは、コントラクト用タイルカーペット「GA―100」をメインにアピールした。中国の床材市場は、近年差別化を求める内装業者の一部が高付加価値の輸入品を求めるようになり、同社も年率2桁%で売り上げを伸ばしている。
スミノエは、ASEAN地域と内販の顧客に向け、カーペットタイル「IDシリーズ」と「LXシリーズ」をそれぞれ訴求した。内販は中国市場で同質化が進む中、差別化ニーズが生まれており、「当社の商機も拡大している」と言う。
ユニチカは、タイ・ユニチカ・スパンボンド(タスコ)のタイルカーペット1次基布となるポリエステルスパンボンド不織布(SB)を、パネルと顧客の商品サンプルを出展し、アピールした。
道下鉄工は日本製マシンをパネルで紹介。中国市場は売り上げの8割を占める最重要市場だ。