特集 小学生服(5)/有力学生服・素材メーカー/求められるニーズに応える

2018年03月06日 (火曜日)

 学生服や素材メーカーは日々、市場のニーズをくみ取った小学生服向けの商品、素材開発に取り組んでいる。着心地やシルエット、安全性などさまざまな視点から、小学生に最適な制服を追求していく。

〈トンボ/最初に購入する“きっかけ”作る〉

 トンボは、小学生服向けの制服として「トンボ・ジョイ」や、小中一貫校向けライン「トンボプライマリー」、学校別注対応の「コムサデモード」「オリーブ・デ・オリーブ」「ヒロミチナカノ」など幅広いラインアップをそろえる。

 トンボ・ジョイは、これまでのパターンを見直し、撥水(はっすい)や抗菌防臭など中高生の制服と同じように機能性を強化。縦・横に伸びるストレッチ性とともに、奇麗なシルエットや滑りの良い裏地(ツイル素材)によるスムーズな着脱感など、従来の小学生服を大きく進化させた。「最初の購入のきっかけとなる成長設計をしっかり取り入れ、高付加価値を追求した」(営業統括本部MD本部の青江宏明スクールMD部副部長)ことから、販売で広がりを見せる。

 名札を取り付けることができるネームサスペンダーは生地を傷めず名札を取り付けることができるとともに、通学時に名札をポケットに収納でき、大切な個人情報を保護する。ポケットに防犯ベルを装着できるループを付けるなど、安心や安全面にも配慮した。

 カジュアルウエアではストレッチによる動きやすさが重視される中、「販売店から制服もそういった機能の要望が増えている」(青江スクールMD部副部長)ことから、今後はニット素材を使った商品開発を強化。カッターシャツやブラウスなど、新しくリニューアルしながら、小学生服市場を深耕する。

 同社は毎年、「WE LOVE トンボ」絵画コンクールを開いており、15万点もの応募がある。小学生の応募が多く、絵画コンクールなどの取り組みを通じて、ブランドの認知度向上につなげる。

〈オゴー産業/他社にない“切り口”で攻める〉

 オゴー産業はここ数年、毎年2~3校ずつ小学校へ制服の新規採用校を増やしている。オリジナルブランド「鳩サクラ」や、安全機能のある制服「プレセーブ」を軸に「他社にない切り口」(片山一昌経営企画部長)が市場開拓につながりつつある。

 18年入学商戦は小学校に限らず、モデルチェンジ(MC)では単なる素材の置き換えによるマイナーチェンジではなく、洗練されたものに変える“ブラッシュアップ”という形で提案を強化してきたことで、新規採用校を順調に獲得できた。

 小学校へはウール混率20%、30%や、ポリエステル100%などの素材で、イートンジャケットやブレザー、チェック柄のスカート・ズボンなどをそろえ、分かりやすい提案見本を作成している。

 「紡績や商社の協力を得て、小ロットでも対応できる」(片山経営企画部長)ことを強みに、企画提案力を向上。実績のある素材と売れ筋の型の組み合わせにより、要求されるニーズへの対応力を強めてきたことで、これまで制服がなかった学校への採用事例も少しずつ増えてきた。

 さらに昨年、キッズデザイン賞(キッズデザイン協議会主催)を受賞した防災頭巾が付いた多機能ランドセル「プレセーブ」をはじめとした特色のある商品や、子供たちの危険回避能力の向上と地域の安全な環境作りに役立つ「全国安全マップコンテスト」の取り組みが、「新たな市場開拓につながるケースも増えている」と言う。

 19年入学商戦に向けてはこれまで業界になかった混率の素材や、抗ウイルス、防虫・防蚊機能を持った商品を投入し、「安心、安全につながる」商品開発に取り組む。

〈菅公学生服/制服の良さ訴え、需要喚起へ〉

 菅公学生服は、小学生服市場を少しずつ広げつつある。曽山紀浩取締役開発本部長は「制服の良さをどれだけ業界としてアピールしていけるか。需要を喚起していかなくてはいけない」と話す。

 市場開拓切り口の、一つが子供たちの未来を応援する「ドリームプロジェクト」だ。小学校の授業の中で将来の“なりたい自分”をイメージし、夢を実現に導く「ドリームマップ」という取り組みを進めており、「地道に活動しながら小学校との関係を作る」(曽山取締役)ことで、制服更新や導入に対応できるよう備える。

 もう一つの切り口は、女性の社会進出で共働き世帯が増える中、手入れがしやすいなど「母親目線に焦点を当てた商品開発」が重要になりつつある。中でも「カンコータフウォッシュ」は家庭洗濯ができ、洗濯を繰り返しても劣化しにくいことや、ピリングやひっかき傷が発生しにくいことなど使用時の高耐久性が評価され、今年の入学商戦も前年に比べ販売が拡大しているという。

 「子供の安全を守る」という面での制服の良さも訴求。昨年、東レとユニフォーム販売のダイイチ(横浜市)との共同により、横浜市役所と連携し、バイオマス由来の素材「エコディアPET」の生地を使った高視認服を400着作製。うち菅公学生服から横浜市へ、子供用高視認服120着を提供した。今後も高視認服の企画を推進していく計画で、「制服が子供のためにどうあるべきかをしっかり考える」と、安心・安全面に配慮した商品開発を進める。

〈明石SUC/“高付加価値”で伸ばす〉

 明石スクールユニフォームカンパニー(明石SUC)は、小学生服市場へ高付加価値の機能を持った商品の販売が堅調だ。今年度の販売数量では、イージーケア性が高いポロシャツ「ラクポロ」が前年比160%、女子制服ブランド「THD(テ・アッシュ・デ・ラ・メゾン)」が150%と好調な動きを見せる。

 江藤貴博スクール第一販売部長は、価格的に高くても「高付加価値の機能を持った商品の販売は伸びる傾向にある」と話す。ラクポロは、空気触媒の「ティオティオ」加工で消臭・抗菌・防汚に対応するほか、ノーアイロン・涼感・抗ピリングなど、機能性が高いのが特長。女子向けデザインを強調した「ガールズポロ」などラインアップも充実している。

 THDも、機能性の高さや立体裁断によるシルエットの良さに加え、イメージキャラクターに「リカちゃん」を採用し、「“リカちゃんの制服”として覚えやすい」ことが販売増に貢献。地域によっては大幅に販売を伸ばした。

 一方で、イートンや半ズボン、スカートなどポリエステル100%の定番商品では、黒色をより濃くするなどカラーを見直したことで「評判が良い」。全般的に生徒減で販売量の減少が懸念される中でも「(販売量は)落ち込んでいない」と、堅調な動きを見せる。

 同社は2011年から「富士ヨットを着て写真を送ろうキャンペーン」という写真コンテストを実施。やはり応募が多いのは小学校入学式の写真という。そういったキャンペーンを通じて、ブランドの認知度向上にもつなげる。

〈東レ/小学生服に最適な新合繊や機能加工〉

 東レは小学生服に最適な素材として新合繊「ミランザ」や高耐久防汚加工「テクノクリーン」など機能加工の提案を進める。高視認素材の普及も目指し、ウエアだけでなく周辺アイテムへの導入も進める。

 小学生服は通常の学生服以上に耐久性や取り扱いの容易さが求められる。このためポリエステル高混率品やポリエステル100%素材の優位性が発揮できるというのが東レの戦略。ポリエステル100%で高品位な素材感や耐摩擦性を持つ新合繊「ミランザ」などを中心に提案を進めている。

 防汚機能も小学生服では重要になることから、テクノクリーンの提案も進めており、こちらは近々、採用の可能性が高まるなどアパレルの評価も高い。汚れ付着抑制と洗濯時の汚れ除去促進の機能を併せ持つため、家庭洗濯が必須の小学生服にとって最適な防汚加工として打ち出す。

 安全性の観点から高視認素材「ブリアンスター」の小学生服での普及にも力を入れる。スクールユニフォーム素材の販売を担う機能製品事業部は衣料品のほかさまざまな関連商品も取り扱うことを生かし、ウエアだけでなくベストや雨具、帽子、シューズなど周辺アイテムも含めて提案することで小学生の安全な通学や学校生活に寄与することを目指す。

〈ニッケ/ウールの優位性をアピール〉

 ニッケは小学校服の採用校の増加に向けてウールならではの良さをアピールする。

 標準的なものは合繊が主体でウール混率はジャージー素材で18~19%、織物で30%以下が定番素材。成長による買い替えが必要なため保護者に負担感のない価格設定が重要となる。

 ウールの良さは長期間着用したときの見た目の違いに表れる。ニッケが独自に着用済みの学生服を回収し合繊100%素材と比較したところ、ウール混素材は紺や黒の深みが長持ちする、合繊100%素材特有のてかりが少ないといった違いが見られたという。

 小学生服向けにイチ素材として販売を進めるのが「ニッケ アクティブウール」。肌側に、吸湿性に優れたメリノウールを使用した多層構造のテキスタイルで、透湿拡散性に優れた快適性を備える。衣服内の水蒸気を素早く吸収・拡散して蒸れや汗冷えを解消し、優れた温湿度コントロールを実現する。家庭で洗えるイージーケア性もある。

 小学校に標準服のメリットを伝える啓発活動にも力を入れる。昨今、所得格差の拡大で学校での服装の違いがいじめや生徒のストレスにつながることも多々あるためだ。その中でウール素材の高い品位、着心地、耐久性といった特有の優位性を訴える。